二人の休日
土曜日、優子と由紀江はショッピングセンターに買い物に出かけることにした。まずここ最近は優子も仕事の疲れがあるだろうと思って、由紀江から外出に誘うことがなく、買い物のときは、優子はいつも保護施設時代の体操服をジャージ代わりとして着ていて、まあスーパーでの買い物ならその服装でもいいかと由紀江は思っていたが、改めてお出かけしようとなると、制服とジャージ以外に外出用の服を持っていないという。これはまず服を買わねばならないということになった。普通の服屋に行ってもいいのだが、せっかくショッピングセンターに行こうとしたので、ここはショッピングセンターで服を買おうということになった。
「本当に制服でいくの?」
「はい、一応まだ学生なので。」
「まあ…ね。優子ちゃんがいいならいいんだけど…」
由紀江の服を何か貸してあげようともしたが、優子は制服でいいと断った。
そういうわけで、優子は保護施設時代の学生服を着て行くことにした。
ショッピングセンターはこの地域には二つあるが、今回は駅近くの平和堂に行くことにした。駐車場もあるにはあるが、せっかくアーケード商店街に続いているので、運動がてら歩いていくことにした。
ショッピングセンターに着くと、まず服屋に行った。ショッピングセンターは年齢層高めの婦人服が多いが、若い人向けの物もないことはない。服屋は一階と二階にある。
「優子ちゃんは美人だから少し大人な服も似合いそうだね。」
「なんでもいいです。あまり高くなければ。」
「値段なんて気にしない。買ってあげるから。ほしいのない?」
「え。いや買ってもらうなんてそんなことできません。自分で買います。」
「いいって。これからほしいもの増えるかもよ。服は必需品なんだから。それに私保護者だし。これから気に入ったのあれば自分で買えばいいから、今回は買ってあげるよ。」
由紀江は絶対に折れなかった。優子はそんな由紀江に押されて買ってもらうことにした。でもとても申し訳ない気持ちだった。由紀江も優子の性格上そうなることはわかっていたが、今回の買い物については買ってあげるというのは前提できたので、譲らなかった。
服を買ったあと、ほかの店も見回って、最上階のゲームセンターや映画館のある階に行って、フードコートで食事をとった。ここからガラス窓で外が見える。
「こんな場所があったんですね。」
優子にとってはフードコートというもの自体初めてであったし、食事しながら眺望を楽しむということもしたことがなかったので新鮮な気持ちだった。
「ここね。私もね、そんな来ることないんだけど、昔はたまに来てたなぁ。今は若者がたまってるから居辛いんだけどね。優子ちゃんと一緒だから不思議と自然に座れたよ。ありがとね。…。昔を思い出すなぁ。」
優子は些細な由紀江の気持ちを伝えられて、不思議な気持ちになっていた。自分と一緒だからできたこと。自分と一緒だからここに来れたと。由紀江も久しぶりだったのかもしれない。少しは役に立てたのかと思った。それは仕事中に言われる「ありがとう」とはまた違うことのようで、仕事はやって当然のことと優子は思っていたし、仕事での感謝の言葉は人間関係の付き合いだと思っていた。でもこうして「日常」として、少しでも由紀江の何かになれたなら、それはとてもよかったと思った。
食事をした後は、ショッピングセンターを出て、商店街を歩いて帰った。
優子はとても満足な一日であった。どうにも人目は気にしてしまったが、それでも由紀江がエスコートしてくれて、常に一緒にいてくれて、どこか安心しながら日常というものを楽しめたのだった。




