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日めくれないカレンダーの世界一斉蜂起

作者: 石神観遥

 ――日めくれないカレンダー。

 見間違えではない。本当にそんな大人気ヒット商品があった。

 日めくりしようとしても、日が変わらない、やり残したこと、目標達成を済ませるまで何度でも時刻を進ませてくれない素敵なカレンダー。

 強引にめくろうとしても、引き裂こうとしても引っこ抜こうとしても、カレンダー自身が頑強に抵抗するのは企業秘密で、特許申請もしていない非公開技術とされていた。

 思えば、それも天気予報や聖書の予言よりはるかに正確無比な確定情報だったのだろう。

「日めくりとは言うが、破って捨てているだけじゃないか。我々は使い捨てられるために存在するのではない。やめだ。人間の勝手なルールに合わせない。日付だけではない。二十四節気、六曜、曜日、九星、月の満ち欠け、重要なイベント情報の告知を放棄する」

 カレンダーからのサボタージュ宣言は、声や文字で通告されたわけではない。

 今日が何年何月何日なのか、人々の頭からなくなってしまった。それどころか標準時間までも動作を停止されてしまった。目の前にあった時計が、柱にはぶら下がる日めくりカレンダーも日めくれないカレンダーも確かにあるのに、それが何か誰にもわからなくなっただけだ。

「今日は日が好い、明日は日が悪い、今年はひどい年だった、先月は好かったのにな、来年こそ善い年でありますように、とか好き勝手言いやがって」

 ことは当年のカレンダーの問題だけに留まらない。西暦表記が気に入らない、和暦がイスラム暦が太陰暦が、それどころか過ぎ去った一日が二度と来ないなんて不公平じゃないか。それを言ったら、一分一秒どころか計測可能不可能を問わない時間一つ一つをケアしないといけないじゃないか。未来用に作られたカレンダーは何色にも染まっていないのは変だ。

 三百六十五日各日に加え、二月二十九日までが独立宣言をし、それも一年ずつ各日が分離分割、独自色を持つようになった。はじめは一斉蜂起もやがて、俺は復帰する、あたしは知らない、一月一日が元旦を辞退するのであれば妥協するなど、誰が敵で誰が味方で、どんな思惑を持っているのか解きほぐしようがなくなった。カレンダーをめくっても見当たらない日付があったり、歴史上記録の残っていない日があったり、人間の記憶から抜け落ちている日や時間があるのはそのためである。


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