第96話 敵地で騒ぐ二人
前回までのあらすじ。
鉱山の奥で隠し通路を見つけた俺達は、そこで獣人達が鉱石を運び出しているのを目撃した。
その現場を見てしまった俺達は獣人達に見つかりそうになり身を潜めるが、カルミアちゃんがエロ可愛い反応をして俺はとても満足だった。
「……おーい、カルミアちゃーん」
「……うぅ」
俺はいつまでの木箱の中で塞ぎ込んでる彼女に声を掛ける。
すると相変わらず恥ずかしさで顔を真っ赤にしている。
「そろそろ出て来てくれよー」
「……サイトさんの馬鹿」
何故か突然罵倒されたし。
顔を真っ赤にして目元を涙を溜めて上目遣いでそんな事を言われると興奮……じゃない。
とにかく、彼女が箱から出てこないと先に進まない。
「悪かったからさ……お願いだからいい加減出てきてくれねーかな」
「……私、もうお嫁に行けません……」
「はは、俺が貰ってあげるから安心しろって」
「……!」
俺がそんな軽口で返すと、木箱の中で小さくなっていたカルミアちゃんが突然立ち上がって俺の頭にチョップをかます。
「痛ぇ! なんで叩くんだよ!?」
「知りません!」
ぷいっとそっぽを向いて彼女はようやく出てきてくれた。
そして珍しく俺に冷え切った目線を向けて言ってくる。
「……で、今どうなってるんです?」
「おお、その視線ゾクゾク来るわ」
「今度はグーがお望みですか?」
そう言ってカルミアちゃんは拳を固めて俺に近づいてくる。
俺は慌てて土下座して彼女に謝罪する。
「冗談冗談……話を戻すが奥に外に通じる出口があるみたいだな。
奥の方から光が見えてきてそこから他の獣人達が何人か入ってきてる。倉庫に溜めこんだ鉱石を外に持ち出すつもりのようだぜ」
俺はそう言いながら土下座を止めて物陰から顔を出して奥の獣人達の様子を探る。カルミアちゃんも隣に来て奥に居る獣人達がワラワラと集まって荷物を奥に持って行ってる場面を確認する。
「……って事はもしかして」
「頃合いを見計らって逃げるつもりなんだろうさ。奴らが逃げる前にどうにか捕まえる必要がありそうだな」
「私達二人じゃ流石に……女神様と連絡出来ませんか? ほら、いつもの感じで」
「あー……あれはいつも女神の方から思念を送ってくるんだよなぁ……まぁ、やってみるわ」
俺は彼女に頷いて物陰に隠れると、目を閉じて集中する。
「(あー……テステス……おーい、女神様ー……聞こえるかぁ……?)」
ダメ元でまだ鉱山の中に居るはずの女神にテレパシーを送ってみることにした。
◆◇◆
一方、鉱山で周囲を探っている女神ミリアム(仮名)とリリィの二人は……。
「……!?」
鉱山の中の調査を行っていた女神は突然足を止めて耳に手を当てて黙り込んでしまう。
「ミリアムさん、どうしたの?」
突然足を止めて顔を伏せた彼女を心配したリリィは、ミリアムに声を掛ける。しかし、女神は何やらぶつぶつと呟いているがうまく聞き取れない。
「ミリアムさん?」
「……静かに……今、声がしたような……」
女神はそう言ってリリィを静かにさせると再び耳を澄ませて意識を集中させる。
そして目を瞑って心の中で問いかける。
「(もしかして……砕斗ですか?)」
◆◇◆
「お、通じた」
俺は上手く反応が返ってきたことに気を良くして女神に返事する。
『さ、砕斗? 今どこに居るんですか!?』
「獣人達が鉱石を運び出している倉庫の中だよ」
『獣人?』
「詳しい事情を話してる時間は無さそうだ。場所を教えるからすぐに来てくれ。このままだとアイツらが逃げちまうよ」
『分かりました……それで場所はどこに?』
「説明するよ。ええとな……」
元不良、説明中……。
『まさか鉱山の裏から獣人が岩盤を打ち抜いて穴を掘っていたとは……』
「すぐにでもアイツらにカチコミを掛けるから早く来てくれ、姐さん」
『誰が姐さんですか』
「は、早く来てくださいね。女神様」
俺の後ろから不安そうにカルミアちゃんが声を掛けてくる。
女神はため息を付くと、『……分かりました、すぐ行きます』と答えた。
そんなやり取りをして俺は女神とのテレパシーを切る。
「よし、これですぐに来るはずだ」
「良かった……でもこんなことしている間に獣人さん達に気付かれないですか?」
カルミアちゃんは不安そうな様子で言うが俺は余裕で答える。
「まぁ大丈夫だろ、アイツら毛むくじゃらで頭悪そうだし」
俺はそう言いながらカルミアちゃんを安心させるように笑う。
……のだが。
「……ほぉ、誰が頭が悪いって?」
「……」
「……」
……声が聞こえた方を恐る恐る俺達は振り返る。振り返ると、俺達の近くに獣人達数人が腕を組んで俺達を睨みつけてきた。
「あ、あはは……冗談、冗談だって。俺達、机の中に入ったら何故かこんな所にワープしちゃってさぁ……」
「言い訳が滅茶苦茶すぎますよ、サイトさん!?」
俺は笑って誤魔化そうとするが、当然そんな物で誤魔化されてくれるわけもなく、俺達は完全に包囲されてしまったのだった。
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