番外編・クリスマス・イブの夜に~
最近モチベが死んでましたが何故か筆が乗ったので書いてみました
◆◆◆◆◆番外編・クリスマス・イブ◆◆◆◆◆
時期はレガーティア出立前に遡る。
「ところでさぁ女神様、今って地球の時間換算だとどのくらいの時期なんだ?」
「そうですね。貴方の住んでいた日本の時間では12月の下旬……およそ、12月24日辺りでしょうか?」
「なん……だと……!?」
その言葉を聞いて俺は絶句する。
「砕斗、どうしたんですか?」
「お兄さん、顔が青いよ? 毒でも盛られたの?」
「んなわけねぇだろ!?」
リリィの的外れな言葉に突っ込む俺。
「じゃあどうしたの?」
「それはアレよ……要するにクリスマスじゃねえか! 今年こそ彼女を作ってやろうと息巻いてたのに、結局異世界に来てもボッチじゃねえか……あああああああ!!」
俺は絶望して床を殴る。
そんな俺の慟哭に女神とリリィはドン引きした様子でコソコソ話し始める。
「お兄さん、本当にどうしたの? もしかして頭がおかしいの?」
「おかしくねぇよ!! 人をナチュラルに馬鹿にすんな!!」
「どちらかといえば心の病気かもしれません……確かに言われてみればクリスマスですね……」
「??? ミリアムさん、クリスマスって何?」
「ああ、この世界には無い文化なのでリリィさんが知らなくても当然ですね。つまりですね……」
女神はリリィに要約してクリスマスの事を教えてあげる。
「えっとつまり……男女の恋人同士が”クリスマス・イブ”っていう記念日にデートする……ってこと?」
「まぁそういう事です」
女神がリリィに伝えたのはあくまで健全な部分である。
まだ小学生卒業にも満たないリリィにそんなディープな事は教えても理解できないだろう。
ちなみに、別に男×女じゃなくても成立するのは一応補足しておく。
「恋人とかバッカじゃないの、そんなの何が楽しいの?」
「うっせえよ、リリィ!! お前みたいなお子ちゃまに成人過ぎて独り身の辛さが分かってたまるかよ!!」
「えぇ……?」
「いいか、教えてやる。あれは今から3年前の話だ……!」
回想開始。
砕斗は数年前、高校を卒業する前から考えていた事があった。
高校三年の冬の時期。
周りが高校受験だの就職だのと騒がしくなってそんな学校の雰囲気が嫌になっていた頃。
「……ったく、どいつもこいつも……そんなに将来が大事なのかよ……」
砕斗は学校から帰宅途中の雪降り積もる並木道を横切りながら、内に溜めていた鬱憤を晴らすように独り言を呟いていた。
「……?」
そんな砕斗の視界に一つの光景が飛び込んできた。
「あはは、バカー」
「へへっ」
なんと、そこには自分と同じ学校の男女2人の生徒が一つのマフラーを二人で首に巻いて雪の中を仲睦まじく歩いている光景だった。
「あ、あれは……」
その男女はよりにもよってサイトのクラスメートだ。
男子の方はバスケ部のエースで女子達からの人気も高くて学年でも1、2を争うモテ男。
そして、もう一人の女の方はサッカー部のマネージャーだったはず。
砕斗の友達のサッカー部員は彼女にベタ惚れで、11月に彼女に告白して見事に玉砕した。
そんな自分の友達を軽く振った女が別の男にあんな馬鹿みたいに引っ付いてイチャついてるとは……。
「(後ろからマフラーを引っ張って両方絞めて転がしてやろうか)」
そんな色んな意味でアウトな考えがサイトの頭を過る。
だが、砕斗は同時に気が付く。
自分がイライラしてるのは友人が悲しい目に遭ったことを同情して怒ってるわけではない。
それは自分が独り身で寂しい冬を過ごしていることを自覚してしまったのだ。
「こ、こんな屈辱が……!」
その時、砕斗は誓ったのだ。
必ず、自分もいつか近いうちに可愛い彼女を作ってクリスマスは好き放題やってみせると……!!
……はい、回想終わり。
「お兄さん、救いようのないバカだね」
「ええ、同意ですね」
「オイィィィィ!! お前ら、血も涙もないのかよっ!!」
あまりにも辛辣過ぎる二人の言葉に、サイトは精神的大ダメージを受けてしまう。
「く、クソ……こうなったらミリアム! なんかずっと忘れてたけど、最初の時の約束をここで果たして貰うぜ!!」
「はい? 約束?」
女神は全く身に覚えのない約束とやらに頭を傾げる。
「おいおい、お前約束しただろ!? 俺が異世界に行ったら『好みの女を好きにさせてやる』って!!」
「お、お兄さん……最低……」
リリィは汚物を見る様な目で俺を蔑む。
「え? そ、そんなのありましたっけ……?」
「オイイイィ!! 何しらばっくれてんだ!? てめぇこの野郎!」
俺は女神の胸ぐらを掴んで揺する。
「ちょ、落ち着いてくださいって……」
「別に好き放題させろとは言わないけどよ! ちょっと協力しろ! 今からカルミアちゃんを呼んでデートに誘うから、お前の能力で上手い事良い感じにしやがれ!」
「わ、分かりました……分かりましたって……!」
「よし!」
女神の協力を取り付けた俺は、早速カルミアちゃんの部屋に行って彼女を呼んで外に出てもらう。
「はいはーいサイトさん、どうかしたんですか? 今、アステアへ行くため荷造り中だったんですけどぉ」
「ああ、悪かったな」
俺は彼女に仕事を中断させてしまったことを謝罪する。
そして、少し勇気を出して彼女をデートに誘おうとする。
「カルミアちゃん、今から俺とデートを――」
今から俺とデートをしよう。
そう口にしようとした瞬間、サイトはまるで雷に撃たれたかのような閃きを得る。
……デート。果たして俺はその程度の遊戯で満足なのか?
折角女神が協力してくれてるんだ。これをただのデート止まりは勿体ないのでは?
いや、ならばその夢の先を求めるべきじゃないのか!?
俺はそんな閃きを得て、言い掛けた言葉を止める。
「……サイトさん?」
途中で言葉を噤んだ俺を見てカルミアちゃんは可愛く首を傾げる。
そんな彼女を見て俺はより愛しさを感じ、更に体の一部分に熱を感じ始めた。
……そうだ、折角の機会だ。ここで行けるとこまで行っちまえ!!
……サイトよ、ここは勝負に出るのです!
頭の俺の悪魔と天使が手を取り合い、俺の背中を押す。
ありがとな、突然沸いてきた俺の悪魔と天使よ……お前達の激励を受けて俺は先に進むぜ!!
俺はカルミアちゃんの手を握って、ついに口にした。
「カルミアちゃん!」
「は、はい!」
「デートも良いけど、いっそその先……ホテルに泊まって俺と熱い一夜を過ごさないか―――」
「はい、天罰」
次の瞬間、サイトの頭上から本物の落雷が降り注ぎ、サイトを黒焦げにした。
「……な、なんで……?」
サイトは落雷を放った人物……女神の方を振り向いて、そのままバタリと倒れた。
「いや、順序飛ばし過ぎです……」
「お兄さん……ここまで来ると不憫だね……」
「ですね……」
リリィとミリアムはそんなサイトを憐れむ様な目で見ていたのだった。
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