第85話 船の旅、終了
それから数日。俺達は船の旅を満喫していた。
仲間達と平和な語り合いやどうでも良い雑談や趣味などを語り合う。
久しぶりの平穏な時間に俺達は時を忘れていた。
しかし、現実はそうもいかないらしい。
魔王とか黒炎団とか忘れそうになった頃に目的の大陸に辿り着いた。
「カルミア様ご一行様。目的のアステア大陸へ到着しました」
「ありがとうございます」
俺達を呼びに来た船員にカルミアちゃんは丁寧に挨拶をして、一緒に雑談していた俺達の方を振り向く。
「じゃあ皆さん、行きましょう」
「あ~……行きたくねぇ……」
ここ数日間、ずーっと良い意味で暇な時間を過ごしていたので、また旅をすると考えると憂鬱になる。
「サイトさん、急にやる気無いですよ? ほら、元気元気♪」
彼女はそう言って自分の頬に指を当てて笑顔を作る。
「お姉ちゃん、可愛い」
「ありがと、リリィちゃん」
リリィに褒められてカルミアちゃんは自然な笑顔になる。
「……じゃあ元気出たから行くか」
「はい、では出発です!」
「忘れ物無いように一度自分達の部屋に戻ろっか」
「じゃあ、20分後に上に集合という事で」
「「はーい」」
女神の提案にカルミアちゃんとリリィが答えると、足取り軽く部屋を出て行く。
「さ、私達も一旦戻りましょう」
「へーい……」
「……カルミアさんの笑顔で元気出たんじゃないんですか?」
「空元気だよ。あの二人の前で情けないこと言ってられねぇし……」
「二人とも、貴方よりずっと年下ですもんね」
「カルミアちゃんが16歳でリリィが今11歳だっけ?」
「三人共、私から見たらまだまだ子供ですね」
「そりゃ数千年は生きてそうなババアと比較したらそうよ」
俺がそう軽口を叩くと女神が真顔に戻って見つめてきた。
「マジで謝るから許して」
「分かればよろしい」
俺は素直に謝ると、女神も笑って許してくれるのだった。
……実際、コイツは何歳くらいなんだろうか?
見た目は若いが神様なんだから数百年は生きてそうだが……。
「(私、神様になってそんなに長くないですよ?)」
「(こいつ、脳内に直接……!)」
どうでもいいことで権能を使う女神であった。
◆◇◆
船内を出て通路を通って上の甲板に出ると、既に陸地の港に船を着けて橋を下ろしている最中だった。カルミアちゃん達も準備を整えて旅姿でそれを見守っており、俺もそれに倣うように歩いていく。
「あ、サイトさん。こっちですよー」
「おー、悪いな」
カルミアちゃんが俺達に気付いて手を振るので俺も手を振り返しながら彼女達のもとへと行く。そして彼女達と一緒に準備が整うのを待ち、船員の人達が俺達の馬車を馬と一緒に連れてくる。
「ここからは馬車での移動になります。
レガーティアと比べて気候が違いますので旅の途は必ず帽子を被ってくださいね。日差しで焼けてしまいますので、出来れば肌の露出も避けた方がいいと、その為の衣類はこちらに用意してあります」
「え、マジ? もしかしてこの国って砂漠地帯なの?」
「全てがそうというわけではありませんが、この辺りは砂漠地帯になっていますね。西にあるレストアまで向かうとある程度熱さも軽減するはずですので、それまで頑張ってください。飲み水も鞄に積めて用意しましたので」
「レストアまではどれくらいの道のりでしょうか?」
カルミアちゃんが船員の人に話しかける。
「そうですね、馬車で一週間程でしょうか」
レガーティアに帰りたくなってきた。
「夜になると少々冷えるので身体を壊さないようお気を付けください。それでは、良き旅を」
船員の人は笑顔でそう言って俺達の馬車から離れた。
「では皆さん、出発しましょう!」
カルミアちゃんは元気よく拳を空に掲げるのだった。
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