第08話 再スタート!
久しぶりに初投稿です。
俺……じゃなくて僕の名前はサイト。
ちっさい会社でクタクタになるまで仕事してたら、異世界につれて来られてしまった。
どうもこの世界にはバグという不具合があってそれを僕に直せって話だ。今まではグリムダールの城下町で口の悪い女神様とイヤイヤながら一応上手くやってたんだけど色々あって牢屋に入れられそうになった。
そこで異世界で出会った美少女カルミアちゃんに助けられた!
それだけじゃなくてカルミアちゃんと一緒に次の街を目指す事になったのだ!
美少女と二人っきりで冒険とかどんなギャルゲーだよって感じだが、ここから僕の物語が始まるんだ!!
『……はぁ』
女神様の呆れた溜息が聞こえたが無視だ無視。僕は今、最高に気分がいいのだから。
「それで、サイトさん!」
「ん、なんだい。カルミアちゃん?」
彼女がこちらを見てニコニコした表情で問い掛けてくる。特に何かしたわけでもないのに死ぬほど可愛いんだけどナニコレ。子猫や子犬が擬人化したかのよう。どっかの上面だけ可愛いアホ女神と大違いだ。
「次の行き先なんだけど南西に道なりに進んだ地点にある関所を越えて、そこから更に進んだ先にある”ラズベランの街”に向かうつもりです。今日の夕方には到着すると思いますが、大丈夫ですか?」
「うん、良いんじゃない? 僕はこの世界の地理は詳しくないから、カルミアちゃんに任せるよ」
「わかりました! ……って、この世界?」
「あ」
しまった。余計な事を言ってしまった。
「ち、違う。今のは間違いでこの国の事があんまり詳しくないって意味だよ。田舎育ちで、今まで一度も村から出た事が無くてさぁ」
「へー、そうだったんですかぁ? 私と同じように上京してきたって事です?」
「そ、そういうこと!」
僕が慌てて誤魔化すと、カルミアちゃんは疑う素振りもなく無邪気に笑って納得してくれた。
「それじゃあ行きましょうか」
「うん」
彼女が少し浮かれたように早足で歩き出す。僕も彼女の隣に並んで次の目的地へと向かう。
周囲に普段と変わった所もなく、天候も晴れ時々曇りといったところ。旅のスタートとしては悪くない一歩だ。
僕は彼女の楽しそうな横顔を見ながらほっこりと癒されていたのだが……。
『咄嗟に出た言い訳がそれですか……ちょっと突かれたらすぐにバレますよ?』
頭の中でバグ女神の声が響く。
うるせえやい。そんなの自分でも分かってるんだよ。
ただ言い訳が思い付かなくて、咄嗟に口を滑らせただけなんだ。
……と、そこまで女神様と心の中で対話してとあることに気付く。
異世界から来たことは隠さないとダメな事なのか?……と。
僕が特殊な力を持っている、という設定は既に公表してるわけだし、今更異世界の人間だと知られても特に支障が無いような……。
「あのね、カルミアちゃん」
「はい?」
僕が彼女に声を掛けると、足を止めずにこちらに顔だけ向けてくる。
……言ってもいいんじゃないだろうかと、彼女の笑顔を見て僕は決断した。
「カルミアちゃんに言っておきたい事があるんだけど……」
「はい」
「実はさっきのは嘘でさ……僕は……この世界の人間じゃないんだよ」
「……???」
僕の言葉の意味が理解できなかったのか、彼女はきょとんとして首を傾げるのだった。
「えっとつまり?」
「いや、今の説明の意味そのまんま……」
「あはは、そもそもこの世界以外に別の世界なんかあるんですかー?」
って、その段階かよ!?
そっか……文明がさほど発達してないから、自分達の星以外に世界があることすら知らないのか……。
これは納得させるのに難儀しそうだ……。
……と、僕が頭を悩ませていると。
『前を見た方がいいですよ』
「え?」
女神様の言葉に反応して言われた通りに前を見る。すると僕達の行く手を遮るかのように複数人の怪しい男達が、まるで獲物を狙うかのような目線で僕達を見つめていた。
カルミアちゃんはそれに気付いてその場で立ち止まる。
なんだ……こいつら?如何にも怪しい連中だけど……。
「おーっと止まりな。そこのお嬢ちゃんと兄ちゃんよ」
「ここは行き止まりだぜ。もし通りたければ、食料と有り金全部置いていくんだな」
まさか盗賊……?
現代社会ではこんな露骨な奴らは見掛けないけど、この世界は中世くらいの文明だ。
盗賊の類いが居てもおかしくはない……か……?
周囲に助けを求められそうな人が居ないか辺りを見渡す。
しかし、見た感じ近くに頼れる人は居なさそうだ。
「え、えっと……」
どうする……?
取り繕うのは止めるか、それともいう事を聞いて穏便に済ませるか……。
”俺”も武器を持ってるから一応応戦出来なくはないが……。
だけどこの人数では……。
隣でボーっと立っているカルミアちゃんの手を引く。
彼女がこちらを向くと「逃げよう」を彼女だけに聞こえる小さな声で口にする。
そして、彼女は頷き、一斉に振り返る―――が。
振り返った先にも別の男が立っており、その手には棍棒のような凶器が握られていた。
「く……いつの間に……!」
「おおっと、逃げようったってそうはいかねぇぜ。俺らはいつでもお前らを襲えるんだからな」
「くっ……」
カルミアちゃんを庇うようにして、男達と対峙する。
すると、リーダー格らしき一回り体格の大きい男が一歩前に出る。
「さぁて……それじゃあまずは有り金全部置いていってもらおうか」
「……っ!」
……折角、王様に貰った軍資金なのに……!
目の前の男を恨みの籠った目で睨みつけながら、鞄の中に手を入れて――
「んあ? 鞄ごとこっちに全部寄越せっつってんのが分からねぇのか!?」
「っ!!」
体格の良い男の態度が急変し、突然威圧する様に大声を出す。
こいつ……こっちが下手に出ていたら好き放題言いやがって……!!
「た、大したお金があるわけじゃないんです。見逃して貰えませんか?」
「あ? てめぇ俺の命令を聞いてなかったのか? ……そうだなぁ、お前の連れのそこの女……随分上玉じゃないか、その女と引き替えにならお前を助けてやっても良いぜ?」
……その男の舐めた言葉を聞いた瞬間――
「クソがっ!!」
僕……いや、”俺”はそいつの顔面に向かって拳を全力で叩き込んだ。
「ぐぼぁっ!?」
男は俺の拳を受けて、そのまま後ろに吹っ飛んでいき地面に倒れこむ。そして、その一撃で意識を失ったのか白目を剥いて気絶してしまった。
「なっ?」
「り、リーダー!!」
他の男達は失神したその男の所に駆け寄っていく。
「この野郎……!」
そして今度は俺に敵意の籠った目を向けてくる。
「てめぇら、この子に手を出したら許さねぇぞ!! 俺がぶっころしてやる!!」
「ちょ、サイトさん……? お、落ち着きましょう?」
「!」
カルミアちゃんが落ち着かせるように俺の腕を掴む。
その彼女の手の感触で昂った感情が一気に沈静化していく。
……しまった、昔の癖で……!!
俺……いや、”僕”は軽く自分の頭を空いた手で殴りつけて彼女に言った。
「カルミアちゃん、逃げるよ!」
「え、あ!」
彼女の返事を聞く前に俺はカルミアちゃんの腕を引っ張って、全力で駆け出して奴らの包囲網を突破する。
「ちょ! ま、待ちやがれ!!」
男達は気絶したリーダーらしき男を担いで後を追ってくる。
「うおおおおおおおおお!!!」
僕は彼女の手を引っ張って全力で男達から逃げ出したのだった……。
はい、どうもノノノです。
そのまま完結って形で打ち切ったんですが未練があって再び戻ってきました。
しばらくは続けるつもりなので今後もまたよろしくお願いします。
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