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第76話 夜の街へ

 国王の計らいで客間に部屋を用意された彼らはそこで戦いの疲れを癒すことになった。サイトとリリィ、そしてカルミアとミリアムはそれぞれ同室で、各自ゆっくり過ごしているはずである。


 ――サイトとリリィの二人。


「あー、極楽極楽……」

「食べたばっかりなのに、すぐ寝たら太るよ?」


 食事を終えた俺とリリィは部屋に戻ってフカフカのベッドで寝そべりながら駄弁っていた。


「いやぁ城の客間はすげーな。宿の薄暗い部屋と違って広いし明るいし快適だわ」


「魔道具で部屋の湿度や気温が常に一定に保たれてるもん。その辺の民家や宿とは違うに決まってるじゃん」


「そーなのか……強いて不満を挙げるなら、お上品な料理だったがパンチが足りないっていうか、量がちょっと足りなかったよな?」


「だからあんなにおかわりしてたんだね。流石にスープ二杯おかわりはやりすぎだと思うよ?」


 リリィはベッドでゴロゴロしている俺の隣に座って呆れたように言う。


「リリィだってすぐに食べ終わって物足りない顔してたろ?」


「むー、リリィは子供じゃないし……でも、少し足りなくてお腹が減ってたのは事実……」


 そう言いながらリリィは自分のお腹を擦る。


「よし、なら今から城下町に繰り出そうぜ」


 俺はそう言いながらベッドからダイブして床に着地する。


「え、今から? もう夜だよ?」


 リリィは起き上がって窓の外を見る。部屋に取り付けられた魔道具の明かりが室内を明るく照らしているから気付かなかったが外は街灯以外は真っ暗な状態だった。


「お、本当だ」


「そろそろ冒険者ギルドも閉める時間かな……」


「っていうか、お前は帰らなくて良かったのか? 一応、お前のギルド職員なんだろ?」


「昨日、あんなことがあったからしばらく休暇を取ってるんだよ」


「そうなのか。なら夜更かししても問題ねーな?」


 俺はそう言いながらベッドに腰掛けるリリィの手を取る。


「たまには子供らしく遊ぶのだって悪くねーさ。俺も残業が続いて気が滅入ってた時は旧友を呼んでゲーセンに入り浸ってたりするしな」


「ゲーセン?」


「ああいや、こっちの話。……ま、この世界じゃさほど娯楽は無さそうだが友達と歩き回るだけでも楽しいもんさ」


「ふーん?」


「というわけで夜の街に繰り出そうぜ。拒否権は無し!」


 俺はそう言いながらリリィを太ももに手を回してお姫様抱っこする。


「え、ちょっと!?」

「んじゃしゅっぱーつ!」


 俺はそう言って窓から飛び降りる。


「きゃあああああ!!!」


 リリィの悲鳴が夜の街に木霊したのだった……。


 ◆◇◆


 その頃、ミリアムとカルミアの二人は……。

 夕食を終えた後、再び城の地下へと足を踏み入れていた。


「ここまで付き合ってくれてありがとうございます。カルミアさん」


「いえ、女神様にはいつもお世話になってますし……でも、何故今更こんな場所に?」


 カルミアは薄明かりの地下の通路を歩きながら不安そうに尋ねる。


「コーストの事は城の兵士達に任せましたが、流石にあのままにしておくわけにはいきませんからね。私達が見ていない間に暴れ出しても困りますし釘を刺しておこうと思いまして」


「サイトさんは連れて来なくて良かったんですか?」


「カルミアさんが居れば何かあった時に十分間に合いますし、彼は疲れているでしょうからね」


「わかりました……」


 そう言って、二人は会話が途絶えてしまう。


 そして牢獄の奥へと向かい、コーストが捕らえられている牢獄の奥深くへと辿り着く。コーストが捕らえられてる牢獄の前には何人かの兵士の姿があり、こちらに気付くと一人が向かってくる。


「これはミリアム殿とカルミア殿」


「御苦労さまです。コーストの様子に変化はありましたか?」


「いえ、あれからずっと気を失っているようで棺桶の中から出てくる様子はありません」


「そうですか、ありがとうございます」


 女神は兵士にお礼を言って牢屋に近付く。


「何をするんですか、めが……ミリアム様」


 カルミアは女神に質問をする。


「意識が戻ったとしても牢屋から出てこれなくすれば時間凌ぎにはなるでしょう。カルミアさん、私の手を握ってもらえますか?」

「???」


 カルミアは言われた通りに女神の手を取る。すると女神はカルミアの手を強く握りしめて何かを呟く。彼女が呟くと同時にカルミアは身体から力が抜ける感覚がして倒れそうになる。


「おっと」


 だが、女神がカルミアの身体を支えて倒れる事はなかった。


「……何をしたんですか?」


「私は力が制限されて満足に権能を使えない状態なので。カルミアさんの魔力を借りて牢屋に強めの結界を張っておきました。これで私が近くに居なくても問題は無いでしょう」


「それで大丈夫なんですか? また変な力で復活するかも……」


 カルミアは半信半疑で尋ねる。


「私を信用してください……さ、用事が済んだことですし戻りましょうか」

「え、あ……はい」


 女神はカルミアにウィンクしてそう言うと来た道を戻っていった。


「……うぅ、身体がフラフラする」


 残されたカルミアはそう呟いて魔力切れした身体を引きずって後を追うのだった……。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

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