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第75話 ひとまず落ち着いた

 前回、見事にコーストを再び棺送りにした俺達。


「さて、この男をどうするかですが……」


 女神は気絶したコーストを閉じ込めて棺を踏みつけて言う。


「とりあえず、どっかに埋めとくか?」

「また復活すると面倒なのでそうしたいところですが……」


 俺の言葉に返事を返すと、女神は国王の方に視線を移す。


「いや、その男は国の牢獄へ入れよう。そこで厳重に拘束して、しばらくは我が国で管理する」

「国王様がそう仰るのなら……では、私達はこれで失礼します」


 女神がそう言うと俺達に視線を向けて出口の方に促してくる。


「あ、じゃあ俺達はこれで……」

「失礼しまーす……」

「……リリィも」


 ペコペコと頭を下げながら俺達は謁見の間を出て行こうとするのだが……。


「待つが良い」


 国王の一言に俺達は足を止める。


「な、何でしょうか……?」


 カルミアちゃんは若干震えた声でそう問いかける。

 すると国王が側近の兵士達を連れて俺達の元へ歩いてくる。


 まさか、城への不法侵入の事、まだ許されてないのでは……。

 俺はそう考えて一瞬身構える。だが、それは杞憂だった。


 国王は目を瞑って僅かに首を下げて俺達に礼をする。


「……この度、君達には世話になった。今回の件、この際君達が城に不法侵入したことは不問にしよう」

「え、マジ?」


 国王の一言に俺は呆気に取られて思わず素で話してしまう。


「今回の事件の真犯人を見つけ出して捕縛してくれた立役者だからな。……それで何かお礼をしたいのだが……希望はあるだろうか?」


 ま、マジか。国王様直々にお礼してくれるってよ。

 俺はその一言に、思わずゴクリと唾を飲み込む。


「なら、とりあえず生活に困らないだけのルピーを――」

「待ちなさい、砕斗」


 自分の要望を口にしようとすると、後ろの女神に止められてしまう。


「な、何だよ……?」

「折角国王様がそう言ってくれているのです。ここは私達の要件を済ますのが良いのではないでしょうか?」

「要件?」


 リリィが不思議そうな顔をして首を傾げる。


「ふむ、私に何か頼みごとがあるのか?」


 レガーティア国王は顎に手をやって俺達に尋ねる。

 すると女神は意味深にカルミアちゃんの方に視線を向ける。


「……カルミアさん、心の準備は良いですか?」

「……っ……はい」


 一瞬、躊躇したように見えたが、カルミアちゃんはしっかり頷く。


「ふむ……何か重要な話らしいな。……あい、分かった。だが今日の所は城でゆっくりしていくと良い。君達を客人としてもてなそう」

「あ、ありがとうございます……!」


 危うく犯罪者にされるところだったというのにいきなりの厚遇だ。

 リリィは目を丸くしてその場に立ち尽くす。


「だが、その前に――」


 国王は気絶したコーストが眠る棺に視線を移す。


「その男を処遇を考えねばな……まずは地下牢獄へ送るか」

「ハッ!」


 国王に命令された兵士達は、その棺を数人で持ち上げて部屋から運び出していく。


「では、客間に案内しよう。彼らを案内してやれ」

「……宜しいのですか?」


 国王の側近の兵士達が訝し気な様子を浮かべる。


「今回の事件、彼らが首謀者では無かったとはいえ、国王様の命が脅かされそうになったのは彼らの責任だと思いますが……」


 ……ギク。


「だが、彼らに命を救われたのも事実。それに彼らをここに連行したのはお前達、その指示を出したは国王である私だ。ならば、責任の所在は私という事になるが?」

「ですが……いえ……承知しました」


 そう言って側近達は納得していない様子のまま、俺達を案内するために謁見の間を出て行く。


「それでは今日はゆっくり寛いでくれ。大事な話はまた明日という事で良いか?」

「はい、私達は構いません」

「では外に案内役を待たせてあるから、それに従ってくれ」


 そう言って国王も謁見の間から出て行った。


「あの、リリィはどうすれば……?」


 謁見の間に残されたリリィは困惑した表情で俺達を見る。


「リリィさんは砕斗が危ない所で助けに来てくれましたし、私達と一緒に来ればいいじゃないですか」


 女神はそう言いながら優しい笑みを浮かべる。


「良いのかな……?」

「もしダメって言われたら俺達が説得するから大丈夫だぜ? もし一人が不安っていうなら俺の部屋にでも来るか?」

「えっ!?」

「ん?」


 ……もしかして、俺ヤバ目の発言したか?


「いや、変な意味じゃねーからな? ……おい女神、暗黒微笑浮かべてんじゃねー!」

「いえいえ、そんな表情してませんよ? ねぇカルミアさん?」

「サイトさん、そんなにリリィちゃんが好きなんだ……?」

「ちょっとカルミアちゃん!?」

「冗談ですよ、冗談♪」


 慌てる俺の様子にクスクスと笑うカルミアちゃん。

 そんな俺達の様子を見て、リリィはクスリと笑って言う。


「……うん、ならお言葉に甘えちゃおうかな……」

「お、なら一緒に行こうぜ」


 俺はそう言ってリリィに手を差し伸べる。

 するとリリィは俺の手を掴んで嬉しそうに微笑んだのだった……。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

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