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第70話 ここからは危険な領域

 その後、俺達は兵士達に腕を縄で拘束され国王の前に突き出される事になった。


「お前達、さっさと歩かないか!!」

「おいそこの金髪の女! お前が門番達を唆したんだろう!? ……おい、無視するな!」

「男と金髪の女はともかく……こんな大人しそうな少女と子供が……いやいや、賊に同情は禁物だな……」


 俺達は兵士達に連行されながら厳しく罵倒される。

 真犯人を暴いて事件を解決に導いたというのにこの扱いは納得いかない。

 というか、こいつらは女神の言葉で洗脳されていた筈では……?


「おい、ミリアム。どうなってんだよ……?」

「私の力が足りなくて彼らの洗脳を解けてしまったようです……誤算でした」


 女神はちょっと悔しそうにそう呟く。


「誤算ってオイ。あんだけ自信満々で洗脳解かれるとかお前、本当に神様かよ?」

「仕方ないでしょう。地上に降りた時に力を制限されて効果が薄くなってるんですから……」


 俺と女神は周りに聞こえないよう小声で言い合いながら歩く。

 すると後ろを歩くリリィとカルミアちゃんの声が聞こえてきた。


「り、リリィ達どうなっちゃうの……?」

「大丈夫だよ、リリィちゃん。お姉ちゃんたちが何とか説得するから……」


 怯えるリリィをカルミアちゃんが優しく慰める。


「……」

「……」


 そんな二人のやり取りを見て俺と女神は無言になる。

 リリィを巻き込んでしまったのは流石に良心が痛んでしまう。


 万一の事があったとしてもこの子だけは何とか無事に返してあげたいが……。


 ……と、その時だった。前を歩く兵士達が立ち止まる。


 俺達も足を止めて前を見ると豪華な装飾の付いた大きな扉があり、どうやらここが謁見の間らしい。


「国王様に不届き者を捕まえたと報告してくれ」

「はっ!」


 一人の兵士が扉を開けて中に入っていく。

 すると命令をした兵士が俺達の所に来て言った。


「今からお前達を国王様の元へ連れて行く。妙な真似をしたら命は無いと思え」


 兵士はそう言って俺達を睨みつける。

 その様子を見て後ろのリリィが怯えていた。


「……あの、せめてリリィは勘弁してあげてくれませんかね?」

「え?」

「リリィとは誰の事だ?」


 俺の言葉にリリィが反応を示すが、兵士は怪訝な反応をする。


「そこの幼い少女の事です」


 兵士の反応に応じたのは女神だった。


「無理矢理連れて来てしまったんです。彼女には何の非もありませんから見逃してあげてくれませんか?」

「そうですね、私達三人の問題です」


 女神がリリィの事を庇うと、後ろのカルミアちゃんも続く。


「さ、三人とも……」

「うーむ……確かに、お前達と比べて彼女は明らかに幼い……だが……しかし……」

「頼むよ。その子は何も悪くないんだ」


 俺がそう言うと、兵士は俺達をジッと見てからリリィに視線を向けて彼女に質問をする。


「そこまで言うなら……そこの少女よ、この男達の言葉は真実か?」

「リリィは……」


 リリィは俺達と兵士を交互に見ながら迷うように口ごもる。

 俺達は表情を緩めて無言で彼女に頷く。


「どうなんだ?」

「……うん……リリィは巻き込まれただけです……」

「そうか。分かった、ではお前だけ見逃してやろう」


 兵士の言葉を聞いて周りの兵士たちがざわつく。


「良いのですか!?」

「何かあれば俺が責任を取る。彼女だけは帰してやれ」

「……分かりました。それではキミ……城の出口まで送ってあげよう……」

「……うん」


 リリィは俺達に申し訳なさそうな表情を浮かべて背を向ける。

 すると、彼女を先導する兵士が彼女の前を歩いてこちらに遠ざかっていく。


 ……これで、リリィは無関係だ。俺達に巻き込まれることもないだろう。


 俺達はそう考えて胸を撫で下ろす。だが……。


「お兄ちゃん」

「ん?」


 リリィの声が聞こえたので彼女の方に再び視線を向けると、彼女はこちらに小さな何かをひょいと投げてきた。俺はそれを迷わず受け止めて渡された物を見ると、それはいつか見た青い石だった。


「……これは」


 渡されたこのアイテムの意図に気付いて俺は再びリリィの方を見る。だが彼女は役目を果たしたと言わんばかりに、俺達に再び振り向くことなく兵士の後ろを付いていく。


「リリィちゃん、今何か投げた?」


 カルミアちゃんは俺の反応を見て不思議そうに首を傾げる。


「……いや、何でもねーよ」


 俺はそう誤魔化して石を懐に仕舞うと、再び前を向いて歩きだすのだった。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

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