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第54話 唖然

 リリィの意外な活躍により一時的に逃走を成功させた俺達。しかし、それでも迷宮のあちこちから現れる魔物達から困難であり、体力の限界が来た俺達は部屋の一つに籠って息を潜めていたがそれも長く続かず、魔物に見つかってしまう。


「グオオオ!!」

「ギャアアアアアム!!」


 施錠した扉を破壊して入ってくる魔物達。部屋が広くないので魔物も数匹しか入ってこないが、扉の向こうには沢山の魔物が詰め寄っており袋の鼠状態だった。


「くっ……ここまでか……!」


 俺は隠れることを諦めてリリィを守るために彼女の前に立って剣を抜く。


「ど、どうするの!?」

「こうやったらやるしかない。お前は隙を見て投石で援護してくれ」


 俺はそう言いながら、こちらに向かってくる魔物達に叫ぶ。


「おいテメェら、たった二人相手に寄ってたかって恥ずかしくねぇのかよ。男なら正々堂々とタイマンで勝負しろや!!」

「(いや、魔物が応じるわけないでしょ!?)」


「ギャオ!」

「グオオ!!」


 そんな俺の挑発に二体の魔物は怒りの表情を浮かべ、そのまま俺達に向かって飛び掛かってくる。


「チッ!」


 舌打ちをしながらその内の一体の攻撃の鈍器による攻撃を剣で防ぐ。そしてもう一体の魔物は俺の背後のリリィがスリングによる投石によって打ち倒される。それ強くね?


「ギャオォ……!」

「ナイスだ、リリィ……! おらぁ!!」


 魔物と鍔迫り合いをしていた俺はその隙を狙い、魔物に剣を突き刺した。


「ギャアアア……」


 そして、そのまま力なく倒れ付す魔物を見て思わずガッツポーズを決める。


「いよっしゃあ!! ……オラオラ、数で攻めても無駄だって分かっただろうが!! これ以上痛い目に遭いたくなければ消えやがれッ!!」


 よし、こう言えば魔物達も怖気づくだろう。

 俺はそう言いながら剣をブンブン振って威嚇する―――のだが。


「ギャアアア!!」

「GUUUUUU!!!」

「フシャー!!!」


 魔物達は怯えるどころか怒り狂って喚き声を上げ始める。


「あ、あれ、余計怒ってる?」

「当たり前だよっ!」

「ま、まぁ落ち着けって……とりあえずタイマンやろうぜ?」

「だから魔物がそんなの応じるわけが……」

「ギャオオオオオオ!!!」


 リリィの言葉に被さるように魔物達が叫び声を上げて襲い掛かってくる。俺は咄嗟に剣で攻撃を受け流して、そのままカウンターを浴びせて襲い掛かってきた魔物を退かせる。


「ウォォォォォォォ!!」


 が、通路で待機していた魔物が吠えて、それに合わせたように魔物達が一気に押し寄せてきた。


「も、もう駄目だ……!」


 ……彼らはついに観念してしまう。

 ……残念。サイトの冒険はここで終わってしまうのか……?


 だがしかし、忘れないで欲しい。彼には心強い仲間が居るという事を―――!


「サイトさーん!!」

「!」


 部屋の外から聞き親しんだ少女の声が響き、魔物達は一斉に振り返る。


 次の瞬間、一人の少女がこちらに向かって走ってきて魔物達が武器を構えて彼女に群がっていく。


 だが、その姿が一瞬で搔き消えて目の前にカルミアちゃんの姿が現れる。同時に魔物達の喉笛や胸元から鮮血が迸り、魔物は次々と倒れていった。


「か、カルミアちゃん……」

「はっ、はぁ……やっと見つけた……っ!」


 そう言って疲れ切った表情でカルミアちゃんが俺の傍に歩み寄ってくる。そして通路の奥から爆音が聞こえたと思ったら煙が立ち込め、そこから女神も姿を現した。


 女神が部屋に入ってきて俺の姿を捉えると、疲れた表情で息を吐いて言った。


「探しましたよ、砕斗。こんな所で何やってんですか……」

「二人とも、無事で良かった……」


 俺を心配する二人の声を聞いて、俺達は気が抜けてしまい、


「……ははは……」

「し、死ぬかと思ったぁ……」


 こうして俺達は仲間と合流することが出来た。


 ◆◇◆


 魔物に追い詰められたサイトとリリィ。しかし、ギリギリのタイミングで駆けつけてくれたカルミアと女神のお陰で事なきを得たのだった。


「……はい、これで終わりました」

「おう、サンキューな」


 俺は女神に怪我の治療をしてもらい、リリィに付けてもらった頭の包帯を外す。怪我はすっかり治っており、これでもう万全だ。


「外の魔物は?」

「ひとまず部屋に群がってた魔物達は全部処理しましたよ」

「サイトさん達が逃げ回ってくれてたお陰で階層内の魔物が全部一か所に集まってきてたみたいです。お陰で一網打尽に出来ました」


 俺の質問に女神とカルミアちゃんが答えてくれる。

 そして、改めて俺達を救ってくれた仲間達に深く頭を下げる。


「ありがとう、二人とも。今回ばかりはマジで助かった」

「あ、あの……リリィからも言われて……二人が救援に来てくれなかったらリリィ達は死んでました……ありがとう……」


 おお、リリィが二人に謝罪してる……。


「リリィちゃん……ううん、私も二人が無事で良かったよ」

「ふう……一時はどうなるかと思いましたが、これで無事に帰れそうですね」

「ああ、心配させて悪かった。こんな所にもう用は無いし帰ろうぜ」


 俺の言葉に三人は頷く。そしてリリィは助けられたお陰か、二人に対する態度が軟化しておりカルミアちゃんに手を引かれて部屋を出ていった。


 残された俺と女神も一緒に部屋を出るだが、その時にこの場に居ない人物の事に気付いて女神に質問する。


「助けに来てくれたのは二人だけか? ストレイボウの野郎はどうした?」

「いいえ、私達だけです。……あんな薄情な男、頼りたくもない」

「……?」


 女神の顔をチラリと盗み見ると、随分と不機嫌そうな顔をしていた。だがその表情は直ぐにいつもの表情に戻り、リリィ達の方に向かって歩きだすのだった。


 ◆◇◆


 彼女達が残りの魔物達を全部倒してくれたのか、帰りに魔物に遭遇することは一度もなかった。カルミアちゃん達が既に地下一階へ通じる登り階段を見つけてくれているという事で、俺達四人はダンジョン内を堂々と歩いていた。


「サイトさんが中々戻ってこないから私達ダンジョンの中に戻ったんです、そしたら――」

「砕斗達と別れたところに戻ると周囲が酷く荒らされていて床に大穴が空いて驚きましたよ。二人の姿もありませんでしたし、一体何があったんですか?」

「……話せば長くなるんだけど、実はな」


 俺はダンジョンを歩きつつ、二人にあの後の出来事を掻い摘んで話す。


「ゴーレム……? そんな強力な魔物に襲われたの?」

「災難でしたね……それにしても深層に居るはずの魔物がこんな浅い階に出現するとは……」


 と、女神は疑問の表情でリリィに顔を向ける。

 その視線にリリィはふるふると首を横に振って答える。


「リリィも分からないの。ゴーレムはこの大空洞の深部を守護しているガーディアンでずっとその場から動かないはずなのに……」

「だとするなら、何者かに操られていた……それとも守るべき価値を失った遺跡と気付いて自らの意思で役目を放棄したと……?」

「……分かんねぇな。そのゴーレムも下に落ちてバラバラなっちまってるだろうし……」

「ギルドに戻ったらその辺りの調査をお願いした方が良いかもですね」


 カルミアちゃんはそう言って俺達の前に出る。


「さ、ここの突き当たりを右に曲がった所に階段がありますよ。行きましょー」


 カルミアちゃんは少し機嫌良さそうにステップを踏みながら先行して行った。


「機嫌良さそうだな、カルミアちゃん」

「砕斗とリリィさんが無事で居てくれて喜んでるんでしょう」

「マジで天使だわカルミアちゃん、惚れ直すわ」

「ちなみに私は女神ですが」

「比喩と事実を一緒にすんな! ってかこのやり取り前にやったわ!!」


 俺は女神の言葉に思わずツッコむ。

 が、俺達のやり取りを聞いていたリリィが女神を疑わしい表情で見る。


「……どうしました?」

「今、自分の事を女神って言わなかった?」

「あ」

「あっ……」


 女神は失言に気付いて自分の口を抑える。


「え、何……その反応」

「いやいやいや、今のはただの冗談だよ。気にすんなって。な、ミリアム?」

「そ、そうですね……」

「……?」


 そんな俺達を疑わし気に見るリリィだった。そして、突き当たりを右に進んだ所で、何故か先行していたカルミアちゃんが方針した様子で立ち往生していた。


「おーい、どうしたカルミアちゃん?」

「……」


 俺が声を掛けるのだが、カルミアちゃんは無反応で放心したまま微動だにしない。


「……? どうしたんだ、一体目の前に何が――」


 俺は彼女の視線の先を辿ってみる。そこには、階段が有って……。


「……え?」

「……こ、これは……一体……」

「な、何で……?」


 彼女の視線を辿った俺達は、彼女が放心していた理由を知る。

 瓦礫によって階段が塞がれており、先に進むことが出来なくなっていたのだ。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

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