第44話 職業体験
中略。宿を取って食事を済ませた俺達はカルミアちゃんの要望通り、冒険者ギルドの門を叩いた。
「ちわーっす、みかーやでーす」
「その挨拶なんですか……」
俺の挨拶に女神様はツッコミを入れる。
「いや、定番のパターンかと」
「なんの定番ですか……」
「サイトさんって、時々変な事言いますよね」
そんな俺達のやり取りを冒険者達は不思議そうに見ている。
「なんだ、あいつら?」
「見ない顔だが新人冒険者だろうか……」
「つか男の連れの女2人を見ろよ。両方超美人じゃん」
「あんな冴えない男に……」
「アレだろ、荷物持ちとかパシリじゃねーの?」
「金髪美人の方、何処となくSっぽい雰囲気だもんな。あり得るわ」
おうおう、初対面で中々酷い言われようじゃねーか。
「っていうか、あの男さっきなんて言ってた?」
「ええと、確か『ミカーヤ』とか?」
「……なんかの呪文か?」
「さぁ……?」
俺達の奇怪な行動に冒険者達は首を傾げていた。そんな彼らに構わず俺達はギルドの内部を進んでいくと、受付のカウンターに一人の女性が立っていた。
女性は俺達に営業スマイルを向けて言った。
「ようこそ、レガーティア冒険者ギルドへ。冒険者ギルドは護衛、モンスター討伐、遺跡調査、被災地への救援活動など様々な依頼を受け付けております。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「あー、すんません。今日は冒険者ギルドの見学に来たんすけど……」
俺は三人を代表して話をする。
「なるほど、見学ですね。ということは依頼ではなく冒険者の仕事に興味があると?」
「まぁそんな感じっす。……ね、カルミアちゃん?」
「あ、はい!」
「グリムダール大陸の方では『冒険者』という仕事が無かったもので、少々興味がありまして。もしご迷惑でなければお願いしたいのですが」
俺の言葉にカルミアちゃんが頷き、女神様が言葉が足りなかった俺の代わりに補足をしてくれた。
「構いませんよ。冒険者ギルドは人材を求めているので見学や職業体験も受け付けています。
もし正式に冒険者として登録された場合、レガーティア国王様の計らいで一人1万ルピーの支援金が支給されます。それ以外にも、戦闘訓練や座学研修など冒険者としての技能を身に付けるための講習を受ける事も出来ますよ」
「マジか、至れり尽くせりっスね」
「それだけこの国は『冒険者』という職業に力を入れているという事です」
受付の女性はそう言って俺達に笑顔を向けて言う。
「それでどうしますか。見学だけでも可能ですが実際に職業体験することも可能ですよ?」
「体験って?」
カルミアちゃんが目を輝かせて反応する。
「はい。ギルド職員の監視の下で、他の冒険者の方々と一緒に簡単な依頼を受けてもらいます。報酬に関しても他の冒険者の方々と分配する形になりますがちゃんと支払わせて頂きます。とはいえ、仮登録の為に書類や能力検査などを受けて頂くことになりますが……」
「……だってさ、どうする?」
「カルミアさん、貴女が決めてください」
俺がカルミアちゃんの方に振り向くと、女神様は彼女の目を見てそう言った。
「え?」
「冒険者になるかどうかは置いておくとしても、貴女の力を周囲に認知させるには丁度良い機会だと思います。
レガーティア国王は冒険者ギルドに力を入れているそうですし、ここで私達が目覚ましい活躍をすれば向こうから会いたいと言ってくる可能性もあります。そうすれば私達の目的も達成しやすい。そうではありませんか、二人とも?」
「……!!」
なるほど、女神の話も一利あるかもしれない。
正直、冒険者の仕事をこなすなんて怠くてこの上なかったが、目的達成に近付くなら俺もやる気を出さんわけにもいかんだろう。
「やろうぜ、カルミアちゃん」
「サイトさん……! ……決めました。私達、仮登録して体験してみたいです!」
「……では決まりですね」
「というわけっス、受付さん。俺達三人お世話になりまーす」
そんなやり取りをする俺達を見て受付嬢は少し呆気に取られていたがすぐに営業スマイルに戻る。
「そ、それでは書類の作成と能力検査を行います。少々お時間が掛かりますのでその間にギルドの中を見学して頂いて構いませんよ」
俺は頷くと二人と共にギルドの奥へと足を踏み入れて行ったのだった。
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