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第41話 次の国へ

 俺達は旅の準備を整えてグリザイユを出ることにした。


 この街の奥の方には隣国に通じる巨大な門があり、門の傍には門番が常駐する『国境砦』という施設がありそこで許可証を貰う必要がある。


 その門を抜けて大陸と大陸を繋ぐ大きな橋を渡ると、次の国『レガーティア』の領地に入る事になる。かなり手続きが面倒で申請にも時間が掛かると聞いていたのだが……。


「なんか簡単に許可証手に入ったな」

「そうですね、助かりました」


 俺達はついさっき発行してもらえた許可証を眺めながら門に向かっていく。


「グリムダール国王に推薦された勇者のカルミアさんが居ますからね」

「あー、そういえばカルミアちゃんの名前を聞いたら門番の顔つきが一気に変わったもんな」

「私……結構有名人だったりするんでしょうか?」


 彼女は苦笑いを浮かべて言う。


「……で、この先のレガーティアはどんな場所なんだ」

「ええとですね……」


 カルミアちゃんの話によるとレガーティアはグリムダールに比べると小国だが、数十年間戦争や争いごとが殆ど無かった平和な国だそうだ。しかし、魔王が出現したことで人を襲う魔物が出現するようになり、今はその対策の為に戦力を集める色々な施策をしているとか。


「ふむ……それならレガーティアで”黒炎団”に対抗する戦力も集められそうですね」

「だな。強い奴を集めているなら丁度良いし、どうせならレガーティア城に乗り込んで国王に直訴した方が効率良いはずだ」

「……問題は、私が上手くやれるか……なんですけど」


 カルミアちゃんは自信なさげな表情を浮かべる。


「大丈夫、仮に失敗しても俺達がカバーするよ」

「カルミアさん、初めから失敗することを考えてはいけません。もし失敗しても何度もチャレンジすればいいのです」

「……は、はい」


 ……いきなり国王というワードを出したのはマズかったか? 小さな村や町で彼女に演説などをさせてから、レガーティアに移動するという流れが良かったかもしれない。


「(砕斗よりも彼女の方が今後の課題が多そうですね……)」


 サイトが彼女の事を気遣うのと同じく、女神も彼女の精神的な部分に危うさを感じていた。


「……まぁ、悩むのは後にしましょう」

「おう、さっさとレガーティアとやらに行こうぜ。この門を抜けた先なんだろ?」

「はい」


 俺はそう言って歩き出し、門をくぐった。


◆◇◆


 門を越えて歩き続け、大きな橋を越えたところでようやく休める場所に辿りついた。


 石畳の街道が真っ直ぐに伸びており、道の両脇には並木や芝生が生えていて、その奥にはレンガ造りの建物が見えた。そして俺の目線の先にある噴水広場では複数の屋台が並んでおり、その中には武器屋などの冒険に役立ちそうな店も見える。


「へぇ……結構栄えてるな」

「ここはレガーティアとグリムダールを結ぶ場所です。まだ入り口の方なのでレガーティアはもっと先の方にありますよ」

「まぁ国の境の傍にあると不都合も多いでしょうからね……。門を潜ってから見掛ける兵士の鎧も変わっていますし、彼らはレガーティアの兵士なのでしょう」

「レガーティアは平和な国って聞いてたけど、それでも兵士が居るんだな」

「砕斗、その考えは平和ボケし過ぎです。国を守る兵士くらい何処の国にもいますしレガーティアも例外ではないでしょう。というか兵士が居なくて万一国に攻め込まれたらどうするんですか? 大人しく降伏しろと?」

「う……まぁそうか……」


 確かに女神様の言う通りだ。

 平和な国だからと言って兵士の居ないなど論外だろう。


「レガーティア城までは数日掛かりますし、それまでは何度か休憩所を挟んで進むことになるみたいです。ここなら物資の補給もできますし十分な蓄えを用意してから出発した方が良いと思いますよ、サイトさん」

「……また馬車での旅か……怠いなぁ……」

「全く……そんなに不満なのですか?」


 俺が不満を漏らすと女神様が呆れた声を出す。


「馬車って滅茶苦茶揺れるから腰痛いじゃん……。馬だって長く走ってるとすぐに疲れて休ませないといけないし……。あーあ、自動車があればなぁ……アレなら数百キロ離れた場所でも楽なんだが……」

「じどう……じどうしゃ? なんですか、それ?」


 カルミアちゃんは俺の言葉を繰り返して首を傾げる。


「えーと、電気で動かす乗り物……って言えば伝わるかな?」

「サイトさんの世界には雷魔法を動力にするお馬さんみたいな動物が居るんですか?」


 彼女の中では電気=雷魔法という図式が成り立っている。もっとも、俺が以前に雑な説明をしたのが誤解の原因なので今更訂正するつもりもないが。


「ええと、電気はそれでいいけど乗り物は馬じゃなくて、鉄を組み立てたものでね?」

「古代兵器?」

「いや待って、兵器はともかく『古代』ってワードは何処から出てきた?」

「昔、そんな文明があったって習った気がします?」

「なんで疑問形やねん」

「こほん……二人とも、脱線し過ぎですよ」


 女神様が咳払いしながら俺達の会話を制止する。流石に本筋から外れ過ぎたか。


「あ、すまん……俺も我儘言い過ぎたわ」

「ひとまず食料や衣服、その他足りない生活用品だけを補充しましょう。その後に昼食を済ませてからここを出るというプランで良いですか?」

「はーい」

「オッスおねがいしまーす」

「砕斗、今度その返事したら天罰喰わらせますよ」

「なんでや」


 女神様の俺に対してだけ厳しい対応に文句を言いながら、俺達は必要な物資を買い出しに出掛けた。


 それから1時間後。

 必要な物資を集めて早めの昼食を取った俺達はグリザイユを後にした。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

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