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第25話 馬泥棒

ここまで読んでくださってありがとうございます。

気に入っていただけたら、いいねや高評価、感想をお待ちしております。

 次の日の朝――


 テントの中はカルミアちゃんと女神様に譲ったので、俺は外で毛布に包まって眠っていた。

 身体に照らされる光と鳥のさえずりで深層に眠っていた意識が覚醒し始める。


「ん……んー……」


 俺はゆっくり瞼を開く。

 空はすっかり明るくなっており、俺は身体を起こして立ち上がる。


「ふわぁ……朝か……眠い……」


 俺は眠い目を擦りながら、顔を洗うために近くの川に向かう。俺達が野営をしていたのは森の入り口辺りで、昨日俺が魚を釣っていた川はすぐ傍にある。


 そして、軽くジョギングしながら森を出た時――


「……?」


 僅かな違和感を感じた。しかし、何だ?


 別段気になる事は無いし周囲に違和感を感じるものは……。

 俺は念の為に森の入り口に振り向くと、少ししてから違和感の正体に気付いた。


 昨日の夜、馬に餌を与えるために森の近くまで馬を移動させて近くの木に手綱を引っ掛けて逃げないように固定していた筈なのだ。なのに、その肝心な馬の姿が何処にもない。


 その事実に気付いた次の瞬間――


「ヒヒーーーーン!!」

「!?」


 少し遠くから、馬の嘶きが聞こえてきた。


「な、なんだ!?」


 俺は嫌な予感がして急いで馬が居た場所に駆ける。

 そして、辿り着いた時、俺は唖然とする。


 そこには、馬よりも遥かに体格の小さな子供の様な姿の魔物―――


 ゴブリン二匹が俺達の馬に乗っかって、手綱を引っ張って無理矢理従わせようと悪戦苦闘していた。


「う、馬泥棒!!」


 俺はその光景を見て思わず叫んだ。

 すると、後ろに乗っかっていたゴブリンがこちらに気付くと馬から降りてくる。


「ゴブっ!!」

「ゴブブ! ゴブっ!!」

「ゴブ!」


 ゴブリンたちは何かしらの身振りをしながら話をしている。


 話の内容は当然理解出来ない。

 しかし数秒後、馬に乗っかったままの方のゴブリンが手綱を大きく引っ張り、馬が走り出してしまう。


「ま、まてっ! ……っく!」


 俺は走り出して馬を止めようとするのだが、地上に降りていたもう一匹のゴブリンが俺の前に立ちはだかった。そのゴブリンは右手に錆びついたメスのようなナイフを握っており、その切っ先を俺に向けてきた。


「ゴブ! ゴブ、ゴブ!!」


 何かしらの攻撃的な言葉を発しているのだろうゴブリンは叫びながら近づいてくる。


 一方、俺は無防備だった。テントの近くに一応、自衛の為の剣は置いてあったのだが、顔を洗うために森を出たので持ってきていない。


「や、やば……!」


 このままだと俺達の馬が何処かに行ってしまうが、目の前のゴブリンをどうにかしないと俺の命が危ない。かといって武器を持ったゴブリン相手に無手で戦えるほど俺は強くない。


 逃げてカルミアちゃん達に助けを求めるか。

 それとも自力でコイツをなんとかして、その後にカルミアちゃん達に――


 その選択を選ぶ前に、ゴブリンは俺の懐近くまで入り込もうとしていた。


「っ!」


 危険を感じた俺は咄嗟に横跳びする。

 助けを呼ぼうにも、ここまで接近された状態で迂闊に背後を晒すと危険だ。


「ゴブっ!!」


 しかし、ゴブリンはそんな俺の行動もお見通しだったようで、俺が横跳びした先に先回りしてメスのナイフを俺に突き立ててくる。


「しまっ……!」


 俺は慌てて身体を捻るが、完全に回避する事は不可能で、その錆びたメスの切っ先は俺の左腕を爪で引っ掻くように切り裂いた。


「いってぇぇえええ!!」


 斬りつけられた激痛が左腕に走り、俺は思わず悲鳴を上げる。

 傷付けられた箇所が火傷を負ったように熱く感じて鮮血が溢れてくる。


 しかも傷口が妙に汚くグチャグチャだ。

 錆で切れ味が悪くなっていたのが逆に酷くて、放っておけば悪化するかもしれない。


「ゴブっ! ゴブっ!」


 ゴブリンは俺が怯んでいる隙に再び俺に襲い掛かる。


「く、クソ野郎……!」


 馬の事は一旦忘れる。今は俺の左腕を傷付けたゴブリンを―――


「ぶっ殺す!!」


 俺は叫びながらゴブリンに殴りかかる。ゴブリンはニタリと笑って姿勢を低くして俺の大ぶりの攻撃を躱し、再び俺に刃物を向けてくる。だが、そこで俺は痛む左手でメスを持つゴブリンの腕をがっしり掴み取る。


 そして、そのままゴブリンをこちらに引き寄せると同時に、ゴブリンの顔面に渾身の右ストレートを叩き込む!!


「おっらぁぁ!!」

「ごぶっ……!」


 俺の渾身の右ストレートがゴブリンの顔面にめり込み、その衝撃でナイフを取り落とした。


 俺はさらにそのままゴブリンの首根っこを掴み、痛みに耐えながらそのままゴブリンを近くの木に投げ飛ばす。ゴブリンは運悪く後頭部を激しく木の幹に打ち付け、そのまま気を失った。


「はぁ……はぁ……」


 俺は息を切らしながら気を失ったゴブリンの身体に近付く。そしてゴブリンの首辺りを思い切りで蹴り飛ばして、首の骨をへし折って完全に止めを刺す。


「く……今は、カルミアちゃん達に報告しないと……!」


 酷くズキズキする左腕を抑えながら、俺は身体を引きづるようにテントまで戻っていく。

 そして、テントの幕をガバッと開けて中に居るはずの二人に声を掛ける。


「カルミアちゃん、女神様、大変だ! 馬が――」と、俺は事情を話そうとするのだが――

「……え?」


 そこには、今しがた着替えようと白い純白の下着姿になっていたカルミアちゃんと、逆に黒い色っぽい下着のままこちらを見て硬直する姿の女神様の姿があった。


 そして、カルミアちゃんはというと――


「いやぁぁぁぁぁああ!!」


 そう叫びながら下着姿のまま俺に飛び掛かってくる。


「ご、ごめ――」


 俺は目を隠すように両手でガードしてカルミアちゃんの理不尽攻撃に備えようとする。しかし、カルミアちゃんの拳が俺に触れようとした寸前にピタリと止まる。


「さ、サイトさん……その左腕の傷……どうしたんですか?」

「……え」


 俺が防御する為に顔を両腕で隠した時に気付いたのだろう。カルミアちゃんは着替えを覗かれた怒りが完全に収まっていて、むしろ俺の左腕の傷を見て心配そうな表情を浮かべていた。


「あ、いや……ちょっと」

「見せてください!」

「え、でも……」

「いいから!!」


 俺はカルミアちゃんの勢いに負けて左腕を見せる。

 するとカルミアちゃんの顔が青ざめていく。


「抉れ方が酷い……腕も腫れてきてますし……早く治療しないと……」


 カルミアちゃんは自分が下着姿であることを忘れたように俺から背を向けて、テントの中にある鞄の中を漁りはじめた。結果的に彼女は俺にお尻を向けることになり、その形の良いお尻が目の前に晒される。


 これが普段ならガン見する場面なのだが、俺は酷くなっていく左腕の痛みでそれどころじゃなかった。


「カルミアさん、待ってください。私が治療します」


 そこで今までフリーズしていた女神様が再起動し、やはり下着姿のまま俺に近寄って俺の左手に触れてくる。


「ちょっ……?」

「いいから動かないで……!」

「は、はい!」


 女神様は強い口調で俺を黙らせて、そのままブツブツと呟いて俺の傷口に触れる。


「っ!」


 傷口に触れられた瞬間は痛みを感じたが、女神様の手が触れた場所に光が集まっていきすぐに痛みが消えていく。


「……まだ痛みはありますか。一応、毒消しもしたので問題ないはずですが……」


 女神様はそう言いながら俺の傷口から手を離す。すると、俺の傷は完全に無くなっており元の状態へと戻っていた。


「あ……うん……」


 俺は何が起こったのか分からず、自分の手を動かしながら返事をする。


「今の……癒しの魔法……ですか?」


 すると、女神様の後ろでカルミアちゃんが驚いた声でそう言った。


「魔法? 今のが……?」

「そうですよ。今のが魔法です。驚きましたか?」


 俺は女神様の言葉を聞きながら立ち上がる。


「す、凄いな……結構エグ目の傷だったんだけど、全然元通りだよ。……えっと、ありがとう女神様」

「ふふ……こういう時だけは貴方も素直なんですね」

「うるせぇよ……でも、本当に助かった」


 俺は素直に女神様に感謝の言葉を伝える。すると、女神様は「どういたしまして」と言って微笑んだ。以前、俺の胸に大穴が空いた時もこうして癒してくれたのか……。


「それで、サイトさん。何故そんな傷を……?」


 カルミアちゃんは俺の傍に来てそんな風に質問をしてくる。俺が立ち上がっている状態で二人ともテントの床に膝を付いた状態で座ってるので自然と上目遣いの状態だ。


 しかも二人とも下着姿。

 要するにこの位置からだと二人の上乳が丸見えだったりする。


 清楚なカルミアちゃんは白い下着、若干腹黒い女神様は黒いセクシーな下着でイメージ通り。カルミアちゃんは普段は目立たないが歳の割に結構な隠れ巨乳で、女神様は彼女よりも一回り以上大きな素晴らしいたわわを有している。


 先程まで傷の痛みで見ている余裕が無かったが、どちらも柔らかそうで素晴らしく目の保養になる。


「……サイトさん、聞いてる?」


 俺が二人の魅力的な胸に視線が釘付けになっていると、カルミアちゃんが俺の視線に気付き声を掛けてくる。


「あ! いや……その……」


 俺は慌てて視線を逸らす。


「と、とりあえず後で事情を話すから服を着てくれ……!」


 俺はそう言いながら慌ててテントから出た。

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