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第143話 後日談的なエピソード3

 前回までのあらすじ。ライオンの獣人のレオが仲間になった!


「なんだ。突然叫んでどうした、サイト」

「いや、章跨ぐ時はこれをしないとダメな気がしてな」

「お前はたまによく分からないことを言い出すな……」


 レオが若干呆れたような声で言った。


「ま、それはさておきレガーティアに戻る前にレストアに立ち寄らないとな」


「カミラさんに今回の一件を報告しなきゃですもんね」


「ああ、それにレオを旅に連れて行くことを報告しなきゃダメだからな」


「……あの御仁には礼を言っておかねばならんな」


「では早速戻りましょうか。飛ばせば数日でアステアに帰れるはずです」


 そうして俺達はレガーティアに戻る前にレストアに立ち寄る事にした。


 数日後、予定通りにレストアに辿り着く。

 そこで無事に獣人達と人間の関係性を修復出来た事の報告と、レオの同行についてカミラに報告した。


「ヒッヒッヒ、上手くいったかい。そりゃあ良かったよ」


 相変わらずカミラは魔女みたいな怪しい笑いを浮かべながら俺達の報告を聞いていた。


「んでだ。この街で働くことになってたレオは俺達の旅に同行することになった。一応問題ないと思うが連れてっていいよな」


「そりゃあ本人が決めた事なんだからワタシは何も言う事は無いさぁ」


 カミラはそう言いながら座って目を瞑っているレオの方を向く。


「……すまない。色々と世話になった」


「構わないさ……。そうだ、アンタ達に頼んだ別件の事なんだが……」


「……ああ、あの事か」


 俺はレイグルに旅立つ前にカミラに言われた事を思い出す。主目的はレイグルに赴いて獣人達との関係性の改善だったが、実はもう一つの目的があった。


 アイゼンが幼少の頃にこの街に滞在していた獣人の子供を探して欲しいという事だった。当時、まだ子供だったアイゼンとその獣人は仲が良かったのだが、その獣人の両親が怒鳴り込んできて以降二度と会う事は無かった。


 もしその獣人に会う事が出来れば、謝罪の言葉を伝えてほしいという話だったのだが……。


 その獣人の名前はポロというらしい。


「……カミラさん、実はその事で残念な報告があります」


 カルミアちゃんは少しだけ声のトーンを落としカミラと向き合う。


「なんだい暗い顔をして。もしかして見つからなかったのかい?」


 何となく察したのかカミラは先読みしてカルミアちゃんに尋ねる。


「いえ、ポロさんは見つかりはしました……が」


 カミラの言葉にカルミアちゃんは首を横に振るう。


「……会えたけど会えなかったんです」

「それはどういうことだい?」


 カルミアちゃんの言葉を聞いてカミラは眉を顰める。

「えっと、つまりだな……」


 カルミアちゃんはどう伝えればいいか迷っているのだろう。

 代わりに俺が言ってあげることにした。


「カミラ。ポロは……12年前に死んでたんだよ……。当時、流行病があったらしくて、家族三人がその病にかかって亡くなっちまったみたいで……」


「そうか……。そうかい……」


 カミラは哀し気な表情を浮かべながら俯いてしまう。


「……残念だねぇ」

「でも一家のお墓が作られていましてお墓参りは出来ました」

「……そうかい、御苦労だったね」

「……後な。その子が亡くなる前の話らしいんだが……」

「……?」


 ……この事は、言わない方がいいかもしれない。

 だが、聞いた以上伝えるべきだよな……。


「どうしたんだい、何か言いたいことがあるんだろ?」


「……その一家の近所に住んでた獣人に聞いたんだが……最後にその子、『アイゼン君に謝りたかった。もう遊びに行けなくてゴメンね』……って知り合いに伝言を頼んだらしいんだよ」


「……!」


「……もし、レイグルに訪れることがあれば、アイゼンと一緒に墓参りに行ってやってくれ。……きっと喜ぶぜ」

俺の言葉にカミラは無言のまま頷くのだった。


 ◆◇◆


「レイグルの一件が丸く収まったのに、しんみりしちゃったね」


 カミラの家を後にした後、馬車で街を出る前にリリィはそんな事を言った。


「二人にとっては苦い思い出になるかもしれませんね……」


 それに女神も同意する。


「前に進めるなら良い事だと思いますよ。……でも、ポロ君がアイゼン君に謝ろうとしたのは別にあったんだと思います」


 カルミアちゃんは少し寂し気に言う。


「ポロ君もアイゼンさんに会えないのが辛かったんですよ。昔、獣人と人間だからという理由で引き剥がされて、そしてそれを後悔している内に亡くなっちゃって……だから、最後に謝りたかったんだと思います」


「……そうかもな」


 カルミアちゃんの言葉を聞いて俺もそんな風に思った。


「ま、これでアイゼンが少しは良い領主になると良いんだがな」

「なんにしろこれでこの国の依頼は終わりです」


 女神の言葉に俺達は頷く。


「……帰るか、レガーティアに」


 俺は空を仰ぎながらそんな事を言った。

ここまで読んでくださってありがとうございます

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