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第135話 無意識下

『砕斗、聞こえますか?』


 ……んお?


 女神の声が聞こえて俺は眠っていた意識が少し戻る。だが、前が見えず真っ暗だ。まだ目隠しをされているという事なのか?


『良かった、ちゃんと声が通じてますね』


 ……いや、ちょっと待て。こっちは声を出そうとしてるのに全然声が出ないんだが?


『大丈夫ですよ、貴方はまだ眠ってる状態なので視覚も声音も機能してなくて当然です』


 なんだと?つまりお前は夢の中で俺に話しかけているって事か?


『いえ、どっちかというと脳に直接文字刻んでるという表現の方が分かりやすい?』


 いや怖いわ!!


『冗談ですよ。……で、何故私がこんなことをしてるかというとですね』


 ああ、それだよ。

 ていうか牢屋の中で捕まってて処刑の直前で睡眠薬打たれた所までは覚えてるんだが……。


『合ってますよ。私を含めて薬を打たれて兵士達に雑に運ばれて、今、刑を執行する広場に運び込まれた感じです』


 ん?今?


『はい』


 待て待て、つまりお前は今その状況が見えてるって事か!?

 俺達の姿も把握してると?


『はい』


 いや、意識あるなら助けろや!!


『無理ですよ。私の力で一時的に兵士達を撃退したとしてもあなた達は意識を完全に喪失してます。意識を取り戻すまで待っていても別の兵士が来て同じ事の繰り返しです。最悪、他の人質を取られて目覚めた瞬間に詰みですよ?』


 そもそも処刑寸前に薬で意識失って処刑台直行してる時点で完全に詰んでるだろ!?


『だから私がこうして貴方と会話できる状態にしてるんですよ』


 おお、そうか。なんだかんだでお前神様だもんな。

 所で皆は無事なんだろうな?

 カルミアちゃんは? リリィは無事か? 当然、レオも無事だよな?


『皆、無事ですよ。無事に薬で眠らされて処刑を待つだけの状態です』


 もはや何が無事なのか分からない。


『実は、会話してるのは貴方だけじゃないんですよ』


 何?


『カルミアさん、リリィさん、レオさん。全員に私がこうやって対話している状態です』


 つまり全員が全員、身体は動かないが、お前との会話で状況を掴めているって事か?


『ええ、なので現状を把握した状態から意識を取り戻して即座に行動に移れるというわけです』


 なるほど、それは便利だな。


『というわけであなた達の意識が覚醒するのは残り1分後です』


 おい、唐突だな!?


『私達は今、広場で柱に縛られて身動きが取れない状況に陥ってます。足も宙に浮かされて普通なら意識を取り戻した瞬間にパニックに陥ること必至です』


 絶望的じゃねえか。


『しかも、周りは弓を持った兵士が囲んでいます。身動きが取れない状態で矢で串刺しにして殺すという非道な刑なのでしょうね……。

 私達から少し離れたところには観客席があり、そこにはレイグルから連れて来られた住民たちが座らされています。

 私達が殺されるところを見せて彼らに恐怖を植え付けて従わせる魂胆なのでしょうね……。

 こういう時、人間の残忍さに恐怖を感じますよ。……ですが、私がいる以上、そんな非道な真似はさせません』


 いや、どうすんだよ?

 お前だって力を全力で使えるほどの状態じゃないんだろ?

 そんな状態で俺達を助けられるのか?


『一人なら無理でしょう。ですが全員即座に覚醒できる状況ならば別。

 良いですか、あなた達は柱に縛られていると言いましたが、それに使われている物は標準的な強度のロープです。どこぞの世界の様に十字架で手足を釘で打ち付けられていたらアウトでしたね』


 想像するだけで怖いわそんなもん!


『なので、即座にロープを切るか引き千切れば自由に動けます。砕斗、武器は持ってないですよね?』


 ああ、牛の魔物の時に壊れちまったし、仮に持ってたとしても牢に入る時に取り上げられるだろうしな。カルミアちゃんもそうなんじゃねーか?


『ですが、貴方には私が教えた魔法があるでしょう?』


 !!


『あれを使って強引にロープを引き千切れば問題ありません。カルミアさんは懐に短剣を隠し持ってますし、レオさんは素のパワーが規格外なので何の問題もないでしょうね。

 あちらも念の為、彼だけは強度を上げているようですが、おそらく彼の前には何の意味もありません』


 いや、レオだけ色々戦闘力バグってね?

 ……って、待て。お前とリリィはどうなんだよ?


『私は魔法でロープを焼き切る手段が使えますが、リリィさんは自力では不可能です』


 ど、どうすんだよ!?

 リリィが奴らの的にされちまうぞ!!助けねーと!


『カルミアさんが自分のロープを切断して自由になった瞬間、即座にリリィさんを助ける手筈になってます。ですが、彼女が動いた瞬間、おそらく周囲の兵士が彼女達に向かって矢を放つでしょう。そこで……』


 そこで?


『貴方が彼女達を守るんです。

 カルミアさんに教わったパリイの技術と、私が以前に教えた強化の魔法があれば不可能ではありません。

 レオさんも頑丈ですが、彼は図体故に動きが遅い。貴方がやるしかないのです』


 で、出来るのか。俺に……!?

 意識が戻った瞬間、自身のロープを引き千切って、二人を身を挺して守るなんて……。


『出来ないんですか?』


 で、出来ると言いたいが……俺は戦闘も魔法も素人だ。俺が失敗して俺が死ぬなら自得だと納得できる。だが、俺が失敗して二人が殺されると考えたら……!


『……崩れゆく廃塔の中で、私を背負って飛び降りた貴方の勇気はその程度ですか?』


 !!


『あの時は私は何も出来ない完全な足手まといでした。もし貴方が力尽きた私を見捨てていれば、もっと安全な手段で脱出が出来たかもしれません。何故それをしなかったのですか?』


 お前を見捨てるなんてできるわけないだろ!!


『なら、私を救ったように二人を救ってみせなさい!!

 貴方はただの凡人じゃない!

 いざという時、大切な人の為に自分の命を張って奇跡を起こした!

 そんな素晴らしい人間なのです!!』


 ……さ、流石に照れるぞ、俺も……。


『私のこの期待、応えてくださいね?もし失敗して死ぬような事があれば、貴方を性転換して女の子にして復活させますから。あと三秒で覚醒しますから準備お願いします』


 おい、最後にとんでもねぇ爆弾発言したぞ!?

 てか、もう三秒しかないじゃねえか!!


『それじゃ、頑張ってくださいね』


 いや待てよ!おいいいいい!!!


 そして、俺の覚悟が完了しないうちに視界が広がっていった……。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

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