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第134話 鎮圧

 兵士達に捕まった俺達は、拘束された状態で鉄格子の付いた馬車に乗せられてレイグルから少し離れた山道へ連れていかれることになった。


 馬車で護送されながら処刑を待つ俺達は何も出来ずに無言で俯いていた。周りには兵士に囲まれており、外側は鉄格子で覆われているため脱出も不可能。何か相談しようとしても周りの兵士に筒抜けなので何も話すことが出来ない。


「……」


 ……だが、それでも沈黙を最初に破ったのはレオだった。


「あの男……ライアスの事だが……」

「……?」

「……俺の弟なんだ」


 その言葉を聞いて、俺達は息を呑む。


「……マジかよ」

「……ああ」


 ライアスはレオの弟だったとは……。

 だが、それならレオにとって余計今の状況は耐え難いだろう。


 何せその弟に殺されかかっている状況であり、俺達もまた今の状況を打開するには奴を殺す以外ない。


「昔のライアスは、誰よりも強く、そして誰よりも獣人としての責任感が強かった……だが、その生真面目な性格が災いしてか、人一倍思い込みが強くてな……この国の昔から伝わっている人間に対しての憎悪の歴史すら人一倍感化されてしまったんだろう……」


「……感受性の高い人なんですね」


 流石にレオが不憫だと思ったのか、女神は言葉を選んでレオに言った。


「……そうだな。……今から何年前だったか、俺はこの国の人間に対する憎悪に疑問を持ってしまった。

 その事をライアスに話した時は烈火の如く怒っていたよ……そして、弟は俺に何度も考えを改める様に要求してきた。

 それでも俺はこの国の在り方に未来が無い考え、何度も自分の考えを口にした……。

 結果、俺は”はぐれ”として認定されてしまい、俺に同調した仲間達と一緒に追放されることになってしまった……。

 ……もし、あの時、俺が嘘でも納得した振りをして奴の傍に居てやれば……今のように狂う事もなかったかもしれないな……」


「……レオさん」


「……すまない、こうなってしまったのは全部俺のせいだ。お前達を巻き込んでしまったことを後悔している」


 その言葉は、レオから放たれた言葉の中でも最も悲壮感があった。弟のライアスは責任感があると彼は言ったが、彼自身も同じように責任感が強いのだろう。


 レオは声を小さくして言った。


「アイツの事は俺に任せてくれ。お前達は自分達の事だけを考えろ」

「考えろって……」

「レオさんはどうするつもりですか?」


 俺とカルミアちゃんは質問する。

 だが、それは兵士達の居るこの場所では答えられない事だったのだろう。

 レオは、不器用に作り笑いを浮かべてそれっきり黙り込んでしまった。


 ……。


 それから一時間後、俺達を乗せた護送用の馬車は目的地に到着する。 馬車が目的地にたどり着くとすぐに俺達は兵士達の手に連行されて牢屋に連れていかれてしまった。


 俺達5人を纏めて同じ牢屋に閉じ込めると、ライアスは外から牢屋の鍵を掛けて言った。


「今から2時間後。お前達を処刑する」


「……っ!」


「俺はレイグルに戻って見物人を集めるとしよう。国を陥れようとした極悪犯の最期だ……さぞ見物人も多かろう……せいぜい遺言でも考えておくんだな。……ふふふ………ははははははは!!!」


 ライアスは狂ったように笑いながら去っていった。


「クソッ!!」


 俺は怒りに任せて牢屋の檻を殴りつける。

 だが俺の力ではとても壊すことは出来ない。


「……止めておけ。それよりも今は身体を休めろ」

「……」

「砕斗、その有り余る怒りは脱獄する時までとっておきなさい」

「……サイトさん、今は……」

「お兄さん……」


 ……確かに、ここで体力を使っても仕方がない。

 俺は皆の言葉に従い、大人しく牢屋の中で休む事にしたのだった。


 ◆◇◆


 そして二時間後、ついにその時が来た。


 時間になると兵士達が集団で牢の前に集まり鍵を開けると勢いよく牢の中に入ってくる。


 そして俺達一人一人に三人がかりで羽交い締めにして無理矢理立たせる。


「く……!」


 この人数相手だと脱走しようにも……!

 皆で集まって全員で抵抗すれば逃げる事が出来ると思っていた。


 だが、そんな俺達の考えを嘲笑うかのように、俺達に目隠しをして、兵士達はあろうことか俺達に注射器を突き付けてきた。


「な、何してんだてめぇら!!」


 俺が目隠しを外そうとすると兵士達に無理やり戻されてしまう。チクリと腕に何かが刺さった感覚が走り、俺は動きを止める。


「睡眠薬です。すみませんが抵抗できない様に眠って貰います……」

「くそ……!」


 俺達は抵抗するが、薬の力には敵わずに睡魔に襲われて意識を失うのだった。


「……あ……う……」


 だが、最後に俺は思った。

 女神である彼女ならそもそも薬なんて効かないのでは……?

 そう思ったが、それを言う事も無く俺は意識を失ったのだった。

ここまで読んでくださってありがとうございました。

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