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第119話 幽霊?

 次の日。

 手分けしてレイグルに仕掛けられている爆弾を捜索することに。


 流石に一人だと危険なので二人一組で探し、レオだけはそれとなく他の獣人達に危険が及ばないよう注意喚起を出しながら見回りをしている。俺とリリィ、カルミアちゃんと女神組は手分けして町の中を巡る。


 捜索は早朝から開始して途中で休憩を挟み、途中で女神だけは子供達の授業があったので抜けてもらう。そして、夕方に差し掛かろうとしてる頃……。


「くそ、見つかんねぇな」


 俺はそう言って一度休憩を取る事にした。

 結局、町中を駆け回って探し回ったものの、爆弾は見つからなかった。


「やっぱり何のヒントもなしに探すのは無謀だよ」

「カルミアちゃんの推測ならいけると思ったんだけどなぁ」


 膝に尻餅を付いて休んでいるリリィの言葉に、俺は水を飲みながら答える。


 かなり歩き回ったので、休憩のために立ち寄った小さな公園は夕日に染まっていて、獣人の子供達が楽しそうに遊んでいる。


「リリィは一緒に混ざらないのか? 別に遊んでていいんだぞ?」

「冗談。そんな事言ってる場合じゃないでしょ?」

「まぁな……」


 獣人の子供達の無邪気にはしゃぎ回る姿を見ながら、俺とリリィは話す。


「……」

「どうしたの?」


 俺は黙ってベンチから立ち上がる。そして子供達の方を向きながら口を開く。


「子供達に一回聞いてみるかって思ってな」

「ええー、爆弾の場所?」

「そこまでいかなくても、少しでも情報あれば何でもいいよ」


 そう考えて、俺は遊ぶ子供達の元へ歩いていく。


「あれ、お兄ちゃんどうしたのー?」

「一緒に遊ぶ?」


 獣人の子供達は、このレイグルで育った割にまだまだ純粋だ。

 傍から見れば怪しい俺たちにもこうやって懐いてくる。


「いや、誘ってくれるのは嬉しいが聞きたいことがあってな。最近、何か変わったことあったか?」


「変わったこと~?」


「お兄ちゃん達が町にやってきた事とか?」


「はは……いや、そうじゃなくてな……」


 自分達の事を言われて思わず笑ってしまう。


「何でもいいんだ。最近変わったことがあれば気付いた事があれば言って欲しい」


「うーん。気づいた事かぁ……」


 子供達は暫く考え込むと、一人が思いついたように言う。


「そういえば少し前に幽霊を見たよ!」

「幽霊?」

「なんかね、夜中にぼわーっと火の玉みたいなのが飛んでたの!」

「えー、こわーい!」


 幽霊ねぇ……。

 カルミアちゃんからそんな話を聞いてた気がする……。


「火の玉……って事は人魂か……」


 この世界に幽霊が居るって話は聞いたことないが……。

 とりあえず、リリィに聞いてみるとしよう。


「……どう思う、リリィ?」

「うーん……誰かが小さな灯りを付けていたのを見間違えたとか?」

「まぁその可能性は高そうだよな……」

「えー!? 絶対幽霊だよー!」

「そっちの方が面白いもん!」

「分かった分かった……幽霊か……どの辺で見たんだ?」

「あっちー」

「あっちー」


 子供達は無邪気に指を差しながら話す。

 俺は少し苦笑いしながら、リリィと一緒にその方角へ向かうのだった。


 ◆◇◆


 幽霊の正体を確かめに町中を歩いていると、やがて町の外まで来てしまった。既に夕方を過ぎて暗くなっていた。


「幽霊なんて何処にも居ないじゃねーか……」

「やっぱり子供の見間違いなんだよ。そろそろ帰ろうよ……」

「うーん、そうだな……」


 子供の見間違いだったのなら仕方がない。

 そう思い俺達は引き返そうとしたその時……。


「……ん?」


 今、視界の端に何か光ったような……?

 俺は周囲を見渡して、光る何かを探す。


「どうしたのお兄さん?」

「……いや、今何か光ったような気がしてな……」


 俺は気のせいかと首を捻ったが……。

 次の瞬間、俺の目は大きく見開かれた。


「あれって……」


 視界の端に入ったのは小さな火の玉……ではなく、一部の壁がぼんやりと光り輝いていた。その光はどうやら薄い壁の中から漏れているようで、その光が鈍くなったところが確かに人魂のようなぼんやりとした光になっていた。


「よし、行ってみよう」

「お兄さん、怖くないの!?」


 俺が躊躇なく壁に向かって歩き始めると、リリィは俺の背中にしがみつきながら言う。


「だって気になるだろ?」

「で、でもぉ……」

「……ここまで来たら付き合ってくれよ」


 俺は困った表情を浮かべながら頭を掻く。そんな俺の顔を見たからか、リリィは渋々俺の後を付いてくる。そして壁の前まで行くと……。


「この壁……じゃない。これは……」


 ……間違いない。この壁の中に何かが埋め込まれてる!!


 こんな時の為に用意してあった小さなハンマーを取り出して壁の周囲にヒビを入れていく。そして慎重に砕いて中身を取り出す。


「……これは」


 中に僅かに光を放つ黄色い鉱石が入っていた。


「……何かの鉱物かなぁ」

「レオが詳しそうだから、このまま宿まで持ち帰るか」

「そうだね。今日はもう帰ろう」


 そうして俺達は謎の鉱物を持ち帰った。


 ◆◇◆


「これは、光灰石だ……」


 宿に戻っていたレオに謎の鉱物を見せると、レオは10分程鉱物を見た後そう言った。


「光灰石?」


「……ああ、固まった灰に特殊な加工を施すと暗闇で光る性質を持つ珍しいものだ。通常の鉱石と違って硬度が低く、熱などで加工しやすいので、装飾品や観賞用の武具などで使われることがある」


「へー」


「おそらく光灰石の鈍い光を子供達は人魂と勘違いしたのだろうな。昼間はあまり目立たないが暗闇の中だと光を放つ性質を持つ。それ以外にも、常に熱量を一定に保つなどの効果もある……例えば、日の光に浴びていたとしても常に一定の熱量を保つ性質を持っている」


「熱量を……」


「ああ、爆弾を保存するにはピッタリだろうな」


「!?」


「ま、待て……まさか、その鉱石の中って……」


「ああ、間違いないだろう。この鉱石の中には黒色火薬が詰め込まれている」


 その言葉を聞いて俺達は驚愕する。レオは鉱物を手で持ったまま続ける。


「……しかし、よくこれを見つけられたな」


「子供達のお陰だよ。にしても、カルミアちゃんの推測通り本当に埋められてるとは思わなかったが……」


「ふふーん、見直しましたか。サイトさん?」


「ああ、マジでお手柄だぜ」


 俺はカルミアちゃんの頭を撫でる。カルミアちゃんは嬉しそうに目を細める。


「さぁ、早速この火薬を処理するか」


 そうして俺達は爆弾の処理を始めるのだった。レオが光灰石を熱して溶かした水で冷やし、その水を外殻に染み込ませる作業を行う。


「これでもう爆発することはない。安全なはずだ」

「っしゃ!!」


 俺は思わずガッツポーズをする。


「後は、残った爆弾がどれだけあるかだね」


「よし、なら今からもう一回外に出て探そう。この光灰石は夜なら目立つから今なら見やすいはずだ」


「ああ、そうだな。今度こそ見つけ出そうぜ!」


 レオの言葉に頷き、俺達は再び夜のレイグルに繰り出すのだった。

ここまで読んでくださってありがとうございます

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