第108話 カルミアちゃん、挑戦
無事、宿を確保出来た俺達。
ひとまず獣人達の様子を探る為に俺達は外に出て話を聞くことにした。
「……さて、話を聞くのは良いが、まず誰が行く?」
レオが俺達にそう問いかけてくる。
「まずお前じゃねーの? 生粋の獣人同士だから話も盛り上がるだろ?」
「……俺がそんな話し上手に見えるか?」
「あー……」
言われてみればレオが誰かと談笑している光景を見た事がない。
ならどうしよ、ここは俺が行くべき……?
……いや、ここは彼女に任せてみるか。
「よし、じゃあカルミアちゃん」
「はい!」
「何度か俺の軽快なトークを見て、人との対応の仕方を学んでたし、そろそろ行けるよな?」
「軽薄の間違いでは?」
「うっせ。……で、どうだカルミアちゃん?」
途中で煽ってきた女神を軽く小突きながら俺はカルミアちゃんに尋ねる。
「……そうですね、ここは一つ、私に任せてください!」
「よし、行ってこい」
「はい! ……という訳で行ってきます!」
カルミアちゃんはそう言って外に飛び出して獣人を探し始める。
「……ね、お兄さん」
するとリリィが猫の尻尾を揺らして俺の背中に当てながら声を掛けてくる。
「ん?」
「カルミアお姉ちゃん、本当に大丈夫なの?こういうと失礼だけどいざという時は引っ込み思案なところあるよね。心配……」
「お。カルミアちゃんの事、ちゃんと理解してんじゃんか」
俺はリリィの猫耳を撫でながらそう返答する。
「にゃふふ……そりゃあリリィは人を見る目はバッチリだからね。……って撫でるな!」
「おっと」
リリィの猫パンチを軽く回避してその手を掴む。
「っていうかお前、にゃふふ……ってどんな笑いだよ……」
「な、なんか今の姿になって少し変な感じが……」
「マジか。薬の効果って見た目だけじゃなくて性格も影響受けるのか」
「にゃ……うん、ちょっと油断したら猫みたいな言動してしまいそう……」
「ふーん。ま、そのまま猫でいた方が可愛いぞ」
「か、かわ……!?」
俺が軽く煽るとリリィの顔がボンッと赤くなる。
「(もう言動に現れてますよ、リリィさん……)」
先程からリリィの猫しっぽがサイトの足に絡みついている事を、女神は見逃さなかった。
「……リリィは彼女の事を心配していたのではなかったのか?」
「あ、そうだった!」
レオの指摘にリリィはハッとして表情を戻す。
「お姉ちゃんに先に行かせたのはどういう理由なの?」
「おう、大体こういう時は俺が先行するのが当たり前になってたけどさ。リーダーはカルミアちゃんだろ。あの子も自分で話が出来る事を望んでたし、ならリーダーとして成長して貰う為にもこういう機会は必要だと思うんだ」
「……ふむ、経験を積ませると」
「まぁ、そうだな」
「……意外と考えているのだな、サイトよ」
「おう、俺はいつも考えて行動してるぞ」
「その発言が嘘な事はバレバレですけどね」
「リリィも嘘だって分かるかな」
「……お前ら、俺の評価辛辣過ぎねぇ?」
いやまぁ自分でも正直そう思うけど。しかも合ってるし。
……。
一方、カルミアはというと。
「あの、ごめんなさい。そこの人」
「ん?」
カルミアが呼び止めたのは近くを通りかかった女性の獣人だった。外見はキリンのようなカラーリングの獣人で、背丈は2メートルはある長身だ。
「こんにちは」
「……ああ、こんにちは。見ない顔ね。新しく入ってきた人?」
「はい、旅の途中なので数日間滞在するつもりです。あ、私の名前はカルミアって言います!」
「どうも、カルミアね。……私はリンよ」
「リンさん、ですね。……急に呼び止めてしまってごめんなさい。お時間少しだけ良いですか?」
「あら、まるでナンパの常套句ね」
「にゃっ!? ち、違いますよ! そんなつもりじゃないです!」
リンの冗談にカルミアは顔を赤くして否定しだす。
「ふふ、ごめんなさい。ちょっとからかっただけだから。……それで、私に何か用?」
「……あ、はい! あ、あのですね……」
……。
「……お、カルミアちゃん。良い感じだぞ」
「頑張れ、お姉ちゃーん」
「さて、お手並み拝見といきましょうか」
「……」
物陰からカルミアを見守る三人と、自分が異質な集団と化している事に気付いていないレオ。カルミアはリンとの会話で獣人達に人間に対して興味を持って貰おうと奮闘するのだった。
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