第一話 転生できるみたいだが、どうやら様子がおかしい
思えば、随分とあっけない最後だった。
将来の夢もこれからやりたかったことも今まで貯めていたソシャゲのガチャ石もトラックにはねられた衝撃ですべて吹き飛んでしまった。
そんなことになるならやりたかったことをやればよかったし、いろんなことに全力を...と後悔するがそれも情けない。
しかし、それにしても天国というのはこんなに何もないところだとは思わなかった。真っ暗すぎて自分が目を開けているのかどうかもわからない。
「ここは、天国ではありませんよ...。」
どこからか声がしたかと思うと目の前が強く光り輝きはじめ、そこには美しい赤い髪の女の人が立っていた。
「......ええっと、女神様で合ってますか?」
「ええ、もちろん。あなたを迎えに来た天使ではなく、あなたを待っていた女神です」
妙な言い方をした。まるで自分がまだ死んでいないような言い方だった。
「いえ、それに関しては死んでます。ただあなたにはまだ選択肢があるんです」
選択肢?
「ええ。実はとある世界に転生してほしくてこうしてわたくし自身があなたを待っていたのです」
転生!そりゃあたくさんそういう本があるのは知ってるけど、まさか自分にそんなことが起こるなんて。
「ええ。そしてチート能力ももちろん差し上げます!」
「チート能力も!?」
先ほど選択肢があるなんて言い方をしてたけどそんなものあってないようなものじゃないか。
「ただ........いくつか注意事項がありまして........」
女神様のいうことをざっくり要約するとその世界は魔王と人間が対立しており現状、かなり魔王軍が優勢であるらしい。
そこで神々はこの世界に別の世界から7人の勇者を召喚しこの世界を救う予定だったそうだ。
「だけど、どういうわけか魔王に先を越されて魔王軍側にチート能力を持った勇者が誕生してしまったと」
「それも6人........」
........無理じゃね?、、え?7人中6人魔王軍?そもそも魔王が優勢なのに?
「そこで!あなた様にぜひ!最後の勇者になってもらい見事人間側を勝利に導いてほしいのです!」
急に怪しいセールスみたいなしゃべり方をし始めた。
「ちなみにですけど...今まで何人に断られました?」
「99人です!おめでとうございます!」
「いや、ちょうど100人目ですと言われても........」
それでもチート能力がもらえるのだったら選んでしまう気がする。99人はずいぶんと臆病な人たちだったのだろうか。
「そういえばほかの選択肢ってのは何なんですか?」
「...ほかの世界で唯一の勇者として無双...」
「ほかの世界で無双!?」
「99人目まででしたら...」
「僕の場合は......?」
「ええっと、言いにくいんですけど......あ、、蟻になります」
選択肢なんてあってないようなものだった。
こうして困っている世界を見過ごせない彼は転生することに決めたのだった........