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Disposition  作者: 秋元智也
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4話

幾島海人、彼の秘密とは…

その身体にあった。

ふっくらとした胸、そして下半身には凛々しい猛り。

どちらも持ち合わせた身体をしている。


身体を鍛える為に剣道をやっていた。

見た目弱そうだからと親が空手も習わせてくれた。


結局続いているのは剣道だけだったが、彼はそれでも楽しかった。


みんなが自分と違うと気づくまでは…


ある時、みんなの目の前で着替えてしまい、発覚した。

周りの男子の欲情した目がどうしても忘れられない。


同じ男なのに、自分を嫌らしい目でみる同級生に嫌悪感を抱いた。


普通、男とは胸はふっくらしていない。

平で硬いものだと知った。


幾島には柔らかいおっぱいがある。

それは女性かと言われれば、NOだ。


なぜながら幾島には子宮というものがないからだ。

下半身は男性そのもので、ふたなりと呼ばれるらしい。


自分にだってわけが分からない。

ただ、性別は男とされている。


そんなだからこそ、見た目の美しさなど要らなかった。

クオーターのせいで特徴が髪の色素の薄さや、きめ細かく白い肌。

そして目は一見黒っぽく見えるが光に透けると青く見えるなど明ら

かに特徴が受け継がれてしまっている。


いくら鍛えても太くならない腕や足は幾島にとってはコンプレック

スでしかなかった。


「はぁ〜、余り関わり合いにならない方がいいな…」


独り言のように呟くと日誌を職員室へと置きに行った。

寮生は一般人が多く、金持ちどもは家から車で送り迎えをされてい

るらしい。


男子寮なので女子が来ることはない。

たまに規律を乱して女性を連れ込む生徒もいたらしいが、南條が寮

長になってからは厳しく咎めているらしい。


だからこそ、幾島は自分の身体の事は決して人にはバレてはいけな

かった。


もちろん、性別的には男子だが、半分女性ぽいところがあるだけに

細心の注意をして動いて行くつもりだった。


一番気をつけなければならないのは着替えと風呂だからだ。


一人部屋なので着替えはいい。

問題は風呂だが、浴場ではなく管理人室のシャワーを使っているの

で問題ない。


「おい、一人か?」

「はい…」


担任に呼び止められると書類の束を渡された。


「これを俺の机の上に置いておいてくれるか?それと、こっちを〜」

「あの〜、僕部活の入部届けが欲しいんですけど…?」

「あぁ、そうだったな。何に入るか決めてるのか?」

「はい、昔から剣道をやって来たので…」


机から紙を取り出して渡して来た。

受け取るとペンを借りて書くと担当の先生へと渡してきた。


明日から参加できるようにしてもらい、胴着は貸して貰えるらしい。

教室へと戻ってくると、まだ残っていた生徒がいたらしい。


横を通り過ぎて担任の机の上に置いて荷物をもって帰ろうとした。


「おい、お前さ〜女とシタ事あるか?」


いきなり後ろからかけられた声に不機嫌そうに振り返ると、質問し

て来た張本人が机の上に腰掛けながら聞いてくる。


「興味ない。そんな無駄な事で時間を使う余裕はない…」


思った事を言うと少し驚いたような顔をして来た。


「なんだよ…」

「意外だな?そんな顔良ければ女がほかっておかないだろ?」

「知らない…勉強の邪魔になるだけだろ?」

「勉強ね〜、俺には関係ないけどな…」

「金持ちだったっけ?ならいいんじゃないか?ただ、教室ではあんな

 破廉恥な事はやめてくれ。」

「なに?勃ちゃう?」

「…そう見えたか?」


じっと見て言うと、『いや…』と返事を返された。


あの場で出て行ったのは幾島だけだったらしい。


「彼女は大事にしろよ…」


そう言って出て行こうとするといきなり後ろから引っ張られた。


「彼女じゃねーよ。ってか、お前って近くで見ると目…青いんだな?」

「それがなに?フランス人の血が混ざってるからでしょ?」


掴まれた手を振り払うとそのまま出て行く。

取り残された坪内圭はスマホを取り出すとどこかへとかけた。


「おい、あいつのどこがいいんだ?完全に男じゃん?」

『お前には分からないだろうな〜、俺が絶対に落とすから邪魔するなよ』

「へいへい。俺はおっぱいないやつに興味はねーよ!」


呆れたように言いながらスンっと鼻を鳴らした。


「なんか男っぽくない匂いさせやがって…」


寮の食堂ではおかずに迷っている畑野の姿があった。

後ろから声をかけるといつも通り一緒に食べる事にした。


「食べたらさ〜風呂行こうぜ!」

「いや、勉強してからにするよ。寝る前に入るから先に行ってこいよ」

「えーいいじゃん、男同士一緒に入ろうぜ〜〜〜」

「断る。風呂入ると眠くなるんだ。だからその前に勉強しておきたい」


真面目に見えるが、確かに勉強もするが、人と入りたくないとやんわり

断っているのが見える。


それでもしつこく言おうとすると上から聞きなれた声が降って来た。


「余りしつこいと減点するぞ?」

「えっ!!寮長!?」

「南條先輩!あ、あのっ…」

「勉強分からないところがあるなら教えようか?」

「はい、部屋に行ってもいいですか?」

「あぁ、先に待ってなさい。後で行くから」


幾島は嬉しそうに言うと、自分の部屋ではなく寮長の部屋に行く約束を

した。

これは、あらかじめ決めていた事だった。


寮長の部屋に行くという口実をつけて管理人室でシャワーと勉強をする

為だった。

ちゃんと鍵をかけれるので誰も来ないし少しでも気が抜ける場所でもあ

ったからだ。


本当に寮長の部屋に行ってもいいが、余り迷惑をかけたくない。


小声で言われた言葉に少し頬を染めた。


『本当にきてもいいんだぞ…』


畑野には聞こえていないだろう。

畑野などの他の寮生から見たら南條先輩は怖いイメージがあるらしい。

が、幾島にとっては優しいお兄さんだった。






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