1話
私立立命館高校。
ここでは成績によって待遇が変わる。
お金持ちにはそれなりの待遇を。
成績の上位者にも同じような待遇が与えられた。
しかし、成績がいまいちで寄付金も少ない親だと生徒達も搾取される側
の人間になってしまう。
何をされても文句も言えず、ただ従うしかない。
それがどんな理不尽な事であってもだ。
ただの金持ちの道楽と言われるかもしれないが、ここを出た卒業生は大半
がいい役職に就き、必要とされる人間になる。
その為の教育機関でもあるのだった。
そしてそこへ2年になってから転校して来た生徒がいた。
髪の色素が薄いのか茶髪というより金髪に近い髪色に陽に当たると青みが
かる瞳の色。
顔は女性よりもこ綺麗で細身だが、鍛えられている筋肉は細いながらもし
っかりとしていた。
「おーい、席につけ〜」
教師について教室へと来ると、室内の騒がしさがやっと静かになった。
見知らぬ生徒に周りの視線が集まった。
「今日からこのクラスに転入して来た幾島海人君だ。みんな、仲良くする
ように!何か自己紹介あるか?」
「あっ…幾島海人です。2年という中途半端な時期にきましたが、よろしく
お願いします」
「はい、えーっと、空いてるのは〜後ろの席が空いてるな。あそこに座っ
てくれ。では、授業を始めるぞ〜」
「はい」
周りの視線がずっと付き纏っている気がするのは気のせいではないだろう。
幾島の横の生徒ははじめは一瞥したがすぐに興味がないようで視線を逸ら
された。
「よろしく…」
「…ふ〜ん」
全く興味無さそうにしている。
隣の男子はやけに目を引くほどかっこよかった。
もちろん男の目から見てもそう思うくらいなので、女子からはさぞモテる
だろう。
休憩時間になると、転入生とあってか物珍しさに色々と声をかけられる事
もあった。
「よ!」
「えーっと…」
「俺?畑野裕樹。前の席だったぞ?」
「あっ、ごめん。まだ慣れてなくて…」
「いいって。隣の席のやつ態度悪くてごめんな〜。あいつ変態だから〜」
畑野裕樹という生徒は誰にでもこんなにフレンドリーなのかと思うほど
誰とも話せるようだった。
隣に座っている仏頂面のイケメンにも普通に話している。
「転校生くん、昼一緒にどう?」
「えーっと、食堂が分からなくて…」
「いいって、俺が案内してやるよ」
「あ、ありがとう」
笑った顔は女子達の心を打ち抜いたのか、周りからヒソヒソと話される。
こういうのはあまり好きではない。
見た目でよく嫌がらせを受けて来た経験のある幾島には嫌な記憶しかない。
「ほらほら〜行くぞ〜」
「うん」
畑野に連れられて食堂に行くと目の前に端末が置かれていた。
操作が分からずにいると畑野が目の前で生徒カードを取り出してかざした。
「これで、食べたいメニューを押せばいいからな!」
「なるほど…」
ピッ、と音がして次にメニューが出て来た。
好きなメニューを選んぶと食券が出て来た。
それを持って前に並ぶらしい。
「ありがとう。初めてで分からなかったよ」
「いいって。それよりさ〜、海人くんってさ〜編入試験満点ってほんと?」
この学校の編入は入試よりもレベルが高く、滅多に受からない事で知られ
ていたからだ。
だからこそ、興味を持たないわけがなかった。
もし、そうなら学年首位が入れ替わる事になる。
学年首席は毎年授業料免除に加えて、補助金も出る。
その為、上位陣が入れ替わる事は滅多にない。
そういう畑野は平均的な順位をキープしている。
勉強の嫌いな誰かとは大違いだった。
同じクラスの坪内圭。幾島の隣の席にいた奴だ。
彼は成績も下位で、ただ金持ちの息子というだけで好き勝手している。
それに比べ学年首席は坪内宙。双子の弟で畑野の友人だという。
「首席って、その坪内って人なんですか?」
「あぁ、弟の宙の方な!横の圭はビリっけつだよ。あいつマジで勉強し
ねーからな〜」
「それでも、ここに入れるんですか?」
「それはこれっしょ!コレ!」
そういうと指でまあるい形を作ってみる。
要はどこもかしこも、金次第という事らしい。
「海人はどっち?」
「僕は…あっ!南條先輩!」
いきなり立ち上がると、声を出していた。
目の前を通り過ぎようとした南條が足を止めた。
これから暮らす寮の、寮長だ。
「幾島海人くん。学校が終わったら寮に来てくれ。案内するよ。あとは
色々ルールもあるから説明しておかないといけないからね」
「はい!」
嬉しそうに目を輝かせる幾島に畑野は面白くない。
南條隼人は生徒会の会長を務めた事もあってか、みんなから一目置かれた
存在だった。
しかし、転入早々、そんな事は知らないはずでここまで慕う理由が不思議
でならなかった。
「あれ?南條先輩って知り合い?」
「えっ、あ、うん。ちょっと…ね」
「ふ〜ん…」
食事を終えて帰ってくるとクラスが少し騒がしかった。
カーテンの中で蠢くシルエット。
それは女性の身体のラインをはっきりと映し出していた。
周りの男子はそれを見て鼻の下を伸ばしながら誰も何もいわない。
「ちょっ、コレは何をやってるんだ!」
「まぁ、待てって…」
「でも…」
学校で、しかも昼間にこんな破廉恥な行為を見過ごしていいのか?
と言いたげな視線を畑野に投げかけると、それが当たり前であるかのように
肩をすくめたのだった。