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その1の2


 同日、同時刻。反町高、校舎裏。

 彼女は、校舎の縁に座り込み、そこでひたすら途方にくれていた。

「おかしい……、場所はココで間違いないのに……」

 かこかこと、携帯をいじり、連絡と時刻を確認しながら、呟く。

 待ち合わせの予定時刻からすでに三時間、暇つぶしに弄っていた携帯ゲーム機も、すでに電池切れで電源すら入らない。

 燃費がいいはずの彼女のお腹からも、ぐるるると腹の虫がなった。

 昼など持ってきていない。そうなる前にケリが付く筈だったのだから。

 ふぅむ、と声を上げて唸る彼女。前かがみだった背を伸ばし、空を見上げながら思考をはせる。

 日付を間違えた? いやいや、メールには日時がしっかりと記されていたし、自分はそれに従った。というか、さっき見た。

 だけれども、今この場にポツンと自分一人だけでいるということは、すなわち相手が忘れている?

 もしそうだったとしても、ヘンに律儀なあいつらのことだから、気がついたらメールの一つも送ってくるはず。

 ということは気がついてすらいないということだろうか。

 そうだったとしたら自分は一体何のためにここで三時間も費やしたんだろうか。

 いやさ、確かにゲームは進んだけど、それはそれで有意義だけれど、こうまで放って置かれるのは悲しいものがあるというか……。

 明日からは休みともいかなくなったわけだし、あー考えてるとイライラしてくる。

 ───とまぁ、こういったことを考えたわけだが、待ち合わせをしていたのであったとしても、三時間も待ったのなら十分彼女も律儀なものだ。

 しかし、そう思っているにもかかわらず、彼女は動こうとはしない。

 パタンと、携帯を折りたたみ、プリーツスカートに押し込む。

 後十分だけ待ってみよう。

 その考えが彼女を動かさなかったのだ。

 そうして自己完結し、彼女が背中をまるめたそのときだった。

 パキンと音を鳴らして、落ちていた木の枝が折れたのは。

「……誰?」

 瞳を動かす。その先には校舎の壁しかなかったが、勿論そんなものを見ているつもりはない。

 彼女はその先にいる人物にこそ、興味を持ったのだ。

 もしもあいつ等ならば容赦はしない。

 そういう、キレる準備という意味も含めて、彼女の放った声には、怒気がたっぷりと含まれていた。

「ん? まだ人がいたのか?」

 校舎の壁の向こうから顔をのぞかせたのは、眼帯に、ポニーテールの凛々しい顔つきの女子生徒。

 首のリボンの色からして、先輩のようだった。

 ──というか、彼女はその訪れた人の顔つきは良く知っている。

 行事があるごとに壇上の上で熱弁を語る生徒会長、道明寺奏のことを忘れるわけがなかった。

 アテが外れた。準備していた怒気が抜けていく。気合を入れた自分がバカみたいじゃないか。

 ため息を一つつき、視線を再び空へと移す彼女。

「ふむ、どうやら、私じゃアテ外れなのかな? 二年、群雲夕陽」

 ぴくりと、彼女、夕陽の眉が動き、奏のほうへとゆっくり顔を向ける。

 その目は見開かれ、驚きに満ちている。

 何故、この人が自分の名前なんか、といった様子だ。

「? 何を驚いているのか知らんが、全校生徒の顔と名前を一致させておくのは生徒会長として当然の義務と思うが?」

「……全員、おぼえてるんスか……?」

「当然っ! 義務だからな」

 どんと張った胸をたたいて誇らしく笑う奏。

 すごいと思う反面、無駄な努力だとも思う、反町高のメデューサ、群雲夕陽。

「その割には、道明寺先輩の周り、人いないっスよね」

 ざくぅッ!!

「よ、良く、見ているな……」

 奏の胸に槍が突き刺さっているのは、幻覚だと思いたい。

「……いえ、目に付くんス」

「そ、そうか……」

 そんなに孤立してるかなぁ、と不安になる奏。頭の横に火の玉が浮かんだ。

 だんだんと姿勢が斜めになり、フレームアウトしかける。

 ──が、頭を振ってすぐさま気を取り直す彼女。

「そ、それはそうとな、本日の下校時間はとっくに過ぎてる。夏で日が高いとはいえ、時刻は時刻だ、そろそろ帰ったらどうだ?」

「はぁ、そういう先輩は何で今の時間まで?」

「居残りがいるかどうか探していただけだが?」

 再び、夕陽の顔がきょとんという驚きの顔に彩られる。

 この先輩は、ただそれだけのためにこんな時間まで学校にいたのか?

 そうであれば実直を通り越してただのバカだ。

 そこまで思い、夕陽は待てよと考え直す。

 それを言ったら、三時間も待ちぼうけ食らって、その上明日からまた学校で、貴重な時間を無為に過ごした自分は、もっと愚かなんじゃなかろうか、と。

 やっとそれに気がついた彼女は──

「……馬鹿馬鹿しい」

 と自虐的につぶやき、皮肉にまみれた笑顔を浮かべて、縁から腰を上げた。

「ば、馬鹿か……!? や、やっぱりこんな時間まで見回るのはそう見られるか!?」

「あ、いや、自分に対して言った言葉ッスよ!? 先輩じゃないッスよ!!」

 あわてて、夕陽は手を振り、否定する。

「う、うぅむ……、事情は良くわからんが、ほ、本当にそうか? 私のことじゃないのか?」

 額に汗して、あわあわと手をばたつかせる奏。

 今まで威張り散らしていたのにこのあわてっぷりに、つい、夕陽の顔から肯定的な笑みがこぼれた。

 久しく感じていなかった筋肉の緩み。

「……先輩、面白い人ッスね」

「は? お、面白い?」

「ウス、愉快ッス」

「ん? う、うむ……、まぁ、なんだか知らないが良かった、の……、か?」

 奏でが怪訝な顔を浮かべたそのとき──

 ぐきゅるるぅ~。

「うあ……」

「おっと……」

 二人の腹の虫がついに声を上げて吼えた。

 両者とも昼食をぬいていたのだろうから、当たり前の生理現象なのだが、これが女の子ともなると羞恥の対象になってしまう。

 とたんに、二人の顔が赤らんだ。

「……食ってないのか?」

 うつむきぎみに視線をそらしながら奏。

「まぁ……、その……、そうッス……」

 夕陽も肯定の言葉を吐きながら、前かがみでお腹に両手を添える。

 その様子を見る奏が、今度は笑みを浮かべる番だった。

「はっ……、ハハハ……!」

「……お互いさまっスよ?」

 すこしむっとした表情を浮かべる夕陽。

「いや、すまない。忙しくともやはり食事は抜くべきじゃないなと思ってなぁ」

 すまなそうな笑みに切り替える奏。こうなるともう食事のことしか頭の中に残らない。

「よし、どうせ帰るのだろう? センター街で食っていかないか? 金がないなら奢る。笑った貸しだ」

 その提案はとても魅力的で、夕陽に断る理由などどこにもなかった。







「ほほう……」

 成績表をしらけた目で見る、親父。

 口ひげを蓄え、メガネをかけた、痩せ型の、どこにでもいそうな、いやむしろモブキャラっぽいこの人が、俺の親父である。

 茶色いブラウスに身を包み、俺のベッドに腰掛け、あごに手をやりながら、うなっている。

 あー……、気まずい。かーなりパないレベルで気まずい。

 メーターが振り切れるまであとちょっとって感じだ。

 親父のことだから怒るようなことはないだろうが、呆れられるのは人間として辛い。

「や、やだな、そんなに見ないでよ、親父……」

 和ませようと、照れてみる。

「やめんかキモい」

 一蹴された上にシカトされた。

 泣きたい。この上補修のことまで言わなきゃならないのかと思うと、胃のあたりをドリルを持った勇者が「スパイラルなんたらー!!」とか叫びながらぶん殴ってるような気分になってくる。

 男はドリル。女は愛嬌で選びたい。ちがいますか。そうですか。

 やっとのことで、成績表をたたむ、親父。

「はぁ……」

 短いため息が、口からもろっとこぼれ出てた。

「弥生には、見せたのか?」

「いや、それが……」

「まだか……。それがいい」

 そういって、親父は俺の肩をたたく。

 そして、冷や汗を垂らした状態で、俺にささやく。

「……いいか? 見せるなよ? 絶ッッッッッ対、見せるな……ッ!」

 ぎらりと、メガネが光った。ハイライトはいってます。エアブラシで真っ白ですよお父様。

「あいつにバレたらと思うともう……、心の臓がいくつあっても足りやしない……。ああ見えてプライド高いしご近所付き合い良いからな……」

 そう、怒った弥生さんは怖い。

 親父いわく、笑顔のまま暴走族を解散させた、いわく、銀行強盗が泣いて逃げた。いわく、ヤクザが姉さんと慕っていた。

 誇張入ってるだろうが、確かにそれくらい弥生さんは怖かった。

 特に、その怒りの導火線に火がつくケースは、自分が納得のいかなかった場合に多い。

 今回とかモロに当てはまりそうなにおいがするのだ。

 そういうのコミコミで、先に親父に見せたっていうのも理由の一つ。

「いや、でも、補修……」

 そう、問題はソコ。

 どうやって彼女の目を盗んで学校に行けと?

 同じ建物に住んでて、絶対的に俺より早く起きて、リビングに陣取って家事やってる彼女に、どうやって会うなと?

「隠し通せ……ッ!! 絶対にだ! なんなら休め、留年の1年ぐらい大目に見てやる!」

 いや、あーた……。人の親の言うことかそれ……。

「とにかく、処分しろッ、いいな? 男の約束だ、わかったな?」

「処分って……」

 もう言ってることむちゃくちゃだよこの人。

「いいから、約束しろっ!」

「や、約束……しま──」

「あら? 私をのけ者に、約束事? 兄さん、また、私は放置?」

 その、穏やかだがトゲのある声に、びくぅっと、親父がはねた。

 ぎぎいと首を回し、振り返れば、いつの間に開いていたのか、ドアの向こうに、弥生さん。

 エプロンを掛けて、やっぱり柔和な笑みを浮かべているが、それは俺の知ってる笑みとは違い、なんというか、鬼をしょってるオーラが見えるんですが。

「いつもいつも、男二人の約束事、たまに帰ってきたと思ったら、私はいっつも重要なことを聞かせてもらえない。かまってほしいって、判ってます?」

 うーわー、そっち方向で火がついたかッ!?

 親父が、俺の手をとり、もう一度俺に耳打ちをする。

「俺が足止めをする。窓から逃げろ。そして、今日はそれで食え。あと、今日は帰るな……」

 そうして、ズボンのポケットから、そんなに重くない財布を、俺に渡した。

「え? ちょ、今日は帰るなって……」

 俺の問いに、ふっと笑みを返す親父。それはどこか、死地へ赴く戦士のようで───

「格好つけさせろ、すこしは親父らしいことも、してやらんとな」

 まて、まてよ親父、そんな……、そんな死亡フラグ立てちゃダメだッ!

「相談は、おしまい?」

 ごごごごごと、弥生さんのオーラが肥大化していくのがわかる。

 どんと、親父が俺を突き飛ばした。

 そして俺は窓際へ。親父は弥生さんの肩を押さえつける。

「走れェッ!!」

 声を背に、俺は成績表とサイフを片手に急いで窓から飛び出す。

 向かいの大木づたいに抜け出すのは子供の頃からやっていたので、苦ではない。

「灯夜ちゃん! 待ちなさいッ! 成績どうだったの!? ああもうッ! 兄さんも離してぇッ!」

 背後で、ドムッと音が聞こえ、親父の派手なうめき声が響く。

「逃げろッ! 逃げるんだッ! 灯夜ぁッ!」

 大木を伝い降り、コンクリートの塀の上から、裏路地に降り立つ。

 靴が無いが、後で買うとか手段はある!

 そして、歩先をセンター街に向け、走り出したころだろうか。

 街頭の灯りかけた夕焼け空のもと、俺は親父の断末魔を聞いた。

「お、親父……ッ!」

 去来する、親父との思い出。

 親父、ありがとう。アンタのことは、忘れない。

 いや、まて俺、死んでないって。……タブン。

 とりあえず、親父の言うとおりにしよう。マズは適当な靴を買って、ラーメンでも食って、ネカフェにでもにとまろう。

 はだしのまま、わき目も振らず、センター街へと走りながら、俺はプランを練り上げていた。









 さて、所変わって時間もずれて、センター街の一角のラーメン店。

 こっそりと雑居ビルの間に軒を構え、排気ガスまみれの白ではなくなった外壁が歴史を感じさせるようなそうではないようなその店の中で、二人の女性がカウンターでどんぶりに向かっていた。

 夕陽ではない。そして、奏でもない。

 ブレザーという共通項はあれど、夕陽ほど彼女たちは髪が伸び伸びではなかったし、奏のように眼帯をつけているわけでもなかった。

 片方は小麦色の肌をした活発そうな子。もう片方は、黒ブチメガネの黒髪の子。

 二人の首元には小さな鈴が、店内のオレンジの電球の光を受けて鈍く黄金色の光沢を放っていた。

 良く見れば、小麦色の肌の、太陽のような雰囲気を持つ彼女は、昼間校門の前に仁王立ちしていた少女だとわかる。

 耳も尻尾もないが、2Pカラーという言い訳も通用しないほど、明らかに同一人物。

 そうしてみると、黒ブチメガネのすらりとしたカミソリのような子は、マウラと呼ばれた彼女であろう。

 彼女らはというと、湯気も昇っていない醤油ラーメンを目の前にして、そのままどんぶりをじっと静観。箸もまだつけていない様子だった。

 そんな二人の様子に、カウンター奥の店主は不安な表情を浮かべている。

 内心はひやひやモノなのだろう。食われることさえされないラーメンなどと風評が立てば店舗から客が去ってしまう。

 そんな店主の顔色など伺うこともなく、冷めて伸びてしまった味噌ラーメンをつつきながら、ショートカットだかロングだかわからない髪形の少女、総帥と呼ばれた彼女はつぶやいた。

「結局、今日はすっぽかされてしまったのであるなぁ……」

「さて、本当にそうでしょうかね?」

 ふっと、全てを見透かしたような嫌な笑みを浮かべるマウラ。

 そんな彼女の態度に、総帥と呼ばれた彼女の頭からハテナマークが飛び出した。

「? しかし帰っていたではないか」

「見ましたか?」

「何を?」

「話の流れから察っせない、想像力の乏しく思慮の足りない可愛そうな子の総帥に全部言えば、帰宅途中のアイツを見たのですかと聞いているんです」

「……見てないけど……、もうちょっと言いようってモノが……」

 がっつり悪意満載、トゲ満載なマウラの言葉に、再び、とろける総帥。

 いやむしろ、カビが生えそうなほど腐敗するとでも言うべきなのかもしれないが。

 負のオーラが腐臭を放つ。

「衛生に悪いです。しゃきっとしてください。この苗床」

「誰のせいであるかー……」

「判りました。総帥はやれば出来る子です。話が進みません。やれば出来る子なんですからがんばって察してください。空気読めです」

 いい加減、あきらめられたのか、珍しく助け舟を出すマウラ。

「そうはいってもぅ……」

 カウンターにぺったんと伏せ、うーんと頭をひねる総帥と呼ばれた子。

「って、まさか!?」

 やっとのことで、もうおなじみのΣを頭部から出す。マウラ女史の言わんとしていることを、今頃察したらしい。

「もしかしたら、まだ居るかも知れませんね。あ、そろそろいい頃合ですよ」

 と、冷たくなったラーメンをつつく、マウラ。ちゃぷちゃぷと、卵が上下する。

「何を悠長にしておるのだ! まだ残ってたら困るであろう!?」

「何がですか?」

「次にあったとき気まずくなるのだ!」

「敵なんです。気まずくていいじゃないですか」

 あわてる総帥を尻目に、真水のような温度のラーメンをすするマウラ女史。

「そもそも、総帥は人が良すぎます。少しは疑うことや恨むことを覚えては?」

「マウラちゃんは恨みすぎの疑いすぎかと思うのだがにゅ……」

「人を人格破綻者みたいに言うのはやめてください。食べないんならもらいますよ?」

 いや、まさに人格破綻者なんですけど、とは総帥は口が裂けてもいえなかった。

 そのとき、ラーメン屋の扉が開く。

 意識せず、二人はその向こうの三人の人影に、瞳を向ける。

 ぽろりと、総帥の橋が、カウンターの上に転がった。

 まさかラーメン屋の扉が運命の扉なんて、誰が思うんだか。









 新品の靴はどうも履き心地に違和感がある。

 そんなことをぼぅっと考えながら、センター街の寂れたラーメン店の前まできていた。

 俺がその戸を開こうとすると、同じく開こうとした手と、ぶつかる。

「あ、すいま……」

「おや? なんだ、灯夜じゃないか」

 謝ろうとしたとき、そのぶつかった手の人が、俺の名を呼ぶ。

 聞いた声だった。首を上げれば、案の定、道明寺先輩。あ、奏さんね。

「奏さんか」

 そして、その隣には、ナチュラルボーンネガティブ。群雲、夕陽。

 なんつー珍しい女子高生ペア。接点がまったく見えませんッ!

「今日はなにかしら縁があるじゃないか」

 と、奏さん。

「ど、どもっス……」

 奏さんの後、相変わらず積極性の無い態度で、ぺこりと、頭を下げる群雲。

 やたらと多い前髪の間から、ちらりとみえる目は、どこか卑屈そう。

 うーむ、面と向かって喋ったの初めてなんじゃないか?

 てか、たしかに意識してみれば、か弱そうな、はかなそうな子に見える。

「夕食か?」

 奏さんの質問に、まぁ、隠すこともないかと俺は打ち明けた。

「ああ、えっと、なんか。追い出されちゃって……。今日はウチに帰るなと」

「───ッ不純異性交遊反対ッ!! ダメ、ゼッタイッ!!」

 くわっ! といきなり奏さんが吼えた。

 ばっと、通行人が俺をにらみつける。

「何をいきなり叫んでんですか先輩ィッ!?」

 抗議した俺の声に、はっと彼女は我に帰った。

「ああ、いやすまん! 家に帰るなといわれるなんて、理由がソレくらいしか思いつかなんでな……、つい……」

 もはや脊髄反射なのかッ!? この人の前ではなんとなく不純を匂わせることは言えそうに無い。

 まぁ、もういいや……。

「えーっと、ですね……」

 事情を説明しようと、再び俺が口を開いたときだったろうか。

 ぐぎゅるうぅうううぅぅ……。

 なんだか、変な音を聞いたのは。

「ウス、自分ッス……。話の腰折ってスンマセンッス……」

 顔を赤らめ、しゅびっと手を上げる、群雲。

 腹の音だったとは……。しかし女子高生の腹の虫が聞けるのは、レアといえばレアなのかも?

 てか、聞いてしまってよかったんだろうか、なんて思う。可愛そうなことしたな。

「まぁ、積もる話も有りそうだし、腹もすいている。中で聞こうか」

 ラーメン屋の取っ手をつかむ奏さん。

 積もる話ってほどじゃないんだが、ただちょっと家族が錯乱気味というか愉快なことになっていただけだし。

 まぁ、それも話題の一つになるだろう。

 群雲も、顔を真っ赤にしたまま、こくこくと頷いている。

「んじゃ、そうしますか」

 頷いて、がらりと開けられた引き戸をくぐり、暖簾を手でよけながら、俺は厨房に声をかけた。

「すんません、三人なんですが、席開いて……」

『ッああ─────────────────────────────────ッッッッ!?』

 きぃんと鼓膜を突き抜ける、叫び声。

 見れば、カウンターの一人、小麦色の肌をした、八重歯の覗く女の子が、俺たち向けて人差し指を向けている。

 抱いた印象は、「うわ、すんげースタイル」ってこと。なに? ロケットですかあの胸は。ひょうたんですかあの腰は。

 てか、なに? 今度はなんなの!?

「ど、どうしてここ、ここここここ……ッ!?」

 ぶわっと汗が噴出し、がちがちと奥歯を鳴らす、小麦肌の女の子。

「ここに、ですね。総帥、噛みすぎです。あめんぼあかいなあいうえお、から練習してください。放送局なら退職金も無く一発で首ですよ」

 小麦肌の子にひどい突込みを入れる、隣の黒ブチメガネのシャープな印象の女の子。

 いや、流石にソレは無いと思うんだが……。

 群雲が、苦虫を噛み潰したような表情で、彼女たちをにらみつける。

「インベーダー……!」

 ざわりと、群雲の髪がうごめいたように見えた。

「あれほど……、あれほど待っていたのに……、連絡もよこさず、放置プレイとはいい度胸ね……」

 並々ならぬ気迫。背後に龍か虎でもいるような、圧迫感。

 しかし、それよりも俺はもっと別のものに驚いていた。

 饒舌だ、群雲が、饒舌になってるッ!?

「はわわわわわ……がくがくぶるぶる」

 なみだ目になりながら、デッサンの狂った顔で隣のシャープそうな子に抱きつく総帥と呼ばれた子。

「総帥、しっかりしてください。擬音が口から漏れてます。無邪気に口で効果音をつけるのは小学生までしか許されません」

 まったくの無視で、彼女はラーメンをすする。

 ずぞぞぞぞーっと、スープを飲み干してから、その、シャープそうな子は群雲に向かって瞳を向けた。

「放置プレイとは心外極まりません。もともと貴方と我らは敵対する存在。文通まがいなことを行ってる総帥と貴方が、本来はおかしいのですよ?」

「ああ、そう。なら、着信拒否しててもいいのね……」

 ポケットから、かわいらしいデコレーションが施されたピンク色のケータイを引き抜く、群雲。

「それだけはだめなのだーッ!! 友達減っちゃうのは悲しいのだーっ!!」

 と、総帥。

 体つきに比べて非常に子供っぽかった。

 そして友達のワードに、案の定、奏さんが反応する。

 つかつかと、褐色肌の彼女の元に、先輩は歩み寄ると、片手を差し出した。

「……同志ッ……!」

「お、お姉さま……」

 がっちりと、握手。てかいつの間に、お姉さまになったんですか奏さん。

 かたや険悪極まりなく、かたや危険な匂いのしそうな花園空間。

 何コレ。何なの?

「とりあえず、私の無くした三時間。きっちり耳をそろえて、値するだけの痛みを受けてもらうわ」

「なるほど……、やる気ですか」

 群雲の言葉に、シャープな彼女はがたんと机を立つ。

「しかし、隙だらけ。嘗められたものですね」

 ゆらりと、黒ブチメガネの女の子の姿が陽炎のようにゆれると、きゅっという床のこすれる音と共に、思い切りゆがんだ。

 体勢が崩れ、俺の上半身が床に落ちる。

 首元が、締め付けられる。

「ぐぇっ!?」

 カエルのつぶれたような情けない声が、俺の口から衝いて出た。

 続いて、頬に冷たい感触。後ろ頭にこの世のものとは思えないやわらかい感触。

 しかもあったかい。

 な、なんだこのハイブリッドな新感覚!?

「秋月、さん……!」

「動かないでいただきたいのですが」

 群雲とシャープそうな子のやりとりで、やっとのことで俺は自分の置かれた状況を悟る。

 首にはあご下にがっちりときまった細い左腕。頬に当たるのはぎらりとしたいびつな光を放つサバイバルナイフのような形をした、でっかいナタ。

 マチェットとかいうんだっけか?

 俺は、黒ブチメガネで黒髪の女性に、いつの間にか羽交い絞めにされていた。

 低い、しゃがみこむような姿勢で、倒れそうな俺を支える彼女。

 ということは後頭部にあたるこのあったかくて脈うっててやーらかいもんは……。

「いや、まてこらッ! ちょっとまて! なんだこれ!? どういうことだ群雲ッ!? 説明しろ説明ッ!!」

「あー、もう、うるさい人ですね……」

 ぼそりと、黒ブチメガネの子が、ため息混じりに耳元でささやいた。

 吐息が、耳に触れ、俺は身もだえしそうになる。

「触れてると思えば、いい気分ではないですか? ちょっと黙っといてください、人質なんですから」

 ぐいっと、胸を反らし、押し当てる彼女。ぽみゅんと。

 うわ、でかっ……。

 鼻の奥に、熱を感じる。鉄の味を感じる。タンマですアネさん。免疫無いんですけど、俺。

 そして頬にぴたぴたと当たる鉄の感触、切れ味のよさそうなマチェット。なにこの天国と地獄。

 武器フル活用しすぎ。

「うい、アネさん。黙ります。従います……」

 がくーと、ギブアップ。そりゃ、しますよ。男の子だもん。

「素直でよろしい」

 と、満足げな彼女。

「人質なんて……、貴方らしいわね」

 群雲が彼女を、俺もろともにらみつける。

「普段はやれって言われてもしませんよ? 邪道は大嫌いです。イメージで、人を判断するのは感心しません」

「じゃあ、なんで今回はそんなことをしたのかしらね……? マウラ・ミウラ・マイラ。ソレについての言い訳は?」

 腕を組んだ群雲の、見下す視線。それに、マウラといわれた彼女は厨房をちらりと横目で見ると、答える。

「おいしいんですよ……」

「は?」

「ここでやって、出入り禁止食らったら、もう食べられないじゃないですか。ここのしょうゆラーメン」

 その言葉に、群雲ははっとする。

「貴方は、判るのね……、ここの味が……、他の店舗には無い、この、独特の味が……!」

 じゅるりと、よだれをぬぐう、群雲。

「判りますとも。猫舌なので冷たいのしか食べれませんが」

 うんうん、と頷くマウラさん。

 ああもう、空腹なのにそんな話切り出されたらッ!

 話を聞いて、俺の腹が、奏さんの腹が、同時にぐぅとなった。

 いても立ってもいられなくなったのか──

「すいませーん。しょうゆラーメン三つー」

 マイペース娘の奏さんが、厨房に向かってオーダーを出した。

 俺の分も、群雲の分も。

 すきっ腹にラーメンがしみこんだのは言うまでもない。










 そんなわけで、俺は四名のそれぞれタイプの違う美女に囲まれたまま、ぞろぞろと夜の大通りを歩いてる。

 街頭の照らし出す道路。

 人通りの多いセンター街。

 先頭はいかり肩の群雲。その後を、しゅんとした様子の総帥、続いてそんな彼女を励ます、同属を見つけたとうれしそうな奏さんに、最後尾をマウラさん。

 しかも、マウラといわれた彼女に、首絞められたまま。引きずられている。

 マチェットはどっかに掻き消えて、徒手空拳。

 おっかしいなぁ、ラーメン食ってたときは開放されてたのになぁ。

 ひそひそと、周囲から声が聞こえる。

 やだ、あれみて? まぁ、修羅場かしら。あ、あの子、秋月さんちの子じゃありませんこと? やぁねぇオホホ。

 勝手なことを言うオバチャン連中。

 美女四人に連行されてる俺は、通り過ぎる男衆からもじとじとした視線を浴びる。

 ああ、視線が、視線が痛いッ!! 刺さるッ!! ドスドス刺さるッ!! 目覚めてしまうッ!!

 あ、そこ、何に? って質問は却下。

「あ、あのー……」

 マウラさんに、声をかける。

「逃げませんから、そろそろ拘束を解いて……」

「だめです」

 言い切る前に一蹴。ああもう、後頭部にあたるこの感触がこまるのにっ!

 あとこの、なんていうの? 柑橘系の甘酸っぱい匂い。まさか体臭? ありえへん、神経やられる。

「ついた……」

 群雲が振り返る。

 月明かりに照らされる、白塗りのコンクリート。

 見たことのある場所、ってかーウチの高校ですよここッ!?

 校舎にかかっている時計に、目を向ける奏さん。

「おや、もうこんな時間か。すまんな、そろそろ門限だ」

 といって、踵を返してしまう。

「あ、そうなのですかにゃ……、せっかくお知り合いになれたのににゃ……」

 びんっとハンカチで鼻をかむと、総帥と呼ばれた子は寂しそうにひらひらと手を振る。

「ちょっとまてぇぃッ!! 後輩がこんな目にあっててアンタ、それでも生徒会長かっ!?」

 ぴくりと、奏さんの背中がこわばる。

 そして、頭を抱えたまま、その場にしゃがみこむ。

 あ、葛藤始まった。

 もう一押し。

「助けてください……、奏さん……」

「あいわかったっ!! 見届けよう!!」

 ぐっと拳を握り締め、立ち上がる彼女。

 いや、見届けるんじゃなくてね、拘束といてほしいの。わかる?

「あ、連絡くらいはいいかね?」

 携帯を取り出しながら、奏先輩。

 呆れと諦めを伴って、ため息が出た。

 もう勝手にしてください。

「うーむ……、昼間の待ち合わせ場所なのだ……。やっぱり、根に持ってるのであるか? 夕陽ちゃん……」

 しょぼーんとした様子で、群雲に聞く総帥。

「当然……」

 赤く輝く瞳が、総帥を射抜く。あれ? 赤い、目? そんな虹彩、ふつう、人間が持ってるか?

「はぅあっ……」

 それに、びくっと背筋を震わす総帥。続いて、言い訳を始める。

「いや、それにはわけがあるのだっ! そこのマウラちゃんが……!」

「最終決定は総帥だったと存じ上げます。責任を逃げるなんて汚職政治家ですかあなたは。不信任って本部に告げ口しましょうか?」

 はっと頭の上で鼻で笑う声。

 総帥の頭からΣが飛び出し、ぎぎぎぃっと首を回すと、恨みがましい視線を、こちらに向ける。

 マウラさん、黒いっす。あと、口悪すぎっす。

「もういいわ、どうせだから決着もつけましょう?」

 ため息混じりに、群雲。と、次の瞬間、彼女の体が宙を舞うと、結構な高さのある校門を飛び越える。

 ……は?

「ここなら人目にも付きにくいでしょう? やるならさっさとやるわよ」

 グラウンドの真ん中で、ちょいちょいと、人差し指で二人を呼ぶ群雲。

 いや、アンタ一体───

「しかたないのだ……」

 総帥が、呟く。

「ゆくぞマウラ女史。今こそ雌雄を決するときにゃっ!」

「さっさとそうすればよかったんです」

 続いて、二人がグラウンドに群雲と同じように入場。もちろん、マウラさんに拘束されてる俺も。

「あ、こらっ! 無断で校舎内にはいってはならんっ! あ、もしもし? 父上? ああ、夕食? さっき食べて───」

「あんたはあんたで携帯切れよッ! てか、とめろよ!」

 門の向こうにいる奏さんに怒鳴っても、相変わらずのマイペースで世間話突入。

 家でやってください。おねがいです。

 むんずっと、自分の制服のすそをつかむ総帥とマウラさん。

 そのまま思いっきり引っ張る。

「最新鋭変装セット解除っ!」

 ばさぁっと制服が夜空にはためいた。

 するとどうだろう、マントを背負った姿へと変身する、総帥とマウラさん。

 うーわ、なんじゃそれ!?

 胸元は谷間を強調、へそだしの薄手コルセット。下半身はパンツ見えそうなミニスカートに絶対領域にピンヒール。

 臀部からはちょろりとはえた、ふさふさしてそうな尻尾。

 なにより驚いたのは、耳である。

 ねこみみだよ。ねこみみ。ぴくぴくうごいてるねこみみですよ。

「なに、それ、コスプレ?」

 唖然としながら、俺は尋ねる。

「しっけいにゃっ!! これぞナコタナコタ星系連合宇宙軍正式仕官服ッ! 正装なのだ!」

 くわっと、総帥が吼えた。

 ナコタナコタ星系連合宇宙軍って……?

 てかそれ正装って、セクハラなんでは……。

 ふと見上げれば、総帥の明るい色彩とは色違いの、暗い色合いの服を身にまとったマウラさん。こちらも過度な露出にねこみみ、しっぽだった。

 首のチョーカーから提げているのは、神社にあるヤツ並にでっかい、鈴らしきもの。

 三毛猫な総帥と黒猫なマウラさんて感じ。総帥って子のねこちっくな語尾はコレに由来するものか……。

 そして、相変わらず拘束された俺。後頭部に、肌を露出させてるマウラさんの胸の感触。

 うーあー……、顔が、火照る……。

「髪の毛、ちくちくするんですけど」

「ごめんなさい……」

 ていうかそれなら離してください。

「やっと正体をあらわしたわね、インベーダー」

 なんかすごい寒気の走りそうな使い古されたテンプレートを、聞いた。

 声の主は、群雲。びしぃっと突き出された人差し指に、なんだかデジャブを見る。

「そろそろかにゃ?」

 いそいそと、サングラスをかける総帥。マウラさんも同じく。そして、俺にもサングラスが渡された。

「なんですこれ?」

「王道です。掛けてください。ポケ○ンショックになりますよ?」

「はぁ」

 とりあえず、首を左腕でチョークスリーパーされてる以外は拘束も無く、両手は自由なんで、俺がサングラスをかけるのに手間はかからなかった。

 ばっと、両手を頭の上でクロスさせる群雲。

「マジカル……」

「すとーっぷッ!!」

 思わず、俺は声を上げていた。

 いま、先が見えた。未来見えちゃった。チキン肌でそうな未来が見えた。

「秋月さん、なんスか……?」

 むすっと、群雲がそのままの状態で俺をにらみつける。

「いや、もうなんか先読めた! そこでききたい! 服は破れるかッ!? もしくは消えるか!?」

 …………。

 イヤーな空気が流れる。

 ああ、そういう意味で言ったんじゃないのに……。

「いや、下心って言うか、はずかしいじゃん。見てるほうが。目を瞑ってたほうがいいのかっておもって」

 まがりなりにも女の子。そこらへんのマナーは俺は心得てるつもりだ。

「ああ、なるほどにゃ。紳士的な意味で、であるな。びっくりしたのだ」

 ぽんと、総帥が手をたたく。

「マウラ女史、アイマスクあったかにゃ? 貸してあげるのだ」

「ちょっとお待ちください」

 ごそごそと、ポケットをまさぐると、目のシールがついたアイマスクが渡される。

 ほっとして、俺はソレを装着した。

「はい、もういいよー。アクション!」

「監督気取るのはやめてほしいンスけど……、まぁ、いいッス。マジカルテリブルパンデモニウム……!」

 おお、なんかすごい空気の渦の動きが……。

 注:俺、見えてません。

「黄昏の果てに舞い落ちし、偉大なる汝の名の下に、我に力、与えたまえ……!」

 どごんと、群雲のいた辺りから、風がはじける。

 注:俺、見えてません。

「そろそろいいです?」

「だいじょうぶですよ」

 マウラさんの声に、俺はアイマスクをはずす。

 目に映るのは、雷電を伴う変わり果てた群雲の姿。

 刺繍の施され、波のように複雑な形状をしている裾を持つぶかぶかのコートに、なんらかの宝石がつながった、ビキニトップ。

 ホットパンツからはじゃらりと幾重もの鎖が伸び、頭部にはこれまたねこみみっぽいアクセサリー。

 露出度の高い彼女の肌には、真っ赤に輝きを放つタトゥーが、複雑な幾何学模様を描いている。

 思っていたのとは若干違う。ふりふりひらひらではなく、むしろ黒い魔女。

 ぼっさぼさだった前髪はきれいに整えられ、均整の取れた端正な顔を見せる。

 酸いも甘いも無いけれど、なんだかんだで美人を見慣れてる俺ですら、見ほれるほどだった。

 うわぁ、思いのほか、アイツ、綺麗だったんだ……。

 ソレよりも驚いたのは、その手が支える身長よりもでかい機械仕掛けの鉄柱である。

 感想を一言。

「なんか、魔女ッ子っぽくない」

「大丈夫です」

 マウラさんの声の後、群雲の腕の、ステッキというにはでかすぎる鉄柱が、ぶんと音を上げて振り回された。

 じゃこん、と先端がこちらに向けられる。戦車砲のような銃口を、ソコに見た。

 ステッキですらねぇよ。

「マジカルバスター、群雲夕陽ッ! 死にたくなければ土下座しろッ!!」

 きめ台詞。いや、土下座しろって……アンタ。

 ていうか、痛い。痛くね? 痛いよ。激しく痛いッ!

 なんつー痛々しさだ。創造してたよりはるかに痛い。思わず絶句してしまうほど痛い。

 特にネーミングとかもう最悪だ。背筋にいやな意味でゾワゾワくる。

「ほらね?」

 と、サングラスをとりながらマウラさん。

「どうなんですか、アレ……。というか痛い」

「痛いのは重々承知です。まぁ、亜種ってやつで大目に見てあげてください」

 ざっと、ねこみみな総帥と、ねこみみっぽい群雲が、グラウンドを踏み鳴らし、対峙する。

 風が通る。

 そこで、俺ははっと今更ながらに気がついた。

 あれ? なんか、現実離れしてきてない?

 どこからだっけ……、おかしくなってきたの。

 ナチュラルに巻き込まれて区切りが判らない。

 一人考え込む俺を尻目に、何らかの拳法らしき構えを取った総帥が吼える。

「そいでは、いくぞっ! 夕陽ちゃんッ!」

「ブッ飛ばす……」

 二人が、動いた。







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