case2−2
1 Side:九
俺達がやって来たのは、地上三階、地下一階の大型ショッピングモール。ここなら大抵の物は揃うはずだ。
「こんなに色々な店があると、逆にどこ入ったらいいか迷うな」
リストを見ながら、ふらふらと歩き出す俺。
「食料品は最悪前日でもいいとして、他に必要な物から買いに行こう。二人共、ちゃんとついて……って、おや?」
振り返ると、そこに美波と英里の姿は無く、俺の頭の中にはこの状況を指し示す一つの可能性が浮かび上がってきた。
「これって、まさか……失踪事件!」
2 Side:美波
「美波さん。九くんが居ないよ」
英里ちゃんの言葉に辺りを見渡す私。
「始まった。ここちゃんて積極的に迷子になる天才なの。昔っからね」
「九くんの事だから、これは事件だ! って騒いでなきゃ良いけどね」
英里ちゃんは冗談のつもりで何気なく言った言葉のようだけど……。
「あり得る。ここちゃんだからね。とりあえず電話してみようか」
呼び出し音は鳴るものの、ここちゃんが出ることは無かった。
「買い物リストはここちゃんが持ってるっていうのに。しょうがない。覚えてる範囲で買い物しようか」
「気付いたら折り返し電話くれるかもしれないもんね」
3 Side:九
「これは事件だ! 美波と笹羅が一度に消えるなんて。犯人は複数の可能性もあるな。落ち着け、よく考えろ俺。まずどう行動するかだな」
俺は目を閉じ集中する。
「ねぇねぇ、おにいちゃん。なにしてるの?」
目を開けると、小さな男の子が俺を見上げながら、不思議そうに眺めていた。
「今大変なんだ。友達がいなくなっちゃって」
「なぁんだ。おにいちゃん“まいご”かぁ。おっきいのにざんねんだね」
そう言うと、男の子は走り去って行った。
「ま、迷子……だと。美波と笹羅が迷子だって言うのか? いや、高校生にもなって迷子などと言うことはないよな」
ありとあらゆることが俺の頭の中を駆け巡った。
「あっ、そうだ! 電話したら解決じゃん。事件でも何でも無かったわ。まったく美波達には驚かされたよ」
ポケットからスマホを取り出し、俺は美波へと電話を掛けた……つもりだった。
「こ、これは! テレビのリモコン! そういえば朝寝ぼけてたからな〜」
ショッピングモールでテレビのリモコンを持ち立ち尽くす俺。
「ママ。あのひと、リモコンもってる」
「しぃぃ。見ちゃダメよ」
ゆっくりとポケットにリモコンを戻すと俺は顔を上げた。
「……迷子センター、行こうかな。ははっ、はははっ」