表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第十三騎士団出動中  作者: 魚缶
第1章:新生第十三騎士団結成
4/5

魔術師とシスター

 部屋のゴミを片付けること数時間、それ相応に部屋は綺麗になっていた。ついでに散らかっていた臭い部屋着はクリーニング屋に任せておいた。で、帰還するとアパートの管理人であるハナちゃんの母親から、封筒を手渡された。どうやら騎士団が持ってきたらしかった。


 そこで俺は早速部屋に持って帰って開封、その中に入っていたのは第十三騎士団に関する書類だった。引き継ぎがまともに済んでいなかったのは知っていたが、何も休日に送ることはないだろう。嫌になっちゃった俺は、その書類を机の上に放り出しておく。


(引き止めるべきだったかなぁ……)


 フィーゼのことに関してどうするべきだったか、今更ながら考える。ゲームでは敵だった分、騎士団に入れると本編そのものが変わって俺が主人公と絡む、なんてことが起こるかもしれない。けれども彼女は失敗に、かなり悔やんでいる様子だった。最後のチャンスだった、って言っていたし、このまま第十三騎士団に入れなかったらどうなるのだろうか。


 と、頭の中でぐるぐる思考が回る。こういう事柄って一度気になりだすこと、どうしても気になってしまうのだ。


「……ゲームに絡む、絡まない関係なしに一度考えてみるか。残り二人も」


 一先ず俺はこれからの生活のことより、三人の少女について考えることにした。特に明白な理由もないが、ただ一人だけの騎士団というのはこれからの生活に支障が出てきてしまうからだ。もう少し交友関係が広ければ解決したのだろうけど、残念ながら初対面の人と会話を交わすことが困難な俺は交友関係はめちゃくちゃ狭い。


 それにだ、三人の強さはゲームで嫌と言うほど知っている。仲間にできるのならばこれほど心強いことはないだろう。


「取り敢えずフィーゼは後回し、落ち着いた頃に訪ねてみよう。それで問題は二人、だが……」


 そう言って俺は椅子に座り、しかめっ面で二人のプロフィール用紙を手にとって見る。一人は『不浄のシスター』。『王国騎士ルート』、『魔王軍ルート』にて出てくるキャラだ。その名通り神に仕えるシスター……のはず、なのだが。格好はコスプレ感漂う短い修道服。可愛いのは可愛いのだが、発言が可愛くないキャラだ。そしてこちらもトラウマ必死のキャラである、がビッグスリーではない。


 このキャラの特徴は何と言っても、その格闘能力の高さである。武器として聖十字の剣を持っているのだが、これが耐久『3』とゴミカス。壊れたら怖くないかと思いきや、近接格闘での攻撃力が剣で攻撃するときよりも高いのだ。だが本当に恐ろしいのはここではない。本当に恐ろしいのはその広範囲回復能力にある。


「半径10マス以内の仲間を全員回復って何だよ……」


 あの恐ろしい回復能力を思い出して、そして仲間になった時の頼もしさを思い浮かべる。もし仮に、騎士団に入ってくれたのならばその時は、戦闘の要になるくらいには頼もしい人材になるだろうと考えた。ただ懸念すべきは、『王国騎士ルート』で敵になる、と言う点。要は騎士団と敵対する関係にあると言うことだ。


「まぁ、ゲームとは違うし。そこは俺に技量次第かな……」


 どうにかなればいいけど……と考えつつ、次のプロフィールを見る。そこに書いてあったのは『混沌の魔術師』。『革命軍ルート』、『王国騎士ルート』で出てくるキャラだ。通称の通りで魔法を使う、しかもかなり強力な魔法だ。


 ただ『盲目の剣士』と『不浄のシスター』と比べるとそう脅威でもない。たしかに魔法の威力はどんなキャラでも一撃やられるほどの威力があるが、彼女との戦闘に入る前にとあるイベントをこなす事で、魔法ダメージ激減できるアイテムが手に入る。しかもその上、戦闘開始の時点で何故か状態異常の『錯乱』状態にあり、命中率、移動がかなり低下している。


 彼女の戦闘自体、敵には魔法使いばかりで取り敢えずアイテムを持たせて突撃させとけばどうにかなる、かなり緩い戦いではあった。


 と言うわけで、ここまではとても簡単なのだが。


「……思い出したくねぇなぁ……」


 真に恐ろしいのは『革命軍ルート』に於けるラスボス戦である。騎士団本部で騎士総長との戦いになるのだが、一定の条件を満たしていると彼女が現れる。『錯乱』しておらず、《混魔(タングド)》と呼ばれる魔法を戦闘開始時に使う。これを使われると彼女を倒すまで味方側の魔法が一切使えなくなるのだ。それどころか毎ターンHPが減り、ステータスは大幅に低下、トラウマ必須のキャラである。


 まぁこれには、とある抜け穴があるためトラウマになることはなかったのだが。


「こっちも『王国騎士ルート』で敵対するから、その辺りも俺の手腕か……」


 色々ブツブツ考えながら三人の少女の書類を置いて立ち上がる。書類だけ見てもわからない、百聞は一見にしかずと言うことがある通り、俺は実際に見に行くことに決めた。フィーゼ(盲目の剣士)と同じように、ゲームと現実が違う可能性なんて大いにあるし。


 俺はそこら辺に散らばっていた仕事服に着替える。鎧系統の重武装ではなく、簡易的な動き易さを重視した服に近い軽武装だ。騎士団は基本的に所属を証明するものを身につけていれば、服装は自由となっている。と言っても大体は鎧を着込んだりすることが多い。


 落ちていた剣を拾うと腰に吊るす。休日だってのに仕事服に身を包むことになるとは。まぁ、その辺り前世と大して変わりないから問題はないと言えるんだけども。


「取り敢えずは『混沌の魔術師』、エレアナからかな。取り敢えずはプロフィールに書いてあった家に行ってみて……まぁ、そっから考えるか」


 アパートを出て走り出す。相変わらずの寒さに雪、仕事服として手袋をつけているも手が既に冷たくなっていた。部屋の中は魔法で作られた道具、魔道具のおかげで暖かかったものの、外に出るとまた別の魔道具が必要となる。


 そんな関係ないことは置いておき、俺は滑らないように軽い小走りで家へと向かった。家、と言っても俺と似たようなアパートだったのだけども。


 家から出てあまり時間要さずに辿り着いたのだが、部屋には誰もいなかった。管理人さんに聞いたところ、ここ数日は帰ってきておらず、ずっと魔法研究所にいると言われた。軽い礼を言って研究所へと向かう。


 魔法研究所、施設としては名前のまんまだ。魔法を研究する施設で新たな魔法を生み出したり、単純して使い易くしたりと色々している。


 騎士団本部が城とほぼ直通にあるため、街の真ん中なのだが、この魔法研究所の施設もかなりの大きさで騎士団本部の少し上らへんにある。と言うのも共同で仕事をしたりすることが多いからだ。俺も何回かお世話になっている。


 しばらく歩くこと数十分、似たような街並みが続く中にまるで前世の世界で言う、デパートのような建物が見えてきた。デパートと言っても窓がたくさんついており、防音性のはずが轟音が響いたりしている。そのせいか周囲には家がなく空き地が多かった。それに比例するかのように人通りも少なかった。


 この魔法研究所は基本的な部分は一般公開されている。見学に来る家族や子供が案外いるのだ。ただ今は忙しいようで、見学は禁止されているようだった。


「すいませーん」

「はーい」


 受付で人を呼ぶと、奥の方から受付嬢が顔を出す。俺は魔道具で撮ったであろうエレアスの写真を提出する。


「この人ってどこにいますか?」

「すいません。まずは身分の提出をお願いできますか?」

「あ、ああ……これでいいですか?」


 俺は騎士団長のバッヂを見せる。すると受付嬢はガラス越しにハッとしたような顔をした。


「騎士団の方でしたか! それにその番号は……アルベルトさんですね。エレアスさんは三階の個人研究室にいるはずです……が、そのですね、今は会わない方がいいと思いますよ」

「え? どうしてですか?」

「今は多分、錯乱状態にありますから、三階自体が大荒れしていると思います。アルベルトさんは騎士団長ですから、そのぐらいのお力があれば大丈夫かと思われますが……」

「ありがとうございます。取り敢えず見に行ってみますね」


 錯乱状態で三階自体が大荒れって、どう言うことなのだろうか。ゲームでも確かに『錯乱』状態にあったが、一体全体何が原因で錯乱しているのだろうか。ゲームでは語られることはなかったが、もしかしたらここならわかるかもしれない。


(……覚悟は決めておくべきかなぁ)


 恐る恐るながらも、俺は三階に向かって歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ