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1.その勇者は最低最悪の死刑囚

数百年前に、魔王が人類を滅ぼそうと活動していた。その力は強く、配下達が多くの人々を殺していった。

魔王は数の多い人類の次には、自分の配下にならない種族を滅ぼすと宣言。その宣言を聞き人類、当時の魔王に反抗していた種族達は神に祈りを捧げた。


「魔王を打ち倒せる者を」


結託した祈りは神に届き、一人の人間に力を与えた。その者は魔王討伐へと行き、討伐には至らなかったが封印をする事に成功した。

魔王は封印の直前に言い残した。


「忌々しい、しかし我は必ずこの封印から蘇る。この程度の封印が永遠に続くと思うなよ」


神託を受けた者はこの魔王の言葉を王や各種族の代表に伝えた。対処として封印を見守り、異常があったらまた神に祈りを捧げようという話になった。

そしてこの神託を受けた者は、勇敢で勇気を持ち偉業を成し遂げた者として勇者と言われ、語り継がれることになった。


そして今現在、数百年の月日を経てとうとう封印が破られた。そう、魔王が蘇ったのだった。


「まだ神託は降らないのか?」


「はい、教会でずっと祈りを捧げているのですがまだ……」


「まったく、こんな時に魔王が蘇るとは……。悩みが尽きんの」


とある一室では国王と大臣が話し合っていた。魔王の復活した直後から教会へ連絡をし、教皇へ神に対しての祈りを始めるように命令をしていたのだ。しかし未だに神託は無い。

そして、魔王とは別に今この国では問題が起きていた。その問題とは。


「それで、例の奴は捕らえたのか?」


「捕縛に行った兵士を殺し逃げられました。申し訳ございません」


「どうにか国内の安全だけでもなんとかしたいのだがな」


この国では今一人の男が連続殺人を行なっている。どの現場でも老若男女問わず惨殺されており、捕縛や殺しに向かった兵士は返り討ちにあっていた。

魔王が蘇り世界の危機と、一人の男による身近な国滅亡の危機。王も頭を悩ませていた。


とある一軒家で血塗れの男が椅子に座り、飲み物を飲んでいる。室内は血の匂いで充満しており。首や腕、身体の一部が欠損した死体が転がっている。中には壁に磔にされて何本ものナイフが刺さっている死体もある。


「まったく邪魔するなよゴミがよ。人がせっかく楽しんでたのに、これ死んじまったじゃねぇかよっと!」


男は飲み終えた空の瓶を、磔の死体に投げつけた。死体に当たり、瓶は割れ床に散らばる。


「あーあ、やっぱり反応が無いよ。つまんね、人間ダーツの邪魔したこのゴミどもはいつになったら俺を捕まえるのを諦めてくれんのかね」


足もとの死体を蹴り、愚痴をこぼす。グチャグチャと音が鳴りながらも蹴りつつ、次は何をしようか考える。


ガタッ。


「あ? なんか音がしたよな?」


「ショ、ショックス」


「チッ……。ミスったとかダセェ」


バタンと男が床に倒れた。その近くには片腕が無い鎧の男が居て、気絶魔法を放った。


「や、やった。あとは連絡して、こいつを運んでもらえば。早く……」


この後連絡を受けた兵士達が来ると死体の上に気絶中の国を騒がしている最悪の犯罪者がおり、連絡をした兵士は息が絶えていた。


ここはどこだ?何も見えねぇな。たしか、ヘマして気絶させられたんだよな。はぁ、捕まったか。どうなるかねぇ、俺の今後は。


男は今両腕を鎖で縛られ、口に猿ぐつわ、目には目隠しの状態であった。


「意識が戻ったようだな、ようやく貴様の裁判を始められる。まぁ、結果は最初から決まっておるような形式上のものだがな」


「うーー? う、ううう。うーーう」


「そいつの猿ぐつわを外してやれ。何かしたら即座に殺せ」


兵士が近寄り男の口から猿ぐつわを取る。それと同時に男は話し出した。


「楽になったよありがとさん。偉そうなお前は誰だ? 裁判とか言っていたが、そしたらここは王宮か。答えてくれよ」


「貴様……。その通りここは王宮だ。いいか? 何十人もの兵士が貴様をいつでも殺せるように待機できている。下手な事はするなよ」


「この状態にして、まだビビってんのかあんたら。ザコだな。てか、質問にちゃんと答えろよ。お前、誰だ」


「くっ、私は司法大臣だ。それでは早速貴様の罪状を述べて、罰を言い渡すぞ」


「どうせ処刑されるんだろ?」


男の言葉を無視し、司法大臣は罪状をドンドンと述べていく。


懐かしいな、そんな昔の事までちゃんと記録されてんのか。兵士を大量殺人って、そんなのは罪になるのか?テメェらの駒がザコ過ぎて使えなかっただけだろ。強けりゃ、死んでなかったよ。金品強奪?それは知らねぇぞ?俺は殺して遊んで、終わりだからなぁ。まったく、知らねぇ罪まで俺のせいにしてんのかよ。


「以上! 何かこの罪状に異論はあるか?」


「ちゃんと調べろ使えねぇカスども。俺は殺し以外に興味がねぇ。金品強奪やら強姦やらそんなのは俺のやった事じゃねぇ。俺がやるのは子供だろうが年寄りだろうが、嬲ってオモチャにして殺すだけだ! 面白いぞぉ?」


「このクズが!」


男は思いっきり殴られて床に倒れた。しかし、ニヤリと笑いながらも自分が殺した時の人間達が出した叫び声を真似して、司法大臣を煽っていた。


「もういい! 処刑だ! こいつを死刑囚として、牢にぶち込んでしまえ!」


「あっははは! 寂しいじゃねぇかよ、せっかくお前らの間違っている罪状を俺自ら教えてやろうとしてんのによぉ。もっと、俺の話を聞いてくれよ!」


男は再び猿ぐつわをされ、牢屋へと連れて行かれた。


「明日、貴様を早速処刑する。以上だ」


その声だけを残して男は一人だけになった。辺りに音は無く、シーンと静まりかえっている。


脱走は……。無理だな。拘束が硬くて外れねぇ。目も口も塞がれてる。やれやれ、処刑は確実か?こうなったら殺される瞬間一人くらいは道連れにして、死んで楽しむか。


次の日。男は二人の兵士に囲まれて処刑台へと向かっている。そして、どっちを殺してやろうかと今考えている。


「最後に言い残す事はあるか」


「まだ、殺し足りねぇ。逃がせ」


「首に縄を……」


「その処刑をやめて下さい!」


処刑台で兵士が男に吊るし縄をかけようとしていた時に、大声で処刑をやめるようにと黒い服の男性が言ってきた。


「何故ここに教皇様がいらっしゃるのですか?」


司法大臣が声をかけた瞬間に、男は兵士の一人へジャンプして首を足で挟み込み、そのまま捻り折った。ボキッという音が鳴り、兵士はゆっくりと倒れた。その姿を男は満足そうに見ていた。


「な! 貴様なんてことを! 早く処刑してしまえ!」


「待て! その男を殺してはいけない!」


教皇の口からとんでもない言葉が出た。


「教皇様、それはどういう事でしょうか。この男は大犯罪人ですよ」


「わかっています。司法大臣、少し時間を下さい」


そう言って教皇は男に近づいていく。ある程度の距離に来たとき、質問をした。


「一つ君に聞きたい事がある」


「あ?」


「君の名前はギルツ。ギルツ・チレアーかね?」


「ギルツで良いぞ。チレアーは俺以外皆殺しにしたからな、あっても意味がない名前だ」


教皇は目をつぶって難しい顔をしていた。その横から司法大臣が声をかける。


「教皇様、こいつの名前がどうかしたのですか?」


「私は正直に言って不本意ですが神のお心のまま、従うしかありません。このギルツ・チレアーは神託を受けました」


「は?」


「この者が魔王を討ち倒す、今世の勇者なのです」


教皇の言葉に一人以外が固まった。例外の一人、勇者のギルツは。


俺が勇者か、面白そうだな。

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