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8ページ目、魔法の授業

説明回になります。少々長ったらしいですが悪しからず。

「魔法を使うにはまず、体内に流れる魔力の元みたいな物を感じ取るところから始まる。魔力は、多かれ少なかれ全ての人が持っている。こう……身体中を巡る血液のような、重たい物がゆっくりと動いているのだが……これは感覚でしか掴めない。やってみてどうだろう?見つけれるかな?」


カンナさんの言う通りに、目を閉じて自分の体に意識を向ける。身体中の血管がどくどくと脈打つのを感じる。体の表面を空気の流れが伝う。そして体の奥底、腹の奥に重たく動く、どろどろしたものがある様な感覚を発見した。

少し不快に思い、そのどろどろしたものに意識を向け、何とかさらさらにならないかと思っていると、突然滑らかに循環するように動き出した。


「……はい、何となく掴めました」


「おぉ、早いじゃないか。こればっかしは勘だからね。見つけられない者は数週間かかるんだ。君は筋が良いみたいだね」


親指を立て、グッド!とサインを送ってくれました。


「では、次はそれを、血液が巡っているような感じをイメージして循環させてみて」


「あ、先程魔力を感じ取った時に動かしてしまいました…」


そう言うと、びっくりしたような顔になり


「まさか先を越されるとはねー、凄いじゃないか。これじゃあ私が抜かれるのも時間の問題かもね」


と笑った。お父様も使えないと言っていたので、恐らくこんなに早く感覚が掴めるのは早いのでしょう。

ですがカンナさんの反応を見る限り、驚きも小さいので、やや覚えの早い子、くらいなのでしょう。


「じゃあ、いよいよ魔法を発現する段階だ。まず、魔法には大きく光、闇、風、火、水、土属性がある。これは1週間を表す曜日と同じだね。6大魔法と呼ばれていて、比較的発現しやすい魔法の事だ。他にも雷や植物を操ったり、空を飛んだりする魔法もあるが難しい」


さて、とカンナさんは溜息をつきました。


「それを発現するには自分の体内になる魔力を体外に出す必要がある。そして、自分が発現したい物を細やかに想像する。この時のイメージが明確であればあるほど、魔法の完成度は増すからね。そして消費する魔力にも依存する。後、あまり知られてはいないが、それを強く渇望することで、多少イメージがあやふやでも発現する事がある。つまり、怒りに身を任せたりする、とかね。何か質問はありますか?」


「はい!各属性に、適正とか使えないとかありますか?」


私はピンと右手を突き出しました。カンナさんはその仕草に笑みを零し、こほんと咳払いをしました。


「適正とかはないかな。強いていえば、自分がそれを想像しやすいか否かで得意属性が決まる。一応『加護』ってのがあって、加護の与えられた属性は他の属性よりも使いやすくなるかな。私の場合は土だ。他には?」



「はい!」


「どうぞ」


「どんな種類の魔法がありますか?詠唱とかってどんなですか?」


カンナさんは目を細めた。


「本当に鋭いね。ロウダ様からは、魔法は全く知らないはずだと言われたんだがね」


しまった!と口に手を当てました。

ゲームとかで色んな魔法があったり、詠唱とかが気になってたのでそのまま質問しましたが、私はここに来てから一切魔法について言及していませんでした。お父様もいつも一緒にいたのでその事は知っています。

口に手を当てたままカンナさんを見つめると


「いいよ、別に気にしてない。飲み込みが早くて予備知識もあるならこちらとしても楽だ。」


と笑って流してくれました。


「どんな種類か?詠唱はどんなか?だったね。まず種類から言おう。これは、人の数だけ種類がある。だが、大きくは2種類。一般的な魔法は名前が付けられ、下級〜上級魔法と呼ばれる。ファイアボールという火球を相手に飛ばす魔法や、ヒールという傷を癒す魔法などがある。でも、発動できる魔法はすこし屁理屈なところがあってね。氷は冷たすぎると火傷ができるから、水魔法で相手に火傷を負わせる魔法とかもあるんだ。そのような、その人独自に編み出された魔法は固有魔と呼ばれる」


「それってつまり、その属性でできる事の応用を考えればいくらでも新しいのを作れるってことですか?」


私が小首を傾げると、カンナさんは「そう!」と表情を明るくしました。


「この世の現象についての理解を深めると、何が出来るかが分かってくる。確か君はソルラヴィェ学園に行くんだよね?あそこでの座学は―――学ぶ事は恐らくこの理解を深める事だと思う。理解を深めると、発現する魔法を明確にイメージできる。理屈を研究する者を魔法学者、魔法の概念を研究する者を魔法哲学者という。例えば―――火属性。火は周りの物を燃やして勢いを増す。だから、薪となる物体を燃やす事をイメージすると良い。実は、火球を飛ばすより、対象を燃やす方が威力は高い。魔法剣士は、使い捨て用の特殊な木剣を使ったりもするくらいだ」



ここまで言うと溜息をつき「これは魔法学者の領分だ。難しいのは、魔法哲学の方」と人差し指を立てました。


「概念って分かるかなぁ。こう……言い難いな。目には見えないものを見るというか、手では触れないものというか。光と闇がその代表例だ。例えば、光魔法にはヒールとライトという魔法がある。ライトはそのまま光を発生させて周りを照らすだけだ。だが、光というのは実は魔法学者ですら仕組みが分かっていない。だから、高度な魔法は賢者や聖女と呼ばれる者しか扱えない。そして、ヒール。ヒールは癒しの光で傷を癒す訳だが、別に光に当たって傷が癒えるわけじゃないでしょ?この、光とは何か、いや『人間にとっての光とはなにか』というのを突き詰めていくのが魔法哲学者。魔法哲学者には光や闇の魔法が得意な者が多いのは、このためだ」


言い切ると、カンナさんは悩ましそうに眉を顰めました。


「実は誰かに物を教えるのは初めてでね、知識をぶつけられても分からないと思う。分からないのは当然だ。どんな事でも質問してくれ」


「んー、確かに難しそうですが、とりあえず簡単な物から使えるようにしていきたいです。掴めてきたら、また詳しくお願いします」


うむ、と元気よく頷く顔はやはり幼く見えます。歳は幾つですか?と聞きたいが女性にそれはNGなので保留しておこう。


「では、実践してみようか。万が一にも成功したら、室内では危険なので外に出よう」


屋敷の中庭はお父様の部屋の窓から様子がよく見えるらしく、窓を見るとお父様がこちらを見ていました。私が元気よく手を振ると、お父様も小さく手を振り返してくれました。

その様子を見ていたカンナさんも「仲がいいんだね」と笑っていました。

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