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sideツカサ・クルゲ2


冒険者ギルドには俺と同じくらいの子供が椅子に座って何かを待っていた。おおよそ、素材の精算待ちだろう。

しかし、半年近く冒険者をやってはいるが、そんな人物は初めて見る。服にべっとりとついた魔物の血は、見る者全ての目を引いた。


そんな服を着ている割に顔はとても可憐で…


この前みたエリザだった。彼女は確か侯爵家のはずだ。何故冒険者なんかをしている。その血はなんだ。

頭の中で数多もの考えが巡る。目が合って、思わずおまえと言いそうになった。




落ち着いて椅子に座り改めて彼女の顔を覗き込むと、作り物かと思うほど滑らかで美しい顔をしていた。

笑う時にその瞳がくっ細まるのを見ているとなんだか変な気分になる。精神に働きかける魔法でも使っているのだろうか。


この国へ来てからの行動には極力気をつけていたはずだ。しかし、どこからかエリザは俺がキョウ人で、父が総大将であるということを知っていた。自分は何かを知っているぞと言いたげなその瞳はいっそう細められ、「私は何も知りませんよ」と嘘をつく。


俺は子供の頃から聡明だと持て囃された。自分でも同年代のガキ達よりも数倍頭が切れるという自負はあった。それもあり、まだ子供な俺がソルラヴィエでの密偵を任せられているのだ。


だが、目の前の女はそれどころでは無い。久しく感じていなかった同年代の少女の恐れ。俺からみて彼女は「大人」であった。

彼女の口から「戦争でもしない限り」という言葉が出た時には肝が潰れるかと思った。

最悪の場合、ソルラヴィエと魔帝国を敵にした大規模な戦争が起こるやもしれぬ、という仮説はキョウでも中枢しか知らぬ話である。

どこまで知っている?それを俺の前で言うことにどういった真意がある?

考えれば考えるほど目の前の少女がなんでも知っているように思え、俺は観念した。


しかし、エリザはどうするでもなく「先輩として冒険者についてレクチャーして欲しい」とだけ言った。ダメ元でその代わりに今までのやり取りを漏らすなと言ってみると、呆気なく了承した。


鼻からそんなことどうでもいいかのように、興味がないかのように。

もしかすると、初めから何も知らなくて、俺が勝手に深読みをして喋ってしまっただけではなかろうか。

怒りか、妬みか、羞恥か、えも言われぬ感情が頭を這い巡り、俺はその席を後にした。


彼女は学校の廊下でもすれ違う。その時、俺はどういう顔で接すれば良いのだろう。

俺は頭を悩ませ宿舎へ戻った。

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