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68ページ目、幾許かの、能天気には気にならない程度の疑念

「おまたせしました」


「いえいえ、全然大丈夫ですよ。それに、もっと砕けてください。地位的には同じくらいかそちらの方が上でしょう?」


「いや、ですが、ここはキョウではありませんので……ん、俺の家の事を知っているんですか」


急に目つきに険が増し、少し身震いしそうになりました。

クルゲという名を昔カンナさんから聞いた気がしたので、待っている間に収納袋を通してカンナさんに確認を取ってもらいました。すると、どうやらキョウ国総帥の苗字である事がわかりました。キョウ国は軍、と言うよりは実力至上主義ですから、総帥は私の知識よりもかなり高い地位なのではないでしょうか。

ツカサさんの反応をみて当たっていたと確信を持ちました。


「まぁまぁ、知ってる人は知ってると思いますよ。どうしてそんな怖い顔をするのですか。何かやましいことでも?」


すると、ツカサさんは呻き声を漏らし、キッと私を睨みます。まじですか。やましいことがあるんですか。


「何が知りたい」


ツカサさんが齢10の子供には思えない程真剣な面持ちで私の顔を見つめました。彼の目には家のこと、国のことについて詮索してしまったように映ったのでしょうか。となると、彼が抱えている秘密は思ったよりも重要そうに思われます。もうでも良い話なのですが、そんなあからさまな反応をされると気になって仕方がありません!

ですが、そこはまぁ、大人らしく自分を諌めました。


「ええと、すみません、別に喧嘩したり脅したりはしてないというか、貴方の秘密については個人的には気になりますが全くなんの事か分かりませんし知ってどうするとかじゃありませんよ。それこそ、戦争とかしない限りね」


戦争、と口にした瞬間ツカサさんの身体がびくりと震えました。まじですか。

何やってるんですか、キョウ……

でもまぁそんな簡単に始まるとは思えません。それに、忘れていましたが魔帝国が進軍中らしいのにこんな中人間同士で争い始めたら他の国が黙っていないはずです。

ともかく、何も見なかったよと笑って話を続けます。


「そんなことはどうでも良いんですよ。ツカサさん、冒険者やってるんですね。せっかくなので今度一緒に依頼を受けませんか?ほら、色々とレクチャーもして欲しいですし」


「そんなことって……いや、はい。わかりました。ですが、条件があります」


「なんでしょうか?」


「さっき事は他言無用です」


「ええ、構いませんよ」


そう言うと何だか呆気に取られたような顔になりました。少しして顔を左右に振って、再び私に向き直りました。


「では、俺はこの辺で」


椅子から立ち上がり、頭を掻きむしりながら歩いていくツカサさんの後ろ姿を見ると申し訳ない気分になりますが、鎌もかけてないのに飛び込んでくる方が悪いのではと目を細めました。

ですが、何かあると分かっても内容が分からないというのも気持ちの悪いです。こうなると気になって仕方が無くなる性分なのです。


ツカサさんがギルドを出ていってから、職員さんに彼の事を尋ねてみました。

子供で、まだ学生だと言うのにお金に困って冒険者をしているらしいです。ですが強さはおりがみ付きで、入学時に冒険者になり先日Dランクにランクアップした程です。

ランクアップ等簡単にできるものでは無く、Dランクと言えば大人顔負けな一人前の冒険者です。


ですが、あいつこんなに強いんだぜ、みたいな話は聞けどもそれ以外の情報は手に入りませんでした。


あまりにもやもやするので、ツカサさんの事とそれについて気になります、程度の事をカンナさんへ綴りました。

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