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67ページ目、ツカサ

「お、おかえり、エリザちゃん…って、何その血!?大丈夫?怪我してない?無事?」


ギルドに入ると、王立学園の子供が1人で薬草採取に言ったという事で私をとても心配してくれていた受付の方が駆け寄ってきました。


王立学園の生徒で冒険者登録している者は当然ながら少なく、皆から気にかけられてくれるのは嬉しいものの、少し目立って恥ずかしい思いになります。


「だ、大丈夫ですよ。これ、途中あった魔物の返り血ですから」


「そうか、良かった。このクエスト、あまり魔物が少ない場所だったんだが…ゴブリンとかか?」


「あぁ、それがですね…ちょっと部位…というか体全体をそのまま収納袋で持ってきているので、解体所まで通してくれませんか?」


グレイバイソンなんて強い魔物、子供が倒してきてたと言っても信じて貰えないのでぼかした言い方をすることにしました。


「なんか、泥のついた大きな牛の魔物なんですけど…」


それを聞くとあからさまに受付さんの表情が歪みまました。魔物についてもそうでしょうが、収納袋なんて高価な魔道具についてでしょう。


案内された解体所は想像以上に血生臭く、内蔵やら血やらで全体がピンク色に染まっています。収納袋から子牛が三匹と大人のグレイバイソンを取り出します。

ついでに倒した時には入っていなかった手紙があったので、確認します。


牛の死体入っててびっくりしたじゃあないか、確かに入るし衛生面も問題ないが、気分的にあまり良くないじゃないか!


……裏面にごめんなさいまたするかも、と書き綴って収納袋にしまいました。


さて、解体所の職員の方もギルドの職員の方も流石に驚いています。


「これ…まさか君が倒したとかじゃないよね?この死体はどうやったのかな」


「え、えーっと、薬草採取の為に森に入っていったんですけど、少し深くまで行ってしまって、沼地のそばに居たので……はい…」


事実しか言っていないので信じてもらうしかない。怪しがられたが三十分にも渡る説明のおかげで最終的には相手も分かって下さいました。…納得していない顔をしていますが。


これ程の大物は滅多に居らず、売却にも時間がかかるそうで、またギルドが確認できていなかった脅威を取り除いたという事で後日謝礼もあるそうです。

鑑定だけなら今日中に終わるとの事で、しばらくギルドの椅子に腰掛けて待つことにしました。

薬草採取分の銅貨を受け取り、少し嬉しくなって握りしめます。


すると、先日決勝戦で会ったキョウ人(仮定)の子とばったり出くわしました。森狼の牙と毛皮を担いでおり、私よりもランクの高い冒険者である事がわかりました。


「おま…エリザ様…どうしてこんなところに?」


「あぁ、私も登録だけはしていたので、たまには冒険するのも良いかなと。あぁ、改めて自己紹介でもしましょうか。エリザ・フォン・ロードランと申します」


「まだ名乗ってませんでした。すみません。俺はツカサ=クルゲと言います」


苗字があると言うことは、平民では無いはずです。しかし、彼の制服に太陽の紋章は縫い付けられていません。あ、でもそれはソルラヴィエ王国の習わしなので、キョウでは皆苗字ついているのでしょうか?


「すみません、キョウ国の方ですよね?キョウでは皆苗字を持っているものなのですか?」


気になったのでそのまま発言してみたのですが、ツカサさんかの表情が固まりました。


「え、皆ではありませんよ。まぁ、はい。俺はキョウ人です」


「あら!やっぱりそうだったんですね。良さそうな国ですよね。今度旅行しに行きたいものです。その時は案内を頼んでも?なんてね。留学ですか?」


「あぁ、まぁ、そんなところです」


会ったばかりの時は凄く敵意を向けられていた気がするのですが、しばらくそんな話をしていると居心地悪そうに苦笑いを浮かべるようになりました。


「あ、すみません。討伐の報告ですよね?私はしばらくここで待っているので、もし良ければ後でもう少し話しませんか。キョウのこと、知りたいので」


ツカサさんは若干考えてから、首を縦に振りました。その顔は不安と訝しみで引きつった顔をしています。私、変な事をしたでしょうか。そんなことは無いはず。となると、ツカサさんの方に何かあるのかも知れません。

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