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65ページ目、大会終了

開始の合図が発せられる瞬間、少年は弾かれたように距離を詰めす。抜かれた刀を私の刀で弾きましたが、再び刀を合わせられます。

10歳の少年とは思えぬ重い剣戟は、恐らく身体強化を使って底上げしているものでしょう。三回、四回と刀を弾いていると、痺れを切らしたのか少年が叫びました。


「八刀一閃!」


刃がきらりと光り、八つの斬撃が飛んできます。どういう物理法則なのかと聞きたくなりますが、さすがファンタジーの世界です。

内三つ程をいなしながら後方に飛んで避けます。そこから飛燕斬を飛ばし、その間に私から切り込みます。


「スラッシュ」


くるりと回りながら、当たった物を切り裂かんばかりの勢いで刀を薙ぎ払います。

相手はしのぎを削って受け流し、そのまま反撃しに来ます。


「二刀斬鉄」


二つの刃が横凪に空を斬ります。何とか躱しましたが、私の刀の端がそれに触れたようで、小さな破片を散らしました。

武器をへし折れるだけの威力があるようで、冷や汗が背中を流れました。

少年はその隙を逃がさず、貪欲に攻撃を続けます。それも、がむしゃらではなくいつだって反撃に対処できる際どい判断で。


あまり戦闘経験がない私でも、私のなんちゃって刀術なんかよりも技量があるとハッキリ分かります。

マイヤーさんよりも強いかと言われると、少し技に奢っている感じがしてそうでも無いように思いますが、それでもやはりやっかいです。

全身の力を身体強化で底上げし、真正面から攻撃を弾き返します。ここまで来るともはや単なる力でのゴリ押しです。

突然今までの何倍もの力で弾き返されたせいか、驚いた顔をしながら若干体幹が崩れたところに横凪を打ち込みます。

何とか踏ん張り体勢を戻しましたが、片足は境界の線を踏んでいます。私の刀を真正面から受け止めたのが運の尽き、力いっぱい押し切って、お相手さんは場外へよろめきました。


派手さに欠け、観客席からはまばらに拍手があるだけでした。しかし、押し出された子は納得のいかなそうに私を睨んでいました。



かくしてこちらは優勝が決しましたが、アメリアちゃんの方はあの後最後の一戦を落としてしまったそうです。

アメリアちゃんは悔しそうにも何かに怯えるようにも見える表情でした。


「でも最善は尽くしましたし、アメリアさんは一回も負けてないでしょう。」


そう言いましたが、アメリアちゃんは珍しく苦笑いを浮かべました。

そして、夏休みに一緒に来て欲しい所があると言い、その日は早々とベッドへ潜り込んでいきました。


あからさまに様子の怪しいアメリアちゃんに私は心配になり、その晩はずっとベッドの上を眺めていました。

時折アメリアちゃんが寝返りを打つのを見ながら、彼女の事情について思い馳せるのでした。

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