56ページ目、保健室にて
「いやぁ、腕を上げたね。それとも、少し本気を出したってところかい?全くあの人はデタラメな弟子を育てたもんだ。彼女は元気かい?」
保健室にいた学園医に回復魔法をかけてもらいながら、マイヤーさんはカンナさんの事を聞いてきました。
「さぁ、多分元気だと思いますよ。カンナさんは、私が入学して早々旅に出ちゃったので会っていませんが」
「なっ…そうだったのか。だがあの人なら1人でもやって行けるだろうな」
マイヤーさんが遠くを見つめるようにして、窓の外を眺めます。
回復魔法をかけ終わった学園医が大きなため息をつきました。
「はい、終わりましたよ。あのですね?マイヤー先生。目標を見せるのは良いですけど、模擬戦なら武技はともかく身体強化なんて使わないでくださいよ。その上、負けたんですか?あなたは教員ではありますが元王国騎士団副団長という誇りも持ってください。情けない…」
「ははは、すまない」
申し訳なさそうにマイヤーさんが笑いました。
けど私はマイヤーさんを尊敬に値する人物だと認めていますから、少しだけ心が曇りました。
「い、いえ、私が場外で負けてしまいました。その上、ただの模擬戦ではなく生徒達に学びあるものにしようと考えています。彼は、今は元王国騎士団副団長という称号よりも教員であることを優先した立派な先生です!」
フォローを入れるとマイヤーさんは驚いた顔を見せましたが、学園医は更に眉間の皺を深くしました。
「そうですか。あなたがエリザさんですか。入学試験で的を真っ二つにしたり、マイヤーさんをボコボコにしたのは見事ですけど、だからといって学内最強だとか思わないでくださいね。もし校則を破れば然るべき罰もありますから」
まさか私にまで飛び火してくるとは思いませんでした。力を持った者がそれを誇示するというのはよくある……かもしれませんが、それを恐れての事でしょうか。大人しく頷いておきます。
「さぁ、そろそろ戻らないと。ありがとう、ルシア。じゃあね」
「極力来ないでください。あと、生徒達もここに来ることの無いように注意していてくださいね」
ルシアというのは学園医さんの名前でしょうか。砕けた会話をしていますが、ひょっとして古くからの知り合いとかなのでしょうか。
ルシアさんとマイヤーさんの間柄をあれこれ想像しながら、再び校庭へと向かいました。
今回短めですみません。
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