45ページ目、試験
楽しい時間はすぐに過ぎると言いますが、まさにその通りで。
あっという間に王都に着きました。
平民達は元旦の2週間に試験を受け、1週間前には合否通知を受け取り次第王都へ向かうそうです。
対して貴族は必ず合格するので、元旦の3日前程度に試験を受け、元旦に入学式とスキル鑑定をするそうです。
じゃあ試験して何を決めるんだって聞きたくなりますけど……とりあえず入学式の翌日までは、カンナさんも一緒に居てくれるそうです。
今生の別れでは無いとはいえ、第二の親友と離れ離れになるというのも、悲しいものです。
試験は筆記テストと実技テストの2つがあるそうです。
実技は正直自信ありますし、筆記も読み書き計算が出来るので恐るるに足らず!
そう思っていました。
筆記が午前中、実技が午後です。
さて、筆記テストなんですけど、魔法陣の製作や詠唱を書け等がほとんどで「詠唱?ダサいぜ!」て笑っていたカンナさんと自分を殴り飛ばしたいです。
ほとんど空欄で、ファイアライトの詠唱だけ何となくうろ覚えで書いときましたが……これ、私が平民なら確実に落ちてましたね。
ちらっとアメリアちゃんの方を見ると、結構スラスラ解答しています。
そう言えば魔道具とか好きでしたからね。魔法はとても上手そうですよね。
さて、午後に実技を入れるという事はつまり……鬱憤を晴らせということじゃな?
とは言え恐らく、慢心でなければ私は魔法面において人並外れた能力があるはずです。
出来れば魔法が得意そうな人より少し強いくらいにして、筆記の点数分取り戻したいなと思います。
ま、いずれにせよ通るんですけどね。
実技テストは、筆記テストを受けた場所から結構離れ、障害物のない屋外で行われました。
四肢のないマネキンのような的が等間隔おきに立ち並んでいます。
さては、あの的を攻撃しろてきなやつですかね?
何人かは集まって「さっきのテストどうだった?」とお互いの出来を話し合っている子達もいます。
いいなぁ、私もアメリアちゃんに絡みに行こうかしら。
流石は異世界、青やら緑やら桃色やらと、地球では考えられないような髪色の子達が沢山いて少し目がチカチカします。
しかしながら、アメリアちゃんほど濃い赤色は珍しく、程なくして目標を発見することが出来ました。
私が近づいてくるのに気付くと、アメリアちゃんはドレスをつまみ小さくお辞儀をしました。
私も会釈を返し、微笑みました。
「アメリアさん、先程の筆記テスト、どうでしたか?」
「あんなの簡単すぎます。それに、どうせ受かるんだからあまり関係無いでしょ?」
「まぁ……そうですけどね。ちなみに先程の筆記テスト、恥ずかしながら私は―」
「負けませんから」
「あら?」
「筆記も、実技も、絶対に負けないんですから!」
アメリアちゃんがキッと鋭い緑の目で私を睨んできます。
何が、あったんでしょうね。
彼女の中の変化なのか、誰かに吹き込まれたか。
前者であって欲しいですね。それにしても、私なんかに勝って何がしたいんでしょう?
というか、アメリアちゃんの中の私って、もしかして魔法の詠唱や魔法陣にも詳しいんですかね?いや、いつもアメリアちゃんのお話に相づちを打っていたからそう勘違いされちゃったのかもしれませんが……。
その後少しだけお喋りをしていると、金髪の可愛らしい容姿の少年が話しかけてまいりました。
「やぁ、アメリア。君の噂はよく聞いているよ。君の噂が本当かは知らないけど、僕も魔法に関しては自信があるからね。お互い頑張ろう」
そう言って握手を求めるように手をつきだしている彼は、恐らくこの国の王子だったと思います。
元より名前を覚えるのが苦手な身。顔と肩書きを一致させることでやっとです。
対してアメリアちゃんはその手を取らず、深々と頭を下げました。
「私には……いえ、私はあなたより高みを目指します」
一瞬でしたが、アメリアちゃんが不機嫌そうに顔を歪めたのが見えました。
言葉も、相手をライバル視していそうでしていない絶妙な選び方です。
アメリアちゃんは彼が嫌いなんでしょうか?
王子はそうかい、と笑ってその場を後にしました。
「あの、噂って?」
「まぁ!私の事、眼中にすらないって事!?ふん!いいわ、私の取っておきの魔法で吠え面かかせてやりますわ」
「え?あの、」
どうしてそうなった、と聞こうと思った瞬間教員が集合をかけました。
まぁ、また今度じっくり話せばいいでしょう。とりあえず今は試験です。




