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42ページ目、まぁ、恐らく完治

幼い頃、本当に朧気ながら、高熱を出した際に点滴を受けさせて貰ったことがあった。

普段仕事ばかりだった父だが、その日はたまたま有給を取れたのだそうだ。

苦し過ぎて父の事などあまり見れていなかったが、病院までの車の中、父は一言も喋らなかった。


点滴は風邪薬なんかより圧倒的なまでに効果があり、数日はかかるかと覚悟していた寒気が僅か数時間で消し飛んだ。

あれには驚いたものだ。先程までの高熱が嘘のように体が元気になり、やはり健康体は素晴らしいと改めて思った時だった。

どうだったろうか。その時父は初めて口を開き「良かったな」と言ってくれたような気がする。

だが、もう随分と昔の事で、もはや父の顔すら思い出せない。






そんな事を思い出したのは、魔法陣のおかげでみるみるうちに体力が回復したからです。

1週間も経てば微熱は出てますが、もう1人で動き回っても大丈夫な程です。

嗚呼、健康って素晴らしい!

まぁ、1人で勝手に動くとサーシャさんに迷惑をかけそうですが……。

ただ、未だにあの竜と少女の夢を見ます。恐らくまだ治ってはいないのでしょう。


魔法陣とはなんぞや。そうカンナさんに尋ねたことがありました。

古代文字に魔力をのせ、意味を持った配置に並べることによって詠唱ありの大魔法よりも緻密で高度な魔法を実現することが出来る代物だそうです。

古代文字の読解はもちろん、魔法の原理から魔法哲学まで幅広く知識を持っていないと扱えないそうなので、いざ実践出来るとなると相当な術者なのだそうで。


そんな彼が教師をやっている事からも、ソルラヴィエ学園の教育水準は高いのだろうと推察できます。


話が脱線しましたが、これを何とか通常の魔法で再現できないかと試行錯誤をしておりました。


普通に考えて、自身の魔力を放出するだけの魔法なんて需要はないし、イメージ自体もかなり抽象的なので実現も難しく、行き詰まっています。




……ときたま人は、酷く狭い視点で物事を捉えてしまう事がありますよね。それは多分「決めつけ」が引き起こしてしまう事だと思います。

実際はすぐ手元にあったとしても、失くしてしまったと思えば途端に見えなくなります。

灯台もと暗しとは言い得て妙です。


サーシャさんが小首を傾げながら言ったそれは、普通に考えたら出てくるはずの事で、どうして出てこなかったのか分からないくらいでした。


「あの、私は魔法とか使えないので分かりませんが〜……索敵の魔法みたいに、常に発動し続けるものを使ってはいけないのですか〜?長時間の行使にはたくさん魔力を使うって聞いたのですがぁ……あ、でも、常に意識し続けるって無理なのか…」



「……あっ…それもそうですね。ありがとうございます、サーシャさん。出来そうです」


「えっ!?出来るんですか!」


「多分出来そうです。調べてみて、類似する魔法からオリジナルのを作ることになりそうですし……やはりカンナさんにも相談しなくちゃですね」



サーシャさんにお礼を言い、カンナさんの元へ駆け出しました。

以前と比べて、変わったなぁだの成長したなぁだのと思っていた自分を殴りつけたいものです。注意力散漫で気が付かないところは全く変わっていません。

駆け出したのは、あるいは自分の頭に昇った熱を誤魔化すためだったのでしょう。





* * * *





「おや、驚きましたね。もう大丈夫なようです。随分と早く治ったみたいですが、この様子だと魔法陣はもう描かなくても良さそうですね」


2週間ぶりに訪れた先生は微笑みながら言いました。


「元気になって良かったね。来年から君もソルラヴィエ学園の生徒になるだろうけど、それまでに何とかなって本当に良かった。待ってるよ」



結局、具体的にどんな病だったのか、どのくらいの期間魔法陣を背に生活をしなければいけなかったのかは分かりませんでした。

しかしながら、こうやって誤魔化せている以上もはや問題は解決したと言っても良いでしょう。

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