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33ページ目、魔道具店その2

王都には魔道具店がいくつかあるとはいえ、ほんとに何店舗があるだけなので全て回るくらいは簡単でした。

もちろん貴族をターゲットにした店もありますし、むしろそちらの方が本命でしたがあまり多くはないようで、少しガッカリです。

まぁ、それでも離れたところに散らばっているので体力的に子供に辛いですね。普段鍛えて無ければね!


魔道具店。特に貴族向けのこの魔道具店は大きなガラス窓から中の豪奢な魔道具が見えるような造りで、建物自体も二階建てで、見るからにお高くとまっています。

是非中を確認しなくては。

好奇心に背中を押されながらふらふらとその店にに入りました。


店内に入ると、綺麗な店内や凝った装飾のある魔道具や気品あるお客様達よりも早く、キツい香水の香りが鼻をつんざきました。

甘ったるく苦味のある、むせ返るような香りに顔を顰めました。


「なんですか、この臭い。私の鼻には合いませんね」


カンナさんを見上げ、そう言うと苦笑いが返ってきました。


「しー、あまり滅多なこと言っちゃあ行けませんよ。貴族の人たちはああいう香水を沢山振りまいてるの」


そういえば、何かで聞いた事があります。あまりお風呂に入らなかった中世では、体臭を誤魔化す為に香りの強い香水をかけていたとか。

なるほど、それですか。

客層が貴族だから、色んな人の香水が混ざりあって更に気持ちの悪い臭いになっているのでしょうか。


魔道具の方は、効果も然り見た目も良いものばかりです。とはいえ、当たり前のことですが新品ばかりでした。私は、あの金属のくすんだ感じが好きなのです。

なんというか、真っ白で綺麗な紙に描かれた宝の地図と、ボロボロで茶色く傷んだ紙に描かれた宝の地図くらい雰囲気的に差があります。

なら中古屋行けって話ですけどね。


鼻をつまみながら店内を散策していると、魔法を封じ込めてある魔道具の棚の前にアメリアちゃんが座り込んでいました。昨日の騎士さん達も一緒です。


カンナさんが手を振り、こちらに気づいたジークさんが頭を下げました。

ジークさん達が誰かに挨拶をしている事に気づいたアメリアちゃんは手に持っていた魔道具を棚に戻し、視線を上げました。


「こんにちは、アメリアさん。昨日は寝ちゃってたからなんにも付き合って上げれなくてすみませんね」


私を捉えた瞬間、先程まで純粋な少女の顔をしていたのが不機嫌そうに頬を膨らめます。


「なら今日1日一緒にいなさいよ!」


ジークさん達も少し申し訳無さそうに「お願いします」と呟きます。

もし今日も出会ったらこうなるかもとは思っていたのでカンナさんと顔を見合せ、頷きました。


「私は構いませんよ」


「ほんと!…あ、いえ、当然よ」


一瞬ですがアメリアちゃんの目が輝きます。

どうしてこんなにツンケンしてるんでしょうね。教育上の問題でしょうか?まだ6歳(まぁ明日で7歳ですが)なのですからもっと素直にしてても良いと思うんですがねぇ。


等と考えながら、アメリアちゃんに手を引かれるがままついて行きます。


どうやらアメリアちゃんは魔法が封じ込めてあるタイプの魔道具に興味があるらしく、せっかく王都に来たのだからと珍しい魔法を探していたようです。


どういう事に使うのか皆目検討もつきませんが、私が既に足を運んだ魔道具店も含め貴族向けの魔道具店を全て巡りました。

少々面倒でしたが、目を輝かせながら魔道具がどんな作りかだのこの魔法はどんな効果で術式がどうだのと語るアメリアちゃんを見ていると微笑ましくなり、あまり苦になりませんでした。

カンナさんは少し眠そうにしていましたけどね。


何か好きな事があって、それを存分に語れる事は良い事です。「なんか好きだから好き」だとか「みんな面白って言ってるし面白いじゃん?」程度の好きではこうも語れません。

昔同級生に何が面白いの?と尋ねて「面白いから」と返ってきた時には絶句しました。なんたって、そいつは私の通っていた進学校でも上位の成績を収めていたやつなんですよ?日本の未来は明るく無いなと思った瞬間でした。

ああ、話が逸れてしまいましたね。とにかく、無い語彙をふんだんに使って熱心に話しているアメリアちゃんはとても輝いていました。

こういうのは、相手が内容を理解しようがしまいが、当人が楽しいと感じているのですからそれを害さないように相槌を打ちながらいつまでもその話を聞いていました。


正直あまり話は聞いていませんでしたが、いくつか気に入った魔道具も見つけられたようで、別れる時にはアメリアちゃんは満面の笑みを浮かべていました。


それを見ているとなんだかこっちも嬉しくなってきて、つられて笑い返しました。


「え、あの話ずっと聞いてて楽しかったの?大丈夫?」


「かーっ、分かってませんねぇカンナさんは。あーゆーのは本人が楽しく語ってるんですから、向こうを快くしてあげようというのは人として当然じゃあないですか」


「へ、へぇ……なにそれ」


アメリアちゃんが見えなくなってから、カンナさんが引き気味に話しかけてきました。

私的には別段普通なのでよく分かりませんが、カンナさん的には奇行の類だったのでしょうか。

ちょっとやらかしたのかなと思いながら、苦笑いを返しました。


いよいよ翌日は誕生日会です。いつも通りにしていたら特に何も無いでしょうが、改めて自分の目で見るわけですから、胸が高まって仕方ありません。

アメリアちゃんはどんな服で出席するのでしょうか。

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