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29ページ目、王都のギルドへ

少し首が固くなったような、体が重いような、少し気持ちの悪い目覚めでした。


安心して眠れる久しぶりの屋内であったと言うことで、1週間の長旅の疲れが来たのでしょう。


うなじあたりの筋肉を自分でぐりぐりと揉みほぐしながら欠伸をしました。




朝の身支度を整え、地味で素朴な服に着替え、カンナさんと街へ踏み出しました。


ロードラン領の街も賑やかではありましたが、王都の街並みは輪をかけて明るいのです。


周囲から笑い声や客寄せの文句、果物の値段の交渉をしている声も聞こえます。

皆、早朝から活気に溢れていて、実に素晴らしい目をしておりました。


観光、とは言うものの、とりあえず今日は城下町の散策と、冒険者ギルドへの顔出し、それから魔道具なるアイテムを売買している店舗を見ていく手筈です。


不測の事態があれど、1日あればこれくらいの目標は達成できるでしょう。


まずはギルドです。これは、以前カンナさんがここのギルドマスターにお世話になったとの事で挨拶しに行きたいのと、ロードラン領では顔がバレているのでこちらのギルドで冒険者登録をこっそりしようという私の打算のためです。


朝イチでギルドに向かうのは、人が少ないからです。冒険者という生き物は朝に弱いのだそうです。朝からここにいる人は、昨日酔い潰れた者か、規則正しい生活を送る善良な者か、やる気に満ち溢れる若者くらいです。


荒くれ者が多いらしいので私の精神衛生上、カンナさんが朝から行こうと進言してくれたのです。


前回お父様と赴いた時のようなチンピラとかいるのかな、と不安になりましたがそれは杞憂でした。


ギルド内はあっけらかんとしており、4つあるカウンターの内、2つだけ開けて職員が欠伸をしておりました。


客が少ない時はそんなもんなんでしょうが、本当に人の気配が少ないのです。だだっ広い屋内に、ちらほらと数人たむろしているくらいなのです。


そんな中新しく扉を開いた私とカンナさんに視線が集まるのは当然の事でした。


私が少し気押されてカンナさんの後ろに隠れると「気にしなくてもいいよ」と彼女は微笑んでくれました。


カンナさんがすたすたとカウンターに歩いていき、私はその後ろを追いかけます。


さっき欠伸をしていた職員さんですが、客の前ではしっかりとした「仕事をしている顔」になっていました。



「本日はどのようなご要件ですか」


「今日はギルマスに挨拶したいと思って来たんだけど、まだ寝ているかな?」


「は?ギルマスですか……すみませんが冒険者プレートを確認させていただきますね」


「ん、ちょっと待ってね」


そう言い、懐から手のひらほどの長方形のプレートを取り出しました。銀色に輝くそのプレートには何やら名前と冒険者ランク等が載っているらしいのですが、カンナさんはそれの裏を相手に見せています。


その真意が分からず、きょとんとしていると職員が血相を変えて「し、失礼しました、今すぐ呼んできます!」と奥に消えて行きました。


「カンナさん、その裏に何か書いてあるのですか?」


見上げると、カンナさんは黙ったまま裏を見せてくれました。


銀色のプレートの裏は黒く光沢のある金属で、



序列8位 神威 カンナ



とだけ書いてありました。


更に疑問が湧くだけで全然解決しないモヤモヤが溜まって来ましたが「ま、後で話すよ」と小声で言われたのであまり大っぴらには言えないことなのかと押し黙ります。


しばらくして先程の職員さんが戻ってきまして、ギルマスの部屋まで案内されました。


以前お父様と行った部屋は接待用の豪華な部屋でしたが、今回は一冒険者ということでギルマスの仕事部屋でしょうか?何やら事務的な部屋です。

ギルマスと思われる無精髭の生えたおじさんが向かっている机には、うず高く何かの書類が積み上げられていました。


男は、こちらに気がつくとペンを止めて立ち上がりました。



「おお、よくぞ来てくれました。お久しぶりですな、カンナ殿」


「はい、お久しぶりです。覚えて下っていて嬉しい限りです」


「ご謙遜を。序列持ちを忘れるなんてありませんよ。して、どういうご要件かな?」


「あら?聞いてなかったかな?久しぶりに王都に寄ったから顔を出しておこうかなと思いまして。元気そうな顔が見れて良かったです」


「そういう事でしたか。そちらも元気そうで……」


元気そうでなにより、と言いかけてギルマスはどもりました。その視線はカンナさんの左腕にそそがれます。


「……ではなさそうですが恐らく体調的には元気でしょう」


「ははは、そうですね、概ね大丈夫です。長くは居られませんが、討伐系で厄介な依頼がありましたら受けましょうか?」



「ふむ……いや、今は大丈夫です。ありがとうございますね」



一通り会話が終わると、ギルマスがこちらに視線を向けました。



「…ところで、そちらのお子さんは?」

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