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25ページ目、アメリアとの邂逅

そう言われて、初めて彼女の顔が見覚えのあるものだと気づきました。


赤いさらさらとしたロングヘアとエメラルド色の目がギラギラと光っています。


誕生会の時、隅に座らされていた私を、精巧な人形と勘違いしておままごとをやっていた少女です。

別段私はそれについて不快に思っていませんでしたが(といっても当時の私に感情は無かったんですけどね)記憶として思い出すと不思議な子だと思っていました。



子爵というと、確かうちより爵位は下でしたでしょうか。騎士達は顔を真っ青にしながら頭を下げます


「申し訳ございません!まさかロードラン侯爵令嬢とは思いもよらず、無礼を重ねてしまいました!皆、このような状況では警戒するしかなったのです。どうかその寛容なお心でお許しください」


「あ、いえ、大丈夫ですよ。むしろ警戒を疎かにしない姿は尊敬に値します。素晴らしいと思います」


そう聞くと、顔の表情を緩めましたが、すぐに申し訳なさそうに顔を顰めました。


「あの、一応確認のため、その紋章を近くで見せてもらってもよろしいでしょうか」


「ああ、そうですよね、偽物かも知れませんよね。どうぞ」


騎士達が3人とも近づいて、私の胸に下がっているロードランの紋章を見つめます。

視線が集まり、少し恥ずかしい気分になり「もうよろしいでしょうか」と聞くと、納得したように離れてくれました。


「ところで、あの、エリザ様はどうしてこんな所におひとりで?護衛や馬車も近くには見受けられませんが」


「はい、向こうに私の馬車が止めてあります。ここで馬車がトラブルを起こしているように見えたので、走ってまりました。私の護衛もそちらにいますので……」


先方の馬車を見やると御者は逃げ出し、車輪も壊れています。これでは動かすことは難しそうです。


「旅は道連れ世は情けと言いますし、私の乗ってきた馬車に乗っていきませんか?」


「よろしいのですか!願ってもない。誠に感謝申し上げます。アメリア様もそれで宜しいですか?」


アメリアと呼ばれた少女はふん!と鼻を鳴らし、私のお人形さんだもの当たり前でしょ、と言いました。








リーダーと思しき騎士さんは随分とお喋りでしたが、終始自嘲気味でした。

そりゃ貴族の護衛なのに、他の貴族の、しかも6歳の少女に助けられたとあっては面目丸潰れですからね。

普通は6歳って言ったら目の前のハルメア令嬢のような幼い言動を取りますし、まして戦闘能力はあまりないはずです。

少し気味悪がられそうなので、次からは普通を装うことにしますかね。

ハルメア令嬢の言動を真似てみましょうか。


さて、私とその騎士が話している間、彼女はずっとムスッとしていました。

なにか機嫌を悪くするようなことを言ったでしょうか。笑いかけてあげると、いっそう眉を歪めます。

一体どうしたのでしょう。


ともかく、1人は気を失ったままですが他の騎士に背負われ、6人で元の馬車の所まで戻ってくると、申し訳なさそうな顔をした御者さんの隣にカンナさんが仁王立ちしていました。


「あのねぇ、勝手に動かないでくれる?せめて私を起こしてからにしなさいよ。もしエリザに何かあって大目玉食らうのは私なんだからね」


「うぅ…ごめんなさい。気持ちよさそうに寝てましたし、いち早く確認しに行きたかったので…」


さすがに、私もなんで1人で動いてしまったのかと反省します。

何を血迷ったかと言うような変な行動を取ってしまうのは前世からの癖です。死んでも治らなかったので大目に見て欲しいものです。

ついてきた騎士達は、侯爵の娘たる私が一護衛に説教されているという光景に困惑しつつもフォローを入れてくれました。


「お話の途中失礼します。私達は盗賊団に襲われている最中、エリザ様に助けていただいた、ハルメア子爵の御息女とその護衛でございます。エリザ様は私達を助けたい一心で駆けつけてくださいました。どうかあまり叱ってやらないでください」


騎士さんナイスです!心の中でグッジョブとハンドサインを送ります。

カンナさんもそこまでは怒っていなかったのか、すぐ矛を収めてくれました。


「―――なるほど。大体は分かりました。つまり、王都まであなた達も一緒になるという事ですか。幸い、こちらは私とエリザ――様だけですので広さは何とかなると思います。御者さん、あなたもそれで大丈夫ですか?」


「はぁ…まぁ追加で料金を頂けるならそれでも構いません」


「分かった。払いましょう。お願いします」


騎士さんの方からカンナさんに先程のことを説明してもらいました。これまで彼らを乗せてきた御者さんには少し悪いですが、支払いはこちらの御者さんにされるそうです。

話している間、もしかしてと思い微動だにしていなかったら、ハルメア令嬢が寄ってきて私をつついてきました。


「あなた、人形なの?人形じゃないの?わたしのお人形のくせにジークよりも強いとか聞いてないわ。それに喋るなんて…なんなのよ!前まではなんにも喋らなかったのに!」


ジークというのは騎士4人のうちの誰かだろうか。

というか、やはり私の事を人形だと思っていたようで、それが実はちゃんと人間だったのが不服だったんでしょう。

誕生会は人が沢山いますが、そんな中会場の隅の私のところまで来るということはあまり人付き合いが苦手なのかもしれないと見当をつけたのです。


当たらずとも遠からずじゃないでしょうか。


不機嫌だった理由が分かれば少し安心します。

そういえば私はまだ彼女の名前を知りません。これを機に聞いてました。


「貴方のお名前は?」


突然話しかけられて驚いたのか、少女はビクッと肩を震わせて少し離れました。


「……アメリアよ」


「私はエリザです。よろしくね、アメリアさん」


にっこりと微笑みながら私も名乗り返すと、アメリアと名乗った少女は顔を赤くしながらも不機嫌そうに、ふん!と鼻を鳴らしました。

ポッキーの日ですね。皆様いかがお過ごしですか?(ポッキー食べてますか的な意味で)

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