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23ページ目、平和な馬車旅

最初こそ広がる自然に心を奪われていましたが、ずっと同じような景色ばかりでさすがに飽きてまいりました。


しばらくすると退屈を紛らわせる為か、御者の方が話しかけてきました。


「噂は聞いていましたが、まさかこの目で実感できるとは思いませんでしたよ、エリザ様。呪いが治ったようで、本当によかったです」


お父様は私の呪いの事は進んで広めようとはしませんでした。ですが、人の口に戸は立てられないと言いますし、いつしか周知の事実になっていたようです。

ありがとうございます、とだけ答え、しばらく沈黙が続きました。

なにか話題を振ろうと思いカンナさんを見ると、腕を膝に置き、頭を垂らして居眠りをしています。

結構揺れるのにこんな所で寝れるとは、伊達に10年もこちらで生きていないんだな…

またしばらくしてから、御者の方が話しかけてくれました。


「いや、去年は護衛の方を5人くらいと執事のトマスさんでしたっけ?の6人くらいいましたよね。今年は1人だけですが、そのキョウ人、大丈夫なんですか?」


それは私への心配もあるだろうが、護衛が少ないという事は御者の人も危険に晒されるという不安もあるのでしょう。

確かに去年は護衛の冒険者を4人くらい雇っていました。もう1人はお父様の信頼出来る人のようで、一体どういう立場の人かは知りません。トマスさんは我が家で働いている執事で、その方とも親しげに話していたのを覚えています。

あの頃は、馬車の中では私は空気も同然のようでしたね。仕方ありませんけど。


「大丈夫ですよ、カンナさんはとても腕がたちます。お父様も信頼していますし、私の友達でもあります。心配入りません!」


そう言ったものの、今まで何も知らなかった小娘の「安心してください」なんてあまり当てに出来ませんよね。

御者の人も「はぁ、なら大丈夫ですかね」とは言ったものの、その声はどこか不安そうでした。


ですが、安全な道を通っているので魔物もほとんどやって来ず、カンナさんはずっと居眠りをしたまま一日が過ぎました。



夜になると、カンナさんが周囲に結界を張ってくれました。

その上、土魔法で溝を作り、水魔法で温水を出して簡易的にお風呂まで作ってくれました。

お風呂から上がると、いつぞやの「サンライズ」を弱めた光魔法が浮いており、周囲の明るさを確保しつつお風呂上がりの体を冷やさないようにしてくれました。

保存食もカンナさんが振舞ってくれ、昼間ずっと寝ていたのが嘘みたいに優秀です。

目を輝かせているとカンナさんが苦笑いを浮かべました。


「あー、いや、夜の番をするために昼間寝てただけだからね。そんなに凄くないよ。私が欲しい最低限の環境を整えただけだし」


「まぁ!そういうことでしたか。でも、とても快適ですし、すごいです!ありがとうございますね」


「えぇ、魔導士でしたか。それにしてもこんなに手際よく結界を張ったり、暖を兼ねた『ライト』を行使したり、ましてや天然を思わせるような温泉まで作ってくださるとは。今まで色んな魔導士の方を見てきましたがこれ程安定した魔法を使う方は初めて見ましたよ!」


御者の方も尊敬の念を込めてカンナさんを見ています。やはり、カンナさんって器用なんですね。

当面の目標を「カンナさんを追い越す!」に設定してその日は眠りにつきました。


その後何事もなく、順調に6日が過ぎていきました。

翌日の昼くらいには王都に着くでしょうか。


そんな平和な馬車旅の最中、外を眺めていると不穏なものが見えました。

同じく馬車のようなものが止まっており、人が何人か集まっているようです。


「すみません、少し馬車を止めてもらっても構いませんか?」


「へっ?ああ、はい、大丈夫ですよ。どうなさいました?」


「いや、ちょっと遠すぎてよく見えないんですけど、なにか向こうの方で馬車がトラブルを起こしているような……」


私の指さした方を御者の方も目を細めて見ましたが「エリザ様は目が良いのですね、あっしには黒い点にしか見えませんよ」と首を振った。


確かに、何でもなくて、ただ休憩しているだけかもしれませんが、なにか引っ掛かりを覚え、気になって仕方なくなってきました。


「本当に申し訳ないのですが少し見てきます」


「あ、おい!ちょっと!」


ぱっと馬車から飛び降り、一直線に向こうに駆け出しました。こんな時、動きやすい服を選んできて良かったなーと思ったりしますね。

自分でも驚く程体力と脚力がついていて、あっという間に私の乗っていた馬車が遠くなっていきました。


剣のぶつかり合う音が聞こえ、スピードを緩めます。


騎士のような鎖帷子と胸当てをつけた男が3人、布でできた薄汚れた服を着た男が8人交戦しています。


鎖帷子の男が1人倒れており、馬車を守るように3人が立ち、汚れた服を着た男達はそれを取り囲むようににじり寄っています。


盗賊というものでしょう。そう判断し、騎士達の援護に向かいました。


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