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22ページ目、王都へ

結局見本も見せてもらいながら、飛燕斬が成功したのは3日目のことでした。


ひゅんと素早く空を斬るような音と共に空気が歪み、遠くにあった木の幹に切り傷がつきました。


「おー!やりましたよ!」


嬉しくてその場で何回か跳ねていますと、カンナさんも頷きながら褒めてくれました。


「少し遅かったけど、まぁ良し。次は、これを何度も繰り返して威力を調節したり、アレンジしてみたりしようか。例えば――」


そう言い、カンナさんは刀を鞘から振り抜きました。

すると、先程の透明な斬撃ではなく、雷を纏ったものが「の」の字に辺りの草を切り払いながら地面を抉り、消えていきました。


「こうやって、軌道を曲げたり、魔法を纏わせたりできる」


凄い!

自然と私は拍手をしていました。

カンナさんは得意げに胸を張りましたが「まぁ練習したらエリザも出来ると思うよ」と言いました。




武技の練習をし始めて数週間後、年の終わりが近づいてきました。

この世界では1月(にあたる月)は春先から始まります。

そして、奇妙な事に年齢の数え方が、1月になったら誕生日は関係なく1つ歳をとるというものでした。

つまりは、7歳が近づいてきたのです。


貴族社会では、王都で誕生パーティが開かれます。1年に1度、5歳〜9歳の同年代の子供が集まります。

これは、10歳になると学園に通わなくては行けない子供達の事前の顔合わせの場所、という事もあるそうです。


(エリザ)の記憶にも5歳と6歳の時の記憶がありますが、当時の私は意識がなく、微動だにしていなかったので隅の椅子に座らされていました。

だからあんまりどんな空気なのか知らないのです。

私を人形に見立ててままごとを楽しむ女の子が集まってきたりもしていましたが。


初めての社交の場。緊張しないわけがありません。


王都へは馬車で1週間程かかるので、少し早めに着くために今日から旅支度を始めます。


動きやすいお気に入りのワンピースを何着かと、当日で着ることになる、お洒落な青色のドレスをカバンに詰め込みます。

その他、櫛やらネックレスやら、変わると寝られないので枕も持っていくことにしました。


気分はさながら修学旅行。

友達もいなかった私的には、1人でも修学旅行気分を味わえるのです。

とはいえ護衛としてカンナさんがついてくるそうですので、いつも以上に楽しめそうです。


明日はいよいよ馬車での旅が始まります。ロードラン領を出るのは(私の気分的に)初めてで、とてもワクワクしています。


うまく眠れるか心配になりながらも布団に潜り込みました。







小鳥のさえずりが遠くから聞こえ、麗らかな陽光が朝の来たことを告げます。

なんと素晴らしい朝でしょう!


早朝の冷ややかな空気を吸い込み、両腕を上に突き出してうんと背伸びをしました。

眠っていた体が縦に伸ばされ、力を抜くと落ち着いた気分が戻ってきます。


とはいえ布団の外は少し肌寒く、床に足の裏をつけると少しひんやりとしています。


顔を洗うと指先は冷たくなったので、息をふきかけて温めました。

初めての馬車旅。動きやすいように、丈が短めで質素なデザインの黄色いドレスを着ました。

帽子はあまり好きじゃないのでまだ被りません。


お父様と食事を終え、3週間ほど別れる事を互いに惜しみました。


カンナさんはお父様から「娘を任せたぞ」と強く言い聞かされていました。


カンナさんと屋敷の人数人とお父様を連れ、街の外れにある馬車の乗り場までやって来ました。


その場で、カンナさんと私は馬車に乗り込み、他の人は別れました。


「行ってきま〜す!」


馬車の窓から身を乗り出し大きくてを振るとお父様だけでなく屋敷の使用人さん達も手を振り返してくれました。


馬車の中に戻ると「慕われてるねぇ」とカンナさんがニヤついていました。


「ふふん、あたり前田のクラッカーよ」


等と胸を反らしてドヤ顔を決めてちましたが、引き気味に「あ、はい」と言われて心に深く傷を負いました。

いつか返してやりますよ。


街からしばらく離れると、豊かな自然が目に入ってきます。

地平線が見えようかというくらいに草原が広がり、遠くにちらほらと森のようなものが見えたり、近くを流れる川の綺麗な事と言ったら実に風光明媚でした。


馬車は揺れが結構あり、座るところも固いので乗り心地は悪かったのですが、外の風景を見ているとそれすらも忘れられました。

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