表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/92

15ページ目、前世も含め、人生初のお泊まり会

「君は、その……エリザなのか?それとも日本人なのか?それはただの前世の記憶に過ぎないのではないか」


そのような事を聞かれた時、はっとしました。


「あ、ぇ…どうかしら。今言われるまで意識していませんでした。エリザに自我が無かったので、てっきり私は私のままだと思っていましたが、言われてみれば前世の私は記憶という形でしか残っていませんね」


その時「あなたにはどちらに見えますか?」と尋ねるべきだったかなと後悔しました。

私がどんな人間かなんて、私が決める事じゃなく周りが判断するものだ。


私は、エリザとしてこの世界やお父様に愛着がある。

そして、宮原風音として、前世に愛着が………うーむ……未練はあるけど……。


とはいえエリザの体に感化された宮原風音が主人格だと言った方がいいのかなぁ。まぁ、私は私だしいっか。


自分が何者かなんて聞かれても、見ての通りですとしか答えられませんしね。


カンナさんもその答えに納得はしてないけれど、私と同じくまぁいいかと楽観的に捉えてくれたようです。


そして、カンナさんから面白いお誘いがありました。


「いやぁ、話したい事が山ほどある。今夜、私の部屋で何か食べ物でも買ってきたりして『悪い子』してみないかい?」


それ即ち、お泊まり会である。と言っても私の屋敷の中なのでお泊まり会になりうるかは知りませんが。


まぁ、気分の問題ですよ!


前世ではそれっぽい事など1度もしたことがありません。その誘いはとても魅力的です。私の心を強く動かしました。

あぁ、でもお父様が知ったら何しでかすかわかったもんじゃないし、夜中に食べ物を食べるなんてぇ……


「……分かりました。」


私は思ったよりも「青春」という虚像に強い憧れを持っていたようです。






かくして、お父様がおやすみなさいのキスをしてくれてからしばらく後、私は枕を持ってこっそりと自室を抜け出し、カンナさんの泊まっている部屋まで小走りに廊下を進みました。


しっかりとした木の床は、私くらいの軽さであればあまり軋みませんでした。


別の部屋を訪ねに行くだけなのに、やけにワクワクしています。

暗い廊下に不気味さは無く、お楽しみの前の静けさが広がっていました。


カンナさんの部屋の前まで来ると、小さくコンコンコンと3回ノックしました。


扉の向こうから小さな声が短く聞こえます。


「山」


「川」


私も息を潜めて答えると、扉が開きました。


さっとその隙間に入り込み、扉をゆっくりと閉めると、カンナさんが失笑していました。


「やぁやぁ、よく来たね」


「えぇ、私もその……お泊まり会的なものは初めてなのでとてもワクワクしています!」


ニヤニヤが抑えられず、少し声が上ずってしまいました。カンナさんも「こういうのは久しぶりだから、少しドキドキするよ」と笑っています。


環奈さんの部屋の床は大きな敷物が敷いてあり、その上には街で買ってきたと思われるお菓子が山を作っていました。


「さて、改めて自己紹介。私の名前は……ええっと、立花!そう、立花環奈。いやぁ、10年てのは長いね、一瞬思い出せなくて焦ったよ。君の名前も聞いていいかな?」


「宮原風音。風の音と書いて風音です」


それを聞くと少し間の抜けた顔をして「あれ?」と言いました。


「男子だったのか。いや、すまないね。随分と可愛らしい見た目をしていたし、特に違和感もなかったから女子かと思っていた」


「はぁ、まぁ。いや、確かに男子でしたが男じゃなくて、なんて言うか、あれ?10年前ってこの事知ってるのかなぁ」


まごつきました。そもそも気づかなかったらそのまま誤魔化そうと思っていたところを突かれてしまいました。


疑問そうに首を傾げるカンナさんだが、話せば分かってくれる。そう決心しました。


「私のいた時代ではトランスジェンダーと呼ばれる存在で、体の性別と心の性別が違うってやつです。少数でありますし、表面上は女性っぽい事をしたがる気色悪い男だとか、男色等と侮蔑的な目を向けられました。今の私は、女の子の体で、心も女の子だと言う状態でしょうか。だから、まぁ普通に今まで通り接してもらって構いませんよ」


説明している間、昔の頃の記憶が思い出され、声に怒気が混ざるのを感じました。


なんで可愛い服を着たらいじめられるのか分からなかった。子供の頃は、自分しか見えていなかった。

周りから見れば、なるほど気持ち悪かったんだろう。

今でも思い出せるいじめっ子の顔。

最後に見たのはいつかだったかの帰りの電車。

幸せそうに友達と群れ、彼女を侍らせ騒いでいた。何の話をしていたかまでは聞かなかったが、大声であったのと、彼の笑顔を見ると、私のなど忘れて幸せそうにしているのがどうしても許せなくなった。

腹が立てども、私は物を大切にする主義なので物にも当たれず、苛立ちは奥歯で噛み潰したものだった。


「あ、いや、すみませんね、あまり面白くないし、下らない話だ。忘れてくだ――」


「私の父は、聴覚障がい者だった」


カンナさんは私の言葉を遮った。彼女の黒い眼は私の顔を、いや、心を見つめていた。

お恥ずかしい話ですが、私スマホから投稿をしていまして、通信制限に引っかかりそうなので今月は投稿出来ません。誠に自分勝手なことですみません。

また、来月お会いしましょー

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ