sideカンナ4
マイヤーさんはよく模擬戦を申し込んできたり、色んなことを相談してきたりした。とても活発な人間で、コミュ力の高いやつだなぁと思った。
私も彼と随分と打ち解けてきたので折を見てエリザ嬢のことを尋ねてみることにした。
「マイヤーさん、突然お呼び立てして申し訳ないです。気になっていることがございまして、是非あなたの意見も聞いておこうと思いこうしているところです」
「はい、私に出来ることがあれば喜んでお聞きしましょう」
「エリザ嬢のことについてですが……」
そう言うと彼は整った眉を一瞬、崩した。
「ロウダ様から呪いの話は聞いています。だとすると、エリザ嬢の異常な成長速度や知識量の多さが気になってきます。マイヤーさんも身をもって感じたと思いますが、おおよそ子供だと思えない戦闘技術だ。それに、誰に仕込まれた訳でもないらしいのにあの丁寧な言葉と態度。違和感を覚えませんか?」
それを聞くと彼は「なるほど」と頷いた。
「たしかにエリザ様は子供にしては、いえ、騎士団の者比べても圧倒的に強いですが、それは彼女の才能だと思っております。私も何人か貴族の御子息や御息女に剣を教えてきましたが、エリザ様ほどの方は見た事がありません。しかし、神童と呼ばれる方々もいるのです。彼らは非常に強い力を持っている。エリザ様もまた、彼等のようなものだと私は見ています」
「他にどう説明するのです?」と彼は肩を竦めた。たしかに説明がつかない。こんな事をこれ以上考えるのは無駄な事だろうか。
私としても彼女の事を気に入っている。天真爛漫な彼女はおおよそ邪悪には見えない。
だが、それ故にこの「おかしさ」が気になって仕方がないのだ。
最初に着物の事を「和服」と言ったこと、刀について説明もそこそこに直ぐに慣れたこと、キョウの文化に強い興味を示すこと、私のよく使う箸を別に作ってやると簡単に使いこなした事。
もしかすると。もしかすると―――そんな妄想をしてしまう。
だが、彼女は正真正銘ロードラン家に産まれたこの世界の住民。
決して私の妄想している様なことはないだろう。そう自分に言い聞かせた。
輪廻転生という言葉が頭をよぎる。前世の記憶か?
もしかすると………
冬が来た。
私は冬が好きだった。
ロードラン領は四季に富んでおり、程よい冷え込みは日本の冬を彷彿とさせた。
私が風を引いて寝込んでいた時も冬だったか。
そんなある日、「もしかすると」が現実のものになった。
果たして私が異世界に飛ばされた理由は、彼女に関係することだったのではないだろうか。




