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sideマイヤー1

剣術指南役、マイヤーさんの視点です。1話か2話くらいにまとめようと思いましたが、出来なかったので暫くはマイヤー視点です。

マイヤー視点の直後はカンナ視点に移り変わりますので、主人公に視点が戻るのはまた後ほどになります

尊敬するロウダ卿が、娘の剣術の教師を求めていると聞き、私は即座にロードランに向かった。


ロウダ様は6年前に現れた強大な魔物グラウンドドラゴンの討伐にもっとも貢献なさった方だ。


侯爵という爵位を持ちながらも、民のために前線に立つそのお姿はまさに戦帝といった風貌であった。


戦場の者を常に鼓舞し、時に庇い、おおよそ貴族と思えぬくらい明るく豪快な方であった。


そんなロウダ様だが、討伐後に妻を亡くされた。そのショックで塞ぎ込んでしまったと聞いた時は、真っ先に駆けつけたかったが王国騎士団の副団長という地位が邪魔をして碌に見舞いにすら行けなかった。


そして、4年後。何やら娘にもロウダ様の妻を屠った呪いが受け継がれていると噂が立ち始めた。

どうやら自らは喋りも動きもしない人形のようだとか、本当は娘すら居なくて腕の良い職人に少女の人形を作ってもらったのでは?だとかいろいろな話が貴族の間で囁かれるようになった。

ロウダ様が今どうしているのか。元気であってほしいと願った。


それからしばらくして、私はもっと色んな経験をして何か新しい事をしようと思い騎士団を辞任した。


そして、ロウダ様の依頼を冒険者ギルドを通して知った。


剣の腕には自信があった。魔法はからっきしだが、それでも冒険者で言うとBランクは固くないと自負している。


団長のように卓越した技量がある訳では無いが、王国剣術については誰よりも理解していると思う。


お役に立てるだろうかという、不安と希望が入り交じっていた。


だが、御令嬢の噂もかねがね、少しビクビクしていた。それでも在りし日のロウダ様を思い浮かべ、ロードラン領に赴いた。


街は昔よりも賑わっていた。皆幸せそうに街を行き交い、いい街だと思った。


ロウダ様の御屋敷の扉を叩くと、直ぐに扉が開いた。


私はてっきり執事が出迎えるものと思っていた。普通はそうだろう。


開かれた扉の向こう側に人は居らず、私はぎょっとした。

すると下の方から鈴の転がるような声が聞こえた。


「どちら様?」


視線を下ろすと小首を傾げた可愛らしい少女がいた。白色のドレスを着ていたが、飾り気がなく、丈も短い。動きやすそうなその服は、確かに庶民ではありえないが貴族の服にも思えない。

だが、一切汚れのない整った顔は上品な雰囲気を醸し出していた。

ピンと来た。

彼女がロウダ様の御息女だろうか。噂とは随分違うでは無いか。


自分の足で立ち、ちゃんと喋っているでは無いか。

噂とは得てしてそういう不確かなものだ。だとすれば、ロウダ様も元気でやっているのではないだろうか。

私はできる限り優しい口調で言った。


「私はマイヤー申す者です。ここへは、御息女の剣術指南役として推薦されて参りました。どなたか家の者は居ませんでしょうか」


それを聞くと顔をぱっと明るくし、両の手の平を胸の前でぱちりと合わせました。


「まぁ、あなたが―――」


言いかけたところで執事と思われる男性とメイドが慌てた様子で足早にやって来ました。

そのまま彼女はメイドに連れられ奥に向かっていった。


「いや、申し訳ありません。事情がありまして、あまり強く縛らぬように旦那様から言われているものでして」


やって来た執事は深々と頭を下げた。


「先程のが、ロウダ様の御息女で?」


「えぇ。立ち話もなんでしょう。奥へどうぞ」




客間で待っているとロウダ様と先程の少女が入ってきた。


ただ、ロウダ様を見るとあの時の感動が思い出され、挨拶も少し興奮気味になってしまったのはいけなかった。

少女―――エリザ様の顔を見ると、笑顔ではあったがどことなく引いたところから見ているというか、生暖かい目で見守られている感覚を覚え、少し恥ずかしくなった。


私が到着するまで、魔法の教師として先に着いていた糸目のキョウ人が刀を教えていたようで、自分の立場が早速危うくなったようで少し不快だった。


キョウ人はカンナと名乗り、どうやら腕の良い冒険者のようだが、魔法の教師だそうなので刀は聞きかじりだろうか。


刀とは、キョウ国では最もポピュラーな武器だ。キョウ版の剣だという認識だが、正式な王国剣術に重きを置く私にとってみれば全く別の武器だ。


剣の指南役として呼ばれたからには変な癖が着いていないか注意しようではないか。


結論から言うと、やはり癖は着いていたがそれは刀を扱う上で必要なものであり、王国剣術を教えると、すんなりとその通りの型になった。子供というのは物覚えが早く、柔軟だ。こういう時は非常に楽だと思った。



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