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13ページ目、剣術指南役マイヤーさん

少し自分語り……もとい自分(エリザ)語りになるが、この体はすこぶる調子が良い。

まだ幼いからなのか、教えられた事はすんなりと身に入る。直ぐに慣れる。自分の動こうとした動きを忠実にこなしてくれる。

私は元よりゲーマーだったので、まさにゲームのキャラをプレイしているような感覚で自分を動かせられるのだ。

キャラ育成というのも好きで、1度マイブームが来ると育て上げるまでは熱中した。

エリザの体をゲームのアバターに例えるのは不謹慎かもしれないが、とにかくアバターの育成をしているような感覚で魔法や剣術をどんどん学んだし、学ぶ意欲もあった。

ゲームに限らず、私が趣味でやっていたことについては弱点や改善点を見つけ、そのうえで解決方法やアドバイスを導き出すは得意だった。ただし、第三者として。

そこが自分の上手く生きれなかった要因にも思えたが、現状のように少し俯瞰した立場から物事を見ると、視野は広がった。




さて、剣術指南役はマイヤーさんという、爽やかな男性でした。彫りの深い整った顔立ちと、王国騎士団の元副団長という何ともモテそうな人です。

まぁ、私の感覚でいうと、彫りの深い顔は苦手なのであんまりトキメキはしませんが。

客間で待っていたマイヤーさんは、私達が入るなり顔を明るくし、真っ先にお父様に挨拶をしました。



「ロウダ卿、お久しぶりです!6年ぶりでございますね。あれから噂は聞いておりましたが、私がこうして呼ばれたということは、御息女はお元気なのですね!」


「あぁ、ありがとう。すまないね、わざわざ来てもらって」


お父様を見るマイヤーさんの目は、物語の英雄に憧れる少年のように輝いていました。


「いえ、命の恩人であり、ロードランの英雄の御息女の剣術指南役を任されるとは我が人生でも一二を争う誉れ!喜んで馳せ参じました!」


後で聞いたのですが、マイヤーさんもグラウンドドラゴン討伐戦に参加しており、危険なところをお父様に庇ってもらった事があるそうです。

どおりで、テンションが高めなんですね。

マイヤーさん自身、物語に出てきそうな薄い綺麗な金髪に、海の煌めきを思わせるような碧眼です。

その目を更に輝かせてお父様を見るので、とてもキラキラしていてもはや鬱陶しいくらい眩しいというか、お父様もたじたじでした。


彼は王国騎士団副団長という事もあり、正統な王国の剣術を教えてくれました。

カンナさんやお父様よりも教え方が丁寧で、何より型を大切にしておりました。

ですからカンナさんから教わった剣術の癖が気になったり、私の使う刀について眉を顰めました。

確かに彼の剣筋は美しく、相手との読み合いを得意としていました。

まさに騎士団副団長を担うに相応しい人物であります。


……が。冒頭に戻ります。

正直カンナさんやお父様に比べると、正直だいぶ弱くて拍子抜けしました。



マイヤーさんが来てから1週間後、模擬戦をする事になりました。

お父様だけでなく、何故かカンナさんも見に来て「マイヤーは本気出さねぇと負けるかもよ?」と煽り立てます。

何を言ってるんでしょうか。副団長ですよ?グラウンドドラゴン討伐戦にも赴いた精鋭ですよね?

お父様に煽られたこともあり「ほう、それ程ですか」等と本気になっています。

あなたも大人気ないなぁ…手を抜かない精神は立派ですが、こちとら6歳ですよ?いや、そろそろ7歳ですか。



さて、マイヤーさんと私は向かい合い、お父様の合図を待ちます。

マイヤーさんはしっかり私の刀を見つめ、私もマイヤーさんの長剣を見据えます。

もちろん2本とも刃の潰した木剣です。


「始め!」


お父様の声が響きましたが、両者とも動きません。

マイヤーさんは仮にも騎士。どちらかと言うと守りや迎撃が得意なようです。

とはいえ、こちらも攻めるには力不足な気がします。

私は小さいのでマイヤーさんも腰を深く落として構えています。

このままでジリ貧ですので、こちらから仕掛けることにしました。


えいやとわざとらしく刀を振りかぶります。

マイヤーさんの目に困惑と余裕と疑念の色が見受けられます。

マイヤーさんは素早く剣を横薙に、私の刀に叩きつけようとしました。マイヤーさんは、敵の得物を弾いて身を守り、軸を崩した時に攻めるような戦い方が得意だそうです。

ならわざわざ弾かれるまでもないです。

剣が十字に交わった時、そのまま力を抜いて受け流し、ぐっと姿勢を低くします。

するとマイヤーさんの剣をどうということはなく後ろに振り抜かれ、簡単に懐に潜り込めました。

その勢いのまま脛を撃ち抜いて回り込み、呻くマイヤーさんの背中から脇腹を切り上げます。


「参った」


マイヤーさんがそう言い、勝負が決着しました。


「刀は切れ味が普通の剣とは違う。もし、本物だったらエリザ嬢の今の一撃で致命傷になっていたでしょう」


あっさりと勝てて私は困惑しました。いや、相手が舐めてくれていたのでしょう。いくら何でも騎士団の副団長が6歳相手となれば流石に手加減をするでしょうからね。

まさか……まさか……ね……

しかし、手を抜かれていたとしても、カンナさんと比べてしまうと動きが悪かったように思います。もしかしなくてもカンナさんって、めちゃくちゃ強いのでは?という疑念が頭をもたげましたが、私の慢心に繋がりそうなので考えることを中断しました。

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