9ページ目、初魔力切れ
「では、見本を見せるね」
カンナさんはそう言い、手のひらを上に向けました。
手のひらの上にひらひらと小さな火が姿を現しました。
「これが火魔法の原点、ただ火を灯すだけの、練習用の魔法……」
そこまで言うとカンナさんはしまったというような顔をしました。
「詠唱を教えるの忘れてたね。と言っても、見ての通り無くてもいい。詠唱は魔法をイメージする手助けをするだけだ。一応模範になる詠唱があるが、正直適当でも何とかなったりする。例えばこの魔法――ファイアライトというのだが、これは『火よ、大気を燃やし顕在せよ、ファイアライト!』みたいな詠唱だったと思うのだが……」
「正直ダサい」と苦笑いを浮かべていました。
確かにちょっと恥ずかしい。厨二病の類なら喜んで唱えそうだが、正直ちょっと……
「むしろ魔法名だけでも何とかなるというか、無詠唱の方が何かと便利だ。もし詠唱無しで魔法が使えるならそれに超したことはない。初めは難しいと思うから、詠唱をしてみようか」
しばらく先程の詠唱をしながら火が燃えるイメージをしたが本当に小さなが火がぽっと出て消えていくだけだった。うーん、どうしたものかと悩んでいるとカンナさんが私の腕を指さした。
「さっき魔力を感じだろう?あれを体の真ん中から腕、腕から手のひら、手のひらから外へ移動させてみるのがコツかな。その外に出した自分の魔力が中心に魔法が発動するからね。説明足らずですまない」
「いえ、ありがとうございます!やってみます!」
言われた通りに体の中の魔力に集中する。
それこそ血が伝うのをイメージすると簡単に移動した。手のひらからぐっと出るように意識をすると、案外するりと抜けていくのを感じた。
「火よ、大気を燃やし顕在せよ、ファイアライト」
先程とは違い随分と明るい火が灯りました!
楽しくて火を小さくしたり大きくしたりして遊んでいました。
カンナさんもにこやかに私を見守ってくれています。
嬉しくてそのまま魔力を垂れ流していたみたいで、気がつくと体の中にあった魔力が少なくなっていることに気づきました。突然火が消え、体の力がふっと抜けました。
プール上がりのつまらん授業を受けているような微睡みの中、カンナさんが「こりゃ続きは明日かな」と呟いたのが聞こえました。
目が覚めたのは夕方でした。
部屋の中でカンナさんとお父様が何かを話し合っていました。
どうやら、授業料は要らないからしばらくこの家に寝泊まり出来ないかという提案のようです。
お父様も元冒険者ですし、多少思う所があったのでしょうか。少し渋ってはいましたが、了承しました。
話がついたみたいなので体を起こし「おはよーございます」と挨拶をしました。
「ようやく起きたか。こいつが何かしたのかと心配したんだぞ」
と穏やかに言うお父様とは裏腹に、カンナさんは少し冷や汗をかいて苦笑いをしていました。
食卓は3人もいると少し賑やかなりました。
カンナさんの旅の話やキョウという国について色んな話を聞きました。
聞けば聞くほど、キョウという国は日本の、江戸時代辺りに似ているようで、大きくなったら是非行ってみたいと思いました。
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