【短編ホラー】知らない。
皆様、ごきげんよう。
私は_W@1です。
本日は本ページを御閲覧頂き誠にありがたく厚くお礼申しあげます。
今回は、私の友人の友人……確かTさんから又聞きした怖い話をさせて頂きたく存じ上げます。
僕は小さい頃、俗に言う転勤族で、父親の仕事の都合でよく転校を繰り返して居ました。
これはそんな僕が体験した、少し怖いお話です。
僕がまだ、小学生だった頃の話です。
僕の転校先には、まだコンビニの一つも無い様な田舎にも珍しく無かったのですが、この頃住んでいた場所もそんな田舎でした。
まるで時代から取り残されたかのような、そんな雰囲気を感じさせる場所でした。
学校に通い始めてしばらくした頃です。
僕はすっかり新しい学校にも慣れ、人数が少ないからか、ほぼ全員の同級生と友達になっていました。
しかし、僕は何となく違和感の様な物を感じ始めていました。
僕は小さい頃、電車がとても好きでした。
今では殆ど名前も忘れてしまっていますが、その時走っていた電車の名前を暗記する程でした。
都会に住んでいた頃にはよく父と線路沿いの路地に車を停め、電車が走るのを見ていました。
ある時、僕は友達に「電車がとても好きだ」と言いました。
それで周りの友達は揃って言うのです。
電車ってなぁに、と。
僕は、田舎だし電車も通って無いから知らないのは当然か、と納得しました。
その次の日、僕は自分だけが都会に詳しいのをいい事に、鼻高々と色々な物の話をしました。
信号機って知ってる? コンビニって知ってる? 自販機って知ってる?
僕は都会にあって田舎に無いものを言っていき、知らないと返って来るとその物の意味を意気揚々と説明しました。
今やれば確実に嫌なやつですが、小学生だった事もあり、皆は僕の話を興味深そうに聞き入って居ました。
僕は段々からかわれている気がしてきました。
いくら田舎が遅れているとはいえ、この村以外に行ったことがないなんてありえないと思ったからです。
何よりの証拠に、この村の近くには、ビルが何軒か建っている町だってありました。
そして、からかわれているかどうか確かめる為に、僕はふざけて村にある物を言ってみました。
テレビって知ってる? 車って知ってる? 学校って知ってる?
知らない、何それ、教えて、返って来るのはそんな返事ばかりでした。
僕は無性に腹が立ちました。
だから言ってやりました。
嘘って知ってる? 演技って知ってる? 嘘つきは泥棒の始まりだって知ってる?
言ってやった、と言う達成感と、ざまぁみろ、と言う感情が僕の中に湧きました。
でも皆言うんです。
「なぁに、それ。おしえてよ」
流石に頭に来た僕は、怒鳴り散らしました。
「なんにも知らないじゃねぇか! ふざけんなよ!」
返って来る返事は、
「ふざけんなよってなに?」
僕は恐怖しました。
友人達は全員真顔のままなのです。
嘘をついているようにも見えないのです。
僕は思わず質問しました。
「お前達、誰だ」
「知らない」
友人達は無表情のまま、こちらジッと見つめながら続けました。
「お前こそ誰だ、教えて」
「お前の名前は?教えて」
「知らない、教えて」
「教えて、教えて、教えて」
「教えて、教えて、教えて、教えて」
虚ろな目で同じ言葉を繰り返す友人達に、ただならぬ空気と不気味さを感じ、ただただ恐怖する事しか出来ませんでした。
答えたら何をされるか分からない。
それ以前に恐怖で体が動かない。
僕は絶対絶命でした。
その時でした。
ガラッ、と音がしてその方向を振り向くと、立っていたのは担任の先生でした。
「おいT。怒鳴り声がしたが何かあったのか?」
僕は自分の状況を説明しようとして友人達の方に視線を移すと、
居なくなってたんです。
さっきまであんなに沢山居た人間が、一瞬で、まるで何も無かったかのように、消えてたんです。
訳も分からず、もう泣き出してしまいそうな僕を見て、先生はどうしたのかと質問を続けます。
僕は必死に今起きた出来事を伝えましたが、あまりに非現実的な話に、先生や後から駆けつけた他の先生、両親までもが信じてくれませんでした。
それから友人達には会っていません。
いや、あれは僕の友人では無いのでしょう。
後から校内をいくら探しても、名簿や写真をいくら見返しても、彼彼女ららしき手がかりを、ついにはまた転校するまでに見つける事は出来なかったのです。
でも、今でも時々夢を見るんです。
僕はあの担任の事が、今も大嫌いです。
「Tって言うんだね。教えてくれてありがとう」