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「ここが奴らのアジトなの?」
「そうらしいな……。12番がなにも言わないから確信が持てないけどな。」
「……。」
「っあぁあ!!なんか言えよお前マジでムカつくなぁ!」
「まぁまぁ落ち着きなって隼人……。」
今現在、祐達はNo.12、シオヤが暴いたという異能力ヤクザグループのアジトの一端へと侵入している。
順番としては先頭に隼人、その後ろに祐、シオヤ、そしてトートがついていた。
なるべく無駄に騒ぎを起こさずに情報だけを持って帰りたかったのだが、それは無理な話だということに気付くのはすぐであった。
「オイ!!!敵はまだいねぇのか!!」
「トートも落ち着いてよ……今は静かにしていて」
「アァ!?オレに意見すんのかてめぇから殺されてぇか!」
「……!」
戦闘狂であるトートが騒ぎ出した。精神の未熟さで言えば祐よりもトートの方が上だな、と隼人は思う。
かく言う隼人もついさっき、シオヤに対して叫んだのだがまるでなかったかのように振舞っているのがいやらしい。
バカ二人のせいで、警報がなり、敵の足音が廊下に響いた。
蛍光灯がチカチカと点滅するボロけたアジトの廊下は声もよく響くようだ。一度ここで歌ってみたらよく分かるのだろうがそんな余裕があるはずもない。
「キタキタキタァ……!敵さんがわんさかと殺されに来てよォ……バカの集まりだなァ?」
「トート、悪いけどそれ、人の事は言えないよ。あとここで死神の鎌振り回したら一瞬で折れるからやめようね。」
「だぞ8番!お前のせいで敵がこんなにも集まってきやがった!」
「隼人……。」
呆れたように祐がため息をついた。
普段能天気な祐が抑えられる側にいるはずなのに、このメンツだと祐が常識人の枠に収まってしまう。
それほどまでにこの二人のいる任務はマトモに終わらない事が多すぎた。
ただ、戦闘に関しては《異能力特別制圧部隊》の中でもトップクラスの実力を持っていたため、こういう任務に起用されることが多かった。
全く須藤は見る目があるのかないのか……。
「なんだテメェら!」
「侵入者か!殺せ!」
集まってきたヤクザ達の怒号がよく響く。
響きすぎて耳がキーンとする。これも作戦か?周りを見渡すとシオヤが耳を抑えてうずくまってた。音弱そうだもんな、お前。
隼人は戦闘になると冷静に周りを見渡せる落ち着きを取り戻すため、敵を前にこんな事を考えることもしばしば。
「何ぼーっとしてんだぁ?死ねや!」
ヤクザが襲いかかる。彼らの手には種類豊富な武器がある。ゴルフバットや金属バット、スタンガンにメリケンサック。
それが、一斉に襲いかかる威圧感は凄まじいものだろう。あくまで、一般人には。
「おいおい、身の程を弁えようぜ、雑魚ども。俺を誰だと思ってる?《異能力特別制圧部隊》4番、隼人だぜ!耳の穴から脳みそに刻み込みやがれ!」
「どけや隼人ォ!オレが殺る!」
「だからトートはここで死神の鎌を振り回さないでって言ってるでしょ!?シオヤ、もう少し下がっ……あれ?」
トートの前にいたはずのシオヤがいない。
隼人は完全に戦闘態勢に入ってるし、トートは手に死神の鎌を持って今にも振り回そうとしているし、シオヤはいないし、祐の苦労は絶えない。
「トート、シオヤがどこいったか知らない!?」
「アァ?あの雑魚ならどっか走っていったぜ、あっちの方」
「ありがと!ちょっと離れるからトートは振り回さないでねそれ!」
(シオヤは昨日の会議の時からおかしかった。無口だし、終わった瞬間帰ろうとするし、手には何か持ってるし……。とりあえず、何か起きる前に見つけないと……!)
いつもの祐からは想像も出来ない行動力。
これが、《異能力特別制圧部隊》No.1たる所以だった。
周りに程よく気配りが出来るその視野の広さが持ち前の武器だ。
激しい戦闘音……いや、一方的な蹂躙かな。響き渡るのは打撃音とヤクザ達の声だけだった。
シオヤが通ったと思われる通路を駆け抜け行き着いた先は大広間。
何の障害物もないだだっ広い空間に二人、仮面をつけた男(仮面をつけていて、ブカブカな服を着ているため性別は分からない)がイスに腰掛けまるで待っていたかのように悠然と座っていた。
「待ってたよ、No.1、祐さん。」
「早かったね、1番の祐くん。」
「なんだ……?こいつら……」
警戒を緩めるな。
今までの経験がそう叫んでいた。それは間違いなく強敵だという証明に他ならなかった。
───
「ハッハァ!どうした雑魚ども、もうちっと抵抗してみろってんだ!」
「なんだコイツ、速すぎる!目で追いきれな」(バキッ)
「オイ!オレにも暴れさせろォォオ!!」
隼人は自らの異能「神速」によるスピード増強によって威力の増した殴りや蹴りを意のままに操りその場を支配していた。
「神速」は身体増強系異能の一種で、どの異能よりも"脚"の筋肉増強が優れた能力だ。脚にのみ重点を置いた事で、微妙な調整すらをも可能にしたその異能は、類まれなる能力なのは間違いなかった。
一際目立つ、図体の大きな仮面を被った男にもその蹴りを食らわせる。
基本的にその脚で蹴られた人間は骨が砕けて戦闘不能に陥る。その余りあるスピードによる攻撃が強力なのは一目見れば分かる事実だ。
しかし、その男は、蹴りが直撃してなお大怪我を負ったような気配はなかった。
そもそも、全く避ける気概すら感じられなかった。
恐らくそれは、"自分であればこの蹴りを耐えきれる"という絶対的な自身から来ていたのだろう。
人間の限界を超えているその耐久性は間違いなく異能によるものだった。
「侵入者は排除する。我が拳を持ってな。」
「─ッ!面白いやつが来たじゃねぇかよ……!」
隼人とトートの前に現れた男に、確かな強敵の予感を感じていた。
こんにちは、えぬです。
相変わらず説明口調なのは変わりませんが、少し良くなったんじゃないかと思います。
タイトルは雑なのではなく、まだ決まってないだけです。決まっていく度に更新していきます。