四話 絶望
「え…な、何が起こったんだ……?」
俺は上半身のない、虎だったモノを見て呟いた。
一体何が?さっきまで虎は確かに生きてた筈だ。それがどうして急に……。
俺は虎の手からなんとか抜け出し、辺りを見た。
「誰かに殺されたのか?いやでも、周りには誰もいないし……まぁ、でも結果としては助かったってことだよな」
俺は大声では喜ばず、密かに心の中で生きている事を実感した。
「助かったはいいけど、食料が無くなってしまったな。この虎は……食えるのか?食えたとしても食いたくねぇな。何にせよここから離れるのが先決か」
俺は一刻も早くこの場から離れようと歩き出す。
「いてて」
全身ボロボロで、体を引きずりながら歩く。
その瞬間、世界が反転した。
「え」
そして気づく、俺は転んだのだと。
「はは、予想以上に疲れてるみたいだな」
そして起き上がろうとするも、足に力が入らず起き上がることが出来ない。
不思議に思い、俺は首を上げて、自分の体を見た。
そして自分の足を見て、戦慄した。
「え、あれ?なんで?」
なぜなら、自分の左足と右手が刃物で切られたかの様になくなっていた。
「う、うわぁああああ」
俺は訳が分からず、ただ叫ぶ事しか出来なかった。
(なんだこれ!なんで俺の手と足が、いつの間に?)
そして手と足が無くなったと意識すると、急にとてつもない程の血と痛みがこみ上げてきた。
「ぐ、ぐぁあああああ」
俺は顔面を涙や鼻水でぐちゃぐちゃにし、全身から汗が吹き出し服を滲ませた。
痛い!熱い!痛い!熱い!痛い!熱い!
痛みと熱さを交互に感じ、俺はジタバタと暴れ回った。
すると俺の上空に太陽さえも霞むほどの光が現れた。
「ハァハァハァ…」
俺は全身の痛みと、朦朧とする意識の中で、その光を見ていた。
そして数秒で光は消え去り、辺りは真っ暗になった。
「な、なんだ…?」
すると俺の目の前の空間がに、とてつもないほどの風が発生し、辺りの空気が軋んだ。
そして風が止み、空間が歪み出した。
その歪みが鏡のように砕け散り、中からナニカが出てきた。
出てきたのは───機械で出来た天使だった。