三話 諦めたその時に
壁の向こうから出てきた魔物を見て、俺は箸に持っていた唐揚げを思わず落とした。
恐る恐る出てきた魔物を見ると、目が血走っており、グルルルと唸る口からは大量の涎が出ていた。
いかにも空腹といった様子だ。
(ヤバイな、今まで見た魔物なら逃げ切ることは出来たと思うけど、このデカさはまずい。おそらく、あの魔物は力も速さも地球にいた頃の虎を遥かに凌駕してる。となると、どうすればいい……考えろ、考えろ、考えろ!)
俺は思わず箸を握っている力を入れた。
しばらく俺達は睨み合っていると、ふと閃いた。
そうだ、この弁当を上手く使えば!
計画を実行しようとした俺は、額に伝う汗を拭い、深呼吸をした。
(失敗すれば命はない。だからと言ってこのままでもあいつに食われてジ・エンドだ。なら、少しの可能性に賭けるしかない)
そして俺は立ち上がり、反対の手に持っていた弁当を持ち上げて、遥か左にその弁当を投げた。
頼む!
すると虎はその匂いに釣られたのか、弁当に目を向け、近づいていった。
今だ!
俺はバックをおいて、全力で走り出した。
すると虎は気づいてないのか、俺に見向きもしないで弁当を食っている。
成功したと思ったその時──
凄まじい衝撃と、今まで体験したことも無いような痛みが体を襲った。
「カハッ…!」
俺は口から血を吐き出しながら、壁に激突した。
「な、なんだ、何が起きた?」
全身がズキズキと痛むのを何とか我慢しながら、状況を把握するため、辺りを見た。
するとさっきの原因がすぐに明らかとなった。
見ると、虎の魔物が俺から5、6m離れて立っていた。
おそらく、…いやこの状況から考えるにあいつがこの場から立ち去ろうとするために、俺が背を向けた瞬間に俺に気づいて襲いかかってきたのだろう。
(でも、あれほどの痛みがあったし、10m程離れた壁に勢いよくぶつかって死なないし、気も失わいってことは、まさかステータスのおかげか?)
そう考えると、俺のステータスはおそらくだが、高いのだろう。
よくよく考えてみると、この世界に来てから、妙に体が軽かったし。
フラフラしながらも立ち上がると、虎は不敵な笑みを浮かべ、物凄い速さで襲いかかてってきた。
虎はその手を使い器用に俺を捕まえ、そのまま壁へと叩きつけた。
「ガ…グッ!」
そして叩きつけられた壁は破壊され、広いボス部屋のような場所に俺は転がった。
虎の攻撃はそれだけじゃなかった、その鋭利な爪がついた手で、俺が逃げないよう抑え込んだ。
(くそ…俺もう死ぬのかよ。折角異世界に来たってのによ…でも死ぬのもいいか。この痛みから解放されるなら)
俺は全身を襲う痛みのあまり、生きることを放棄した。
そして俺を掴んでいる方とは逆の手を振り上げ、それを降ろそうとしたその時、
パァァン!
そんな何かが弾ける音が聞こえ、閉じていた目を開けると俺は驚愕した。
なぜなら、虎が俺を掴んでいる手と、下半身を残して跡形もなく無くなっていたからだ。
サブタイトルが思いつかず、ほぼ適当につけました。
申し訳ありません。