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 当然なんの問題もなく終わるはずだった。いや、終わらせるつもりだった。ところが十日後、再び舞い戻ってきた再検査を知らせる手紙。しかも今度は入院して精密検査だ。


「はっきりと断言はできないのですが」


 医者はそう前置きしてから説明を始めた。


「場所が場所だけに、手術では取りきれない可能性があります。できれば、化学療法との併用を」


 何を言いだすんだ、この医者は。


「はあ?」


 きょとん、とする僕。そのあと、すぐにハッと気づいて、あわてて質問をした。


「あの、それって何日かかります? 一日で帰れますか? これでも忙しい身なんです」


「詳しく検査をしてみないことには、なんとも」


 医者はすまなさそうに肩をすぼめる。


「最善をつくします。一緒にがんばりましょう」


 ドラマかなんかで聞き覚えのある台詞しか返ってこなかった。


「そうですか……」


 僕はがっくり肩を落とす。


 そんな僕をよそに、医者は淡々とした調子で話をすすめた。


「明日にでも入院の手続きをとってください。あなた、一人暮らしですか? 保証人が必要です。ご家族の方がよいでしょう。詳しいことは、一階のロビーにある受付で――」




 しだいに医者の声が遠のいていく。




 ナンデナンダ。

 ナンデ、ボクガ、コンナメニ。




 言えない気持ちが胸の奥でざわざわしてる。

 ざわざわ、ざわざわと。




 ドウシテ、ボクダケ。

 コンナメニ、アウンダ。




 なんだってんだよ。これからってときに――。




 やっとの思いで声をふりしぼる。


「……わかりました。よろしくお願いします」


 それだけを言って頭を下げると、僕は診察室をあとにした。




 病院の外へ出たとたん、あまりの陽のまぶしさに目がくらんだ。なんていい天気なんだろう。僕がひどい目にあっているというのに、空はこんなにも青いなんて。

 僕に関係なく世界はまわっている。




 うそだ、と思いたかった。




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