表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生騎士  作者: 如月厄人
第三章 目覚め
98/176

27.邪道


タイタスは暫く考えてから、灰を携帯灰皿に落とすと、ふぅ、と溜息を吐いた。


「お二人はヨセフの能力はご存知で?」

「いや、知らないな」

「そうですか、思い当たるのが一つありますんで、恐らくそれでしょう。透過能力とでも言うべきか、物体を通り抜けるあれでさぁ」


最近巷で話題でしょ。


タイタスがそういうと、二人は頷いた。マスコミが何件か報告しているが、こちらで把握している数はその比ではない。発生し始めた時期も、ヨセフが会議に出なくなった時期と近似している。タイタスの読み通り、彼の能力は透過、物体をすり抜けてお望みの物に触れるというものだろう。


その実験の為に、何人もの民を犠牲にしたとすれば、やはり彼は騎士の道に反した逆賊という事になる。


リチウムその会話を聞きながら、座標の特定をさらに細かくする。


研究室内部のサーバーに侵入、偽装を掛けながら、テレポーターの位置をマップに写し取り、マップごとデータを盗み取った。ホログラムを見ていた三人でさえ、リチウムが何をしてそのデータを持ってきたのかがわからない。


「そんな地図、ウチのデータベースにあったかい?」

「いえ、無かったので今盗ってきました」

「…どこから?」

「彼方のサーバーから」

「どうやって?」

「ハッキングに決まってるじゃないですか、どうしたんですか?」

「待て待て、あっちにはクラウディオ・ニッセンがいるんだぞ?バレなかったのか?」

「彼だって電脳の中を覗き込めはしないでしょう。それに偽装と妨害電波でこちらの位置は特定させていないので安全のはずです」


唖然としたままの三人を見て首を傾げた後、ちゃっかりとテレポーターの生体データに加え、自分のコンピュータとあちらのサーバを同期させたのか、マップに表示されているポイントが動いているのが見て取れる。


「施設自体はそんなに大きくありませんが、幾つか隠されている部屋があります。恐らくクラウディオ・ニッセンがいる場所でしょう。ですがもう一つ、地下空間に巨大な部屋があります。ここで何かを作っているのではないでしょうか」

「そ、うん、そうだな。突入の際には気をつけようじゃないか、なぁ、レオン」

「あ、あぁ、そう、そうだな。気をつけねばなるまい」

「あんたら動揺し過ぎですぜ。OKリチウム、君には階級に不相応な素晴らしい能力がある。今回のオペレータは君に任せよう。全員分の情報伝達、共有、把握、出来るな?」

「勿論、もう十人程度なら賄えます」

「………、クライス中尉、あんたこいつに何やらせてきたんですかい?」

「俺の隊のオペレータはそいつ一人だったぞ」

「因みに何人?」

「三十五人の部隊だった」

「心中察するぜリチウム」

「いえ、私の方から進言したので何とも…。他のオペレータが居ては滞りますので、他の隊に派遣されていた時の方が私にはストレスでした」


今は余裕を持って対処できます。


軽々と言ってのけるリチウムが途端に頼もしく見える。いや、事実頼もしいのだ。これほど頼りになるオペレータもいまい。


一言に妨害電波と言っても同一のものほど解析されやすい。どれくらいの周期で変えているのかはわからないが、この妨害電波は常にその周波数を変えている事になる。それを人力で制御しながら、騎士団で利用するための電波に支障は出ていない。器用に騎士団の電波をかわしながら、相手の探知を阻害している。加えて、レオン、カーネルの二人は、間接的な場所からテレポートの鍵を見つけ出し、更にその扉を開けさせた瞬間を見ている。


有能に有能を重ね掛けしても足りないくらいの有能ぶりだ。


「まぁ…ついでに文句を言わせていただけるなら…、他の隊に行くとこの隊にいる時の感覚と違い過ぎて自分の中で不整合が起きそうです」

「どのあたりが違うんだ?」

「任務遂行速度ですかね…。自分が計画を立てると他の方に唖然とされます」


理由はご存知だと思いますが。


「そりゃあ…そうだよなぁ…。これだけ化け物がいりゃあなぁ…」


タイタスが呆れながら頭をかいた。


それなら、とカーネルが提案する。


「君に作戦立案を任せていいだろうか。君ならこの部隊を存分に活かしてくれるだろう」

「善処はします。まだ未知数が多いのと、正確な数字が出せそうもないので」

「? 隊員のデータは全て所持しているのだろう?」

「お言葉を返すようですが、少し考えてもいただいてよろしいですか?私がパッと出したマッハ3を平然と叩きだすんですよ?作戦立案は隊員の能力を完全に把握した上で、得手不得手、条件、状況、その他考え得る全ての逆境を洗い出した上で為さねばなりませんが、そもそも能力の把握ができていないのですから、凡そでしか立てようがありません」


文句とも取れる発言だが、彼に苛立っているような様子はない。どちらかといえば楽しんでいるようにも見える。


レオンは自分の時代とは随分と変わったのだと感じた。


人の能力も、転生者達の性能も、昔と今とでは大きく異なる。カーネルも、今の技術のお陰で、年齢の進行を遅らせているにすぎない。半人半機の先駆けである彼は、肉体と機械を繋げるため常に最新型のナノマシンを体内に循環させ、その結合を保っている。今でこそ、鎧という外殻があるお陰で激しい挙動をしても耐えられるようにはなったものの、鎧が無かった時代には苦労したものだ。


気を抜けば自分の力で腕が引きちぎれるのだから。


半人半機である以上、その程度の覚悟は必要とされているが、ナノマシンに代わる新たな技術が、その覚悟を更に前進するための力に変えたことは間違いない。


ミカグラユニットが生成するミカグラ粒子、この粒子の存在は、やはり大きい。


だが力は脅威でもある。


レオンが感じ取った脅威は力が強大であればこそ感じられる脅威なのだ。勿論、想像はしたくないが、ヤヨイの拳がこちらに向けば、いくら歴戦の勇者といえど一瞬で片がつくだろう。


それより、とヤヨイが息も絶え絶えにデスクに手をついた。


「突入はいつ?」

「少尉さえ良ければ今すぐにでも。大体の構想は出来上がっています。メンバーは此処にいる方々のみですか?」

「必要とあらば他のも呼ぶが」


レオンがそういうと、リチウムは迷わず言った。


「ではミカグラ兄弟全員と、レメイ・カニサレス中将、コーネリア・リチャーズ少将をお願いしたく…」

「随分と上を選んだな…。理由は?」

「連携を取りやすい人物かと。クライス中尉の元部下で、タイタス大将の同期、加えて、ハヅキ伍長、ナガツキ伍長の師匠ということもあるので、適任かと思われます」

「わかった、そういうことなら呼ぼう。だがそういう事なら本日の作戦決行は無理だと思ってくれ。周辺住民の避難も行いつつ、包囲網を形成しなければならない」

「了解」


リチウムはキーボードに何かを打ち込み続ける。その様子から目を離し、何故か満身創痍のヤヨイにレオンが言った。


「弟の二の舞にはなってくれるなよ」

「お、嫌味ですねぇ…。大丈夫ですよ、ミナヅキも、俺が何とかしてみせますから」

「頼もしいな、少尉。ではよろしく頼むぞ」


レオンとカーネルを見送って、ヤヨイは大きく息を吐いた。


「随分肝が据わったな、ヤヨイ」

「隊長、俺やっぱ階級上がんなくていいっす…」

「ハッハ、わかる」



§



「おいおっさん、言っとる事とやっとる事ちゃうやん。なんやデッカいの作っとる思うたらいきなし分解しよって、わけわからんぞ」


真っ白な男がニヤついた顔で粒子の塊をセッセと切り分ける老人に文句を垂れる。老人は作業をしながら男に言った。


「コレを繋げ」

「って話聞いとらんのかーい!聞けや!何しようっウフゥッ!!」


差し出されたケーブルを受け取らなかった男の腰に無理矢理突き刺す。海老のように仰け反った男は、自分の中から何かが抜けていく感覚に顔をしかめた。


それがエネルギーだという事を理解するのに時間は掛からなかった。ただ、理解したとしても驚きの方が勝った。


目の前に、自分のそっくりさんが立っている。


ソレはゆっくりと目を開き、言葉を発した。


「何見とんねんワレェ」

「ウソやん…」

「嘘ではない。神を悦ばせる為に作ったのだ、この程度造作もない。ファントム、コレを増やせ」


途端、ボッ!と大量のレッドカラーが巨大な地下室に現れ出る。


「何やワレェ!」

「喧嘩売っとんのかあぁん?!」

「じゃかしぃわボケェッ!」


騒がしい。


騒がしい事この上ない。


レッドカラーはその光景に圧倒される。自分の顔が数え切れないほど部屋に充満している。目の前で長い顎髭をさする老人に、レッドカラーは問い掛けた。


「おっさん…これ…まさか、ワイと同等?」

「それはない。ファントムの作る幻影は空気の歪みだ。言ってしまえばただの水分、お前の能力は持ち合わせていないが、質量はある、人間には耐えられないような不可思議な行動も難無く耐え得る」

「…ワイの顔した雑兵かいな」

「あぁ、だが無限に増える雑兵だ。パターンを用意するわけではないからファントムにかかる負担も少ない」

「…最初見た時はゾッとしたなぁ」

「くっく、アレも一つのヒトの形よ」


其処へ、研究員の一人が駆け込んでくる。


「クラウディオ博士!聞いておりませんぞ!何故騎士団の連中に技術提供など…!」

「彼は最早あちら側ではない」

「そうだ、私はもう騎士ではない」

「なっ…がは…?!」


自分の胸から自分の心臓が突き抜ける。ドクン、ドクンと脈打つ心臓が、何者かによって持たれている。


老人はそれを見てくだらなそうに目を逸らした、最早興味はないようだ。ファントムに幻影を消すように指示した後、彼に言った。


「殺すなよ、もうじきこの施設は消えるがその男はまだ使える」


もっとも、生きていられればだが。


それを聞くと、彼は心臓を元の位置に戻しつまらなそうに言った。


「これだけ素晴らしい力があるというのに、自由に使えないとは不便なものだなぁ」


ただ、その口元は大きく歪んでいる。


レッドカラーは彼を見て小さく溜息を吐いた。


彼は早々に身を滅ぼすタイプの人間だろう。力を過信し、振り回し、己の自由意志を尊重させ、他人にそれを押し付ける。


幻影がいなくなっても目の前で自分と同じく溜息を吐いた片割れに、肩をすくめてみせる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ