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転生騎士  作者: 如月厄人
第三章 目覚め
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14.模擬戦

お昼時だからというのもあって、大演習場で演習を行っているのは少数のようだった。それでも、人数が少ないというだけで、枠の二つは埋まっている。奥にある端末に部隊情報、使用人数を入力し、演習場を押さえる。


使用許可が下りた演習場の床に『威力強襲部隊』の文字が映る。その区画に移動し、枠内に入った二人をヤヨイとミョルニルは枠外にあるベンチに座って眺める。


「よっし、いつでもいいぞ」

「ヤヨイ少尉、シールドを」

「…了解」

「いや、いらん、別に火器を使うわけじゃないんだ。それに、そこの二人は殺して死ぬような輩じゃないだろう」


腰を上げようとしたヤヨイをクライスが制し、ヒラヒラと手を振った。


枠線の中に平行に引かれた短い線の前に立ち、クライスは腕を組む。対面に立つサイゾウから若干の苛立ちを感じながらクライスは心の中でニヤリと笑った。こんな時、自分がサイボーグで良かったと心から思う。こんな顔を見られては、相手を煽るどころか蔑んでいるようなものだ。


それほど、今の自分が悪い顔をしている自覚がある。


サイゾウが刀の柄に手を掛けた。


「いつでもこいよ」

「なら、遠慮なく」


フッ…、とサイゾウの身体が消える。ボンヤリとしたモヤはすぐに霧散し、完全に何処か解らなくなる。


というのが、一般騎士。


(隊長、やっぱりあんたも十分イロモノだぜ)


背後から刀だけが姿を現し、クライスに斬りかかる。クライスは背後を見ていないにも関わらず軽々と其れを半歩前に足を出すだけで躱し、構えることもせずに腕を組んだまま首を傾げた。


それから、あぁ、と声を漏らすと、サイゾウが元々立っていた位置に立った。


「仕切り直しだろ?」


横からの刺突を顎を引くだけで躱し、刀の鍔を掴む。


「こんなものに頼ってるから力を発揮しきれないんだぞ」


サイゾウから刀を奪うと、軽く握りこむ。


「それから、使い方がなっとらん。構えは見てないが、抜刀術にしろ剣術にしろ、覇気が無い。良いか、刀っつうのはこうやって振るんだ」


その時、ヤヨイはクライスの気配がガラリと変化した事に気付いた。機械の体からは感じるはずの無い、言葉に表せない様な仰々しい気配だ。


オーラ、とでも言うべきだろうか。


何も無い空間に向かって、一歩踏み込む。


ドッ!という音と同時に振られた刀は、風を巻き起こした。ブワッ、と撒き散らされた風に、サイゾウが実体化して踏み止まった。


丁度、クライスの横、指導する教官の様にサイゾウを見ながら、刀の握りから手を開いて教え始める。


「いいか、刀を握る時は、確りと小指を握るんだ。人間の構造上、小指が無いと力が入らないからな。逆に小指さえしっかり握ってりゃ他の指は軽くていい」

「…真剣にやっていただきたい」

「? 俺は至って真剣だぞ。だって『模擬戦』だろ?隊長の俺がお前らに指導するのは普通じゃ無いのか」


ピキッ。

(キレた)

(キレたな)


「サイゾウがあんな簡単にキレるのは初めて見たな」

「へぇ。じゃあお手並み拝見だな」

サイゾウはクライスからひったくる様に刀を掴むと、もう一度線の前に立つ。

「なら、一戦、お願いしたい。模擬戦ではなく、一戦を」

「うーん…、別に良いんだが、最近シモツキのお陰で色々と見慣れちまってな、今みたいな子供騙しくらいじゃ大して驚けないんだよ。だから、面白い戦術で頼むぜ」


コレが煽る為ではなく自然と出る心からの言葉なのだからタチが悪い。


(それに、隊長なら簡単に突破しそうなんだよなぁ…)


未だ底の知れぬクライスにヤヨイはウズウズしながらも、サイゾウが刀を構えたのを見て、眼を凝らす。


抜刀術。しなりを横に向け、刀の鍔に指をかける。


だが、掛けた瞬間、その柄に手が置かれる。


「一戦、だったな」

「……っ」

ドッ!!


霧にさせる暇も与えず、サイゾウはその場に倒れていた。


「高い鎧にした甲斐があったな。これならシモツキとももう少しマトモにやってやれそうだ」


目を白黒させたままガバッと起き上がったサイゾウは、自分の身体とクライスを交互に見た。何故倒されたのか、理解が出来ていないようだ。これに関して言えば、傍観していた二人にもわからなかった。サイゾウなら、あのタイミングで霧になって距離を取れたハズなのだ。


それなのに、彼は霧にならなかった。


いや、彼の様子から察するに、なれなかったのだろう。


クライスはまた腕を組んでサイゾウに言った。


「原子間力ってわかるか」

「……?」

「原子そのものが相互に作用する力の総称でな、ま、簡単に言えば、その力へのアプローチでくっつけたり剥がしたりできる。お前さんの能力は原子同士、霧だから分子か、分子同士の結合を解く力と同じようなもんだろうと踏んで、俺はその結合を促したわけだ。だからお前は霧になれなかった」

「一体…どうやって…」


サイゾウがクライスの顔を見る。


「コレだ」


クライスが掌を見せる。赤いクリスタルのような結晶が埋め込まれている。


「電磁…シールド…?」

「そうだ。こいつの仕組みは知ってるな。電気というエネルギーを利用して電磁場を発生させる。光学兵器や重火器は発生した電磁場の阻害を受けて霧散、蒸発する。コレの応用だ。原子間力に作用出来るのは電磁気力くらいなもんでな、電磁シールドに極低出力で電流を流すと電磁場は形成されずに電磁波が放出される。それがお前の身体に作用し、結合を解く力を弱めたって事さ。ちぃとばかし難しい話だったか」


ヤヨイは、あー、と口を開いた後で、自己解釈を述べる。


「取り敢えず電磁波でサイゾウが固まったってことで良いっすか」

「そんなもんでいい」


クライスはサイゾウに手を差し伸べる。悔しそうにキュッと口を結んだサイゾウは、その手を取って立ち上がりながら、ヤヨイに言った。


「お前、あの時手を抜いていたな」

「本気出したら此処が崩れますぜ」

「それは本当だ。アイツの本気なんてまず見れないと思ったほうがいい」


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